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Chicago Museum of Science and Industry訪問 (1)

dda40xさんが、シカゴでのO-Scale Meetに参加されるということで、同行させていただきました。今回は堀江ご夫妻もご一緒で、大変楽しい、記憶に残る旅となりました。すでにdda40xさんのBlogで詳細な記事が掲載されていますが、私なりの視点で訪問した場所をご紹介したいと思います。

さて、シカゴ到着後、まず向かったのは、Chicago Museum of Science and Industry(以下CMSI)です。名前が示す通り、「科学と産業」に関する幅広い分野に関する展示を行っている博物館で、あちらこちらに実習室があったりして、子供向けの教育プログラムも充実しているのだと思われます。鉄道関係の展示ばかりではなく、ライト兄弟の飛行機のレプリカUボートなど、エポックメーキングな物が数多く展示されていて、シカゴに行った際には、訪問することをおすすめします。

まず、建物に入って最初に出迎えてくれるのは、Pioneer Zephyr号です。私が紹介するよりも詳しい方が数多くいらっしゃると思いますが、Wikipediaの記述をかいつまんで要約すると、Pioneer Zephyrは、CB&Q(Chicago Burlington and Quincy)が1934年に導入した、旅客用ディーゼル列車です。その性能を実証するために、1934年5月26日に、コロラド州デンバーから、シカゴまでの1015マイル(=1633km)を、ノンストップで13時間5分、つまり平均速度77mph(124km/h)で走破し、ある一区間では112.5mph(181km/h)を記録しました。1934年11月11日に定期運用に入り、1960年まで運行し、その後CMSIに寄贈されたものです。

1934年といえば、蒸気機関車もまだ発展途上にある時期で、1930年にTimken社が自社のベアリング製品をアピールするために、4-8-4であるFour Aces (その後NPが購入しA-1として運用)を建造してまもないころですので、ようやくローラーベアリングの効能が理解され始めた頃ではないかと想像します。1934年に建造された4-8-4としては、ノーザンパシフィックのA2があり(この後A3:1938年、A4:1941年、A5:1943年と続く)、その他有名どころの4-8-4で言えば、サザンパシフィックのデイライト牽引専用機として用意されたGS-2はこの後1936年まで(その後、GS3が1937年、GS4/5が1941年)、UPのFEF-1も1937年になるまで(その後、FEF2が1939年、FEF3が1944年)、待たなければなりませんので、この時点でディーゼル機関による高速列車を実現する、ということがとんでもなく先進的なチャレンジだった、ということが言えるかと思います。

技術的にも、必要な性能を満たすディーゼル機関の開発とか、ステンレスを用いた車体を作るためのShotweldingという溶接方式を製造に携わったバッド社が開発したりとか、歴史的意義のあるものが多く、アメリカ機会工学会(ASME: American Society of Mechanical Engineers)は、1980年に、”National Historic Mechanical Engineering Landmark”なる賞をPioneer Zephyrに授与しています。

この授賞を説明する文書がASMEのサイトに掲載されています。これを読むと、当時のCB&Qの社長であった、Ralph Budd氏(注:上記のバッド社とは無関係)は、当時の旅客実績の低下が、1929年の大恐慌の余波ではなく、そもそも人々の移動手段が車へシフトしているのが原因である、ということを見抜き、鉄道の復権を賭けて、新技術の適用、時代を感じさせるデザイン、圧倒的な性能、など、人々に訴えかける新しい列車の可能性を提案したのだ、ということを感じました。「Pioneer Zephyr」と呼ばれる、その名の通り、「新時代を切り拓いたパイオニア」と呼ぶにふさわしく、永く人々の記憶に列車であるということは間違いないでしょう。

少し長くなったので、続きは次回に。