週末の時間のある時に、近所の子供向けの図書館で絵本の読み聞かせのボランティアをしています。この図書館が最近購入した本が、大陸横断鉄道完成時の様子をよく伝えていると思ったので紹介します。
走れ!!機関車
ブライアン・フロッカ作/絵
日暮雅道 訳
ISBN978-4-03-348340-5
米国図書館協会の下部組織である児童図書館協会(ALSC)が、アメリカ合衆国でその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年授与しているコールデコット賞を2014年に受賞した本ですので、絵本としての評価は間違いないとして、私自身は、大人が鑑賞するにも耐える「絵を主体とした歴史の記録」と言ってもよいかと思いました。
作者のブライアン・フロッカ氏は、この本を作るにあたって十分な準備をしたようです。巻末の2/3ページが参考資料の紹介に費やされており、その中に10以上の書籍、ビデオ、オーディオ、Webサイト、が列挙されています。カウンシルブラフスから大陸横断鉄道に沿ってドライブをしながら、大陸横断鉄道にゆかりのある数々の場所を自分で調べ、いろいろな人の協力を得たとのこです。協力者の中には、ユニオン・パシフィック鉄道博物館、ゴールデン・スパイク・ナショナル・ヒストリック・サイト、ネバダ州立鉄道博物館、カリフォルニア州立鉄道博物館の職員も含まれています。
本の内容は、大陸横断鉄道が完成した直後、1869年の夏に、オマハからサクラメントまでの旅を、乗客の視点、運転する側の視点の両面から描いたもので、沿線の名所の風景も含まれています。
1869年当時ですので、登場する機関車は4-4-0なのは当然として、客車のブレーキは制動手が汽笛の合図に合わせてかけていたとか、自動連結器導入以前だったので連結作業は危険を伴うものであった、といったことが絵と一緒に説明されると実感をもって理解することができると思いました。また、夕食は列車から降りて鉄道会社の食堂で20分以内に食べなければいけなかった、というような記述も面白く思いました。沿線風景では、完成直後の木造のデール・クリーク橋を通過する様子が2ページを使って描かれています。
巻末に、「アメリカの蒸気機関車について」と題したあとがきがありますが、これも簡潔ながら濃い内容です。「大陸横断鉄道はアメリカ人の生活をがらりと変えた」ということを伝える一方で、「鉄道のもたらす変化を押しつけられた立場の人たちもいた」と、先住民のアメリカ・インディアンとの戦いについて触れられていたりとか、プルマン社が1870年ごろから自社の車両の運用にアフリカ系アメリカ人を専従させるようにして、「奴隷の身分から解放されたばかりの人たちにとって、プルマン社のボーイとしての生活は、職業社会への貴重な第一歩となった」、と書かれているあたりは、趣味の対象としてアメリカの鉄道を見ているだけの我々に新たな気付きを与えてくれると思いました。
広く勧められる良い本だと思います。
こちらは、英語版です。上記のページにはない、「なか見!検索」でどんな内容か、見ることができます。
作者のページからも、一部のページの画像を見ることができます。
ようやく買えました。
お薦め通り、非常に中身のある良い本でした。
ミスもなく、鉄道マニアでも楽しめますね。
社会学上も意味のある本だと思います。
英語版を手に入れなければなりません。
それを読めば、また楽しめそうです。
良い本を推薦して下さり、感謝します。
遅くなりましたが、コメントありがとうございます。
良い本だと思うのですが、あまり店頭で見かけないのが残念です。