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ユニバーサルジョイントの使い方(10) - 簡易型ユニバーサルジョイントを正規型ユニバーサルジョイントと比較する

さて、正規型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせたときの\(\theta\)と\(\xi\)との関係は、

\(tan(\xi)=\frac{sin(\delta)+tan(\theta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)}{cos(\delta)-tan(\theta)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha)}\cdot \frac{1}{cos(\beta)}\)

で、簡易型ユニバーサルジョイントを2つ組みわ合わせたときの\(\theta\)と\(\xi\)との関係は、

\(tan(\xi) = \frac{sin(\delta)\cdot cos(\alpha) + tan(\theta)\cdot cos(\delta)}{cos(\delta)\cdot cos(\alpha)-tan(\theta)\cdot sin(\delta)}\cdot cos(\beta)\)

で表現されるのでした。

2つの式は似ているようで異なりますが、これはどういうことを意味しているのでしょうか。

簡易型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせたときの式に、\(\theta = \theta^\prime  – \frac{\pi}{2}\)、\(\xi = \xi^\prime + \frac{\pi}{2}\)、を代入して変形します。

\(tan(\xi^\prime + \frac{\pi}{2}) = \frac{sin(\delta)\cdot cos(\alpha) + tan(\theta^\prime – \frac{\pi}{2})\cdot cos(\delta)}{cos(\delta)\cdot cos(\alpha)-tan(\theta^\prime  – \frac{\pi}{2})\cdot sin(\delta)}\cdot cos(\beta)\)

\(tan(\theta +\frac{\pi}{2}) = tan(\theta -\frac{\pi}{2}) = -\frac{1}{tan(\theta)}\)ですので、上記の式は

\(-\frac{1}{tan(\xi^\prime)} = \frac{sin(\delta)\cdot cos(\alpha) -\frac{1}{tan(\theta^\prime)}\cdot cos(\delta)}{cos(\delta)\cdot cos(\alpha)+\frac{1}{tan(\theta^\prime)}\cdot sin(\delta)}\cdot cos(\beta)\)

となり、これを\(tan(\xi^\prime)\)について変形します。

\(tan(\xi^\prime) = -\frac{cos(\delta)\cdot cos(\alpha)+\frac{1}{tan(\theta^\prime)}\cdot sin(\delta)}{sin(\delta)\cdot cos(\alpha) -\frac{1}{tan(\theta^\prime)}\cdot cos(\delta)}\cdot \frac{1}{cos(\beta)}\)

右辺の分数の分子と分母とに\(tan(\theta^\prime)\)をかけ、式を整理すると、

\(tan(\xi^\prime) = \frac{sin(\delta) + tan(\theta^\prime)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)}{cos(\delta) – tan(\theta^\prime)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha) }\cdot \frac{1}{cos(\beta)}\)

を得ます。この式を見ると、正規型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせた場合の\(\theta\)と\(\xi\)との関係の式と同じであることがわかります。

この式の変形が意味する事は、簡易型ユニバーサルジョイントの解析に用いた基準点の取り方を工夫すれば、正規型ユニバーサルジョイントと同じ式が導出できた、ということです。簡易型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせたときの図に\(\theta^\prime\)と\(\xi^\prime\)とを加えたのが下図です。

これはどういうことかというと、簡易型ユニバーサルジョイントに、下図のようなピンに垂直な仮想的な補助ピンを加え、その先端を基準点の一つとすればよい、ということを言っています。

上図にて基準点示したのが下図となります。同一の垂直線上にある赤い点と青い点が簡易型ユニバーサルジョイントの解析をする際に用いた基準点に、仮想的な補助ピンの基準点を描き加えています。この仮想的な補助ピンの赤の基準点と青の基準点とを使って正規型のユニバーサルジョイントと同様の解析を進めることで、最終的には全く同じ結果が得られます。

ここまでの議論で、「簡易型ユニバーサルジョイントは、正規型ユニバーサルジョイントと等価である」ということがわかります。

ユニバーサルジョイントの使い方(9) - 簡易型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせる

簡易型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせた場合の解析を行います。正規型ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせた図と同様のものを下記に示します。

前回の議論から、駆動面(赤の円)を移動する基準点の\(x\)軸に対する角度\(\theta\)と、伝達面(青の楕円)を移動する基準点の\(x\)軸に対する角度\(\varphi\)との間には次のような関係が成立します。

\(tan(\varphi) = tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\)

中継面(もう一つの青の楕円)を移動する基準点の\(x\)軸に対する角度\(\varphi^\prime\)と、最終伝達面(緑の円)を移動する基準点の\(x\)軸に対する角度を\(\xi\)とすると、\(\theta\)と\(\varphi\)との関係と同じ考え方で、

\(tan(\varphi^\prime) = tan(\xi)\cdot\frac{1}{cos(\beta)}\)

を得ることができます。

一点細かいことを補足しておくと、正規型ユニバーサルジョイントでは、動力を受ける側も伝える側も対称の関係にありましたので、\(\beta\)は、中継面(上の青い円)を基準とした角度としていましたが、簡易型ユニバーサルジョイントは対称ではありませんので、最終伝達面(上の緑の円)を基準とした角度としています。

さて、\(tan(\alpha+\beta)=\frac{tan(\alpha)+tan(\beta)}{1-tan(\alpha)\cdot tan(\beta)}\)でしたので、

\(tan(\varphi^\prime) = tan(\varphi +\delta) = \frac{tan(\varphi)+tan(\delta)}{1-tan(\varphi)\cdot tan(\delta)}\)

となり、\(tan(\varphi) = tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\)を代入し、

\(tan(\varphi^\prime) = \frac{tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}+tan(\delta)}{1-tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\cdot tan(\delta)}\)

分子と分母とに\(cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\)をかけ、

\(tan(\varphi^\prime) = \frac{tan(\theta)\cdot cos(\delta) + sin(\delta)\cdot cos(\alpha)}{cos(\delta)\cdot cos(\alpha)-tan(\theta)\cdot sin(\delta)}\)

最終的に、

\(tan(\xi) = \frac{sin(\delta)\cdot cos(\alpha) + tan(\theta)\cdot cos(\delta)}{cos(\delta)\cdot cos(\alpha)-tan(\theta)\cdot sin(\delta)}\cdot cos(\beta)\)

を得ます。

正規型ユニバーサルジョイントの時と同様に、我々の興味のあるのは、\(\delta=0\)もしくは\(\delta=\frac{\pi}{2}\)の時です。

\(\delta=0\)の時は、下図のとおり、2つのピンが同位相となります。

この時、\(sin(\delta)=0\)、\(cos(\delta)=1\)ですので、

\(tan(\xi) = tan(\theta)\cdot \frac{cos(\beta)}{cos(\alpha)}\)

従って、\(|\alpha| = |\beta|\)であれば、\(\theta\)と\(\xi\)とは絶えず同じ角度であることがわかります。

\(\delta=\frac{\pi}{2}\)の時は、下図のとおり、2つのピンの位相が90°ずれます。

この時、\(sin(\delta)=1\)、\(cos(\delta)=0\)ですので、

\(tan(\xi) = -\frac{1}{tan(\theta)}\cdot cos (\alpha)\cdot cos(\beta)\)

\(= tan(\theta-\frac{\pi}{2})\cdot cos (\alpha)\cdot cos(\beta) \)

という関係を得ます。正規型ユニバーサルジョイントの場合と同様、\(\theta\)と\(\xi\)は、同じ角度ではないことがわかります。

ユニバーサルジョイントの使い方(8) – 簡易型ユニバーサルジョイントの解析

これまで議論してきたユニバーサルジョイントとは異なり、模型では下図のように構成を簡素化したユニバーサルジョイントが使われることが多くあります。ここでは、これまで議論してきたものを正規型ユニバーサルジョイントと、簡素化したものを簡易型ユニバサールジョイントと呼ぶこととします。簡易型ユニバーサルジョイントについても、正規型ユニバーサルジョイントについて述べたことがそのまま成立するのか、見てみたいと思います。

以後の議論では、簡易型ユニバーサルジョイントの各部の名称を次のようにします。正式名称もしくはより一般的に使われる名称をご存じの方は、お知らせください。まず、下図の右側の動力源につなぐ、もしくは最終的に動力を伝達する部品で、上下2本伸びて円筒を切り欠いた部分を「爪」、そこに開いている長細い穴を「ガイド」、下図左側の部品でガイドにはまる部分を「ピン」、ピンに直交し動力を伝達する軸を「伝達軸」と呼ぶこととします。

簡易型ユニバーサルジョイントが回転する様子を下図に示します。ピンの中心は、青い線で示す平面上を移動します。ガイドの中心は、赤い線で示される平面上を移動します。実際には、ピンの位置がガイドに沿って移動する余地があるのではありますが、ここではピンの中心とガイドの中心とが交わる点は動かないという理想的な状態を仮定して議論を進めます。

上で述べたピンの中心とガイドの中心を立体的に見たのが次の図です。ピンと駆動軸の中心が交わるところを原点し、ガイドの中心位置の基準点(赤い点)が赤で示した水平面上の円形の軌道を移動するものとします。この時、赤い点を通る\(z\)軸方向の垂直な線と、ピンの中心軸とが交わった基準点(青い点)は、水平面に対して傾いた青で示した楕円形の軌道を移動します。なお、ガイドの中心位置の正確な位置については、下図では爪の内側の円筒面にあるものとして作図しましたが、赤の基準点と青の基準点とがz軸方向の垂直線上にある限り、爪の外側の円筒面でも、爪の厚みの中心でも構いません。

赤の点の座標を\((x,y,z)\)、青の点の座標を\((u,v,w)\)とします。原点\((0,0,0)\)と\((x,y,z)\)の距離を\(r\)としたときに、これらの2点を結ぶ直線が水平面上で\(x\)軸となす角度を\(\theta\)とします。また、原点\((0,0,0)\)と\((u,v,w)\)との距離を\(l\)とし、これらの2点を結ぶ直線が水平面に対して\(\alpha\)傾いた面で\(x\)軸となす角を\(\varphi\)とします。これを示したのが下図です。

この時、

\((x,y,z) = (r\cdot cos(\theta), r\cdot sin(\theta), 0)\)

\((u,v,w) = (l\cdot cos(\varphi), l\cdot sin(\varphi)\cdot cos(\alpha), l\cdot sin(\varphi)\cdot sin(\alpha))\)

が成立します。

\((u,v,w)\)、\((x,y,z)\)は、垂直線上に位置しますので、\(u = x\)、\(v = y\)が成立します。したがって、

\(r\cdot cos(\theta) = l\cdot cos(\varphi)\)

\(r\cdot sin(\theta) =  l\cdot sin(\varphi)\cdot cos(\alpha))\)

という2つの式を得ることができます。下の式の左辺を上の式の左辺で、下の式の右辺を下の式の右辺で割ると、

\(\frac{r\cdot sin(\theta)}{r\cdot cos(\theta)} = \frac{l\cdot sin(\varphi)\cdot cos(\alpha)}{l\cdot cos(\varphi)}\)

となります。\(\frac{sin(\theta)}{cos(\theta)}=tan(\theta)\)でしたので、上記の式は

\(tan(\theta) = tan(\varphi)\cdot cos(\alpha)\)

と整理できます。従って、正規型ユニバーサルジョイントで得られた式に似た

\(tan(\varphi) = tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\)

という関係を得ることができます。\(\varphi\)については、

\(\varphi = tan^{-1}(tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)})\)

と計算することができます。

ここでの議論では必要ありませんでしたが、参考までに原点\((0,0,0)\)と\((u,v,w)\)との距離\(l\)を計算してみます。先ほどの2つの式について、左辺の二乗の和と、右辺の二乗の和は等しいので、

\(r^2\cdot sin^2(\theta) + r^2\cdot cos^2(\theta) = l^2\cdot cos^2(\varphi) + l^2\cdot sin^2(\varphi)\cdot cos^2(\alpha)\)

を得ます。\(sin^2(\theta)+cos^2(\theta)=1\)ですので、この式は

\(r^2=l^2(cos^2(\varphi)+sin^2(\varphi)\cdot cos^2(\alpha))\)

と変形できます。右辺の括弧の中は、

\(cos^2(\varphi) + sin^2(\varphi)\cdot cos^2(\alpha)\)

\(=cos^2(\varphi) + sin^2(\varphi)\cdot cos^2(\alpha) + sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha) – sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha)\)

\(=cos^2(\varphi) + sin^2(\varphi)\cdot (cos^2(\alpha) + sin^2(\alpha)) – sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha)\)

\(=cos^2(\varphi) + sin^2(\varphi) – sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha)\)

\(=1- sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha)\)

と整理することができます。

これをもとの式に代入し、

\(r^2=l^2(1-sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha))\)

を得、最終的に

\(l = \frac{r}{\sqrt{1- sin^2(\varphi)\cdot sin^2(\alpha)}}\)

\(= \frac{r}{\sqrt{1- sin^2( tan^{-1}(tan(\theta)\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}))\cdot sin^2(\alpha)}}\)

を得ます。

 

 

 

ユニバーサルジョイントの使い方(7) – 作図で理解する

大学の一般教養課程で、「図学」を学びました。3次元空間の物体の幾何学的な関係についての問題を2次元の紙の上に表現して解く、と言えばよいのでしょうか。白状すると、「とりあえず単位はもらいました」程度の成績だったのですが、その理由の一つは「解こうとしている問題の諸条件を的確に盛り込んだ図をフリーハンドで描く」ということが不得手である、ということだと思っています。

そういえば、フリーハンドで円を描くのが抜群に上手い物理の先生が高校にいました。数学とか物理とかが得意な人は、こういった図を的確に描く能力もあるのではないか、などということを思ったものでした。

そういう私にとって、CADツールは、図面を描く道具だけでなく、ウン十年前の鬱憤を晴らすというと大げさですが、図学的思考をする道具としても重宝しています。今回のユニバーサルジョイントの件も、頭を整理するのにずいぶんと役立ちました。

ということで、これまで式で表現してきたユニバーサルジョイントの基準点の関係を図で表現したものを載せておきます。dda40xさんの紹介されたT氏のようなエレガントな図にはできませんが、まぁ、こういう見方もある、程度で参考になれば幸いです。

下は、ジョイントを同位相にした場合の図です。①は駆動面を、②は伝達面を、③は中継面を、④は最終伝達面を、それぞれ正面から見た様子を示します。なお、駆動面と伝達面とがなす角度と、中継面と最終伝達面とがなす角度は(絶対値が)同じであるとします。

それぞれの位置でどのように見えるかを示したのが下の図です。

駆動面①の基準点は、半径\(r\)の赤い線上を移動し、\(\theta\) の角度にあるとします(赤い線)。また、伝達面②は、①の視点からは青い点線の楕円に見えます。この楕円の高さは、基準点の回転半径を\(r\)、駆動面に対する伝達面の傾きを\(\alpha\)としたとき、\(r\cdot cos(\alpha)\)となります。このとき、伝達面の基準点は青い点線の楕円を移動し、この楕円と\(\theta\)に直交した青い点線とが交わったところに位置します。

伝達面の視点で見たのが②です。①で見えた楕円の上の基準点は、この点から\(y\)軸方向に延ばした線と、青い実線の円と交差するところとなります。これが先に示した

\(tan(\varphi) = tan(\theta-\frac{\pi}{2})\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\)

の式の意味するところです。実際にCADツールで作図して\(\varphi\)を計測してみると、上記の式で計算した値が得られます。

中継面の視点で見たのが③です。伝達面と中継面とは同位相ですから、中継面の基準点は、青い実線上ので\(\varphi\)の角度に位置します。中継面に直交する最終伝達面の基準点は\(\varphi\)に直交した角度で、緑の点線の楕円の上を動きます。

最終伝達面の視点で見たのが④です。これは①と②との関係と同じで作図すればよく、緑の点線の楕円上の点から\(y\)軸方向に延ばした線と緑の実線の円と交差する点に基準点が位置します。図から赤い実線と緑の実践とが平行であることがわかると思いますが、実際にCADツールで計測しても\(\xi=\theta\)であることがわかります。

次は、伝達面②と中継面③との基準点を90度(\(\frac{\pi}{2}\))ずらした場合を考えます。

この場合、駆動面①、伝達面②、中継面③、最終伝達面④を正面から見るとどうなるか、というのが下の図です。今回も、駆動面と伝達面とがなす角度と、中継面と最終伝達面とがなす角度は(絶対値が)同じであるとします。

まず、①、②の図は前回と全く同じとなります。③の中継面の基準点は②の伝達面の基準点に直交しますのでその角度は異なりますが、③、④で作図する方法は前回と同じ考え方です。

もともとの期待は、最終伝達面④の基準点の角度\(\xi\)が、伝達面①の基準点の角度\(\theta\)に対して90度異なる角度にあるということですが、この図は、そうはならない、ということを示しています。

②と④とを見ていただければわかりますが、②で\(\theta-\frac{\pi}{2}\)に対して\(\varphi\)は角度が進み、④でさらに\(\xi\)で角度が進む、ということがわかります。これが、前回導出した

\(tan(\xi) = tan(\theta-\frac{\pi}{2})\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\cdot\frac{1}{cos(\beta)}\)

の式の意味するところです。