最後に、左右非対称、かつ力のかかり方が不均等な場合を考えてみます。まずは、Pratt Truss Bridgeの場合です。この場合も、中心から右上方向の部材は圧縮部材として機能することがわかります。
続いて、Baltimore Truss Bridgeの場合です。少しずつ位置がずれたものを、3つ示します。
次が最後です。ここで特徴的なのは、中心から右上の斜めの構造材の下半分が圧縮部材として、上半分が伸張部材として機能していることです。
もう少し複雑な例として、6パネルに拡張した例を考えます。計算方法はこれまでに述べてきたことと何ら変わりませんので、結果のみ示します。
まずは、中心に100の力が加わったPratt Truss Bridgeの場合です。Baltimore Truss Bridgeについては、小さなトラス構造は構造的に寄与せず、実質的に同じ結果が得られますので、省略します。
次に、下のすべての節点に均等の力が加わった場合です。まずはPratt Truss Bridgeの場合。
続いて、Baltimore Truss Bridgeの場合。
Pratt Truss Bridgeで、左右非対称に力がかかった場合の例です。ここで特徴的なのは、中心から右上に延びている斜材が、圧縮部材として機能していることです。
Baltimore Truss Bridgeも等価の結果となりますので、図は省略します。
前回同様の、橋の下部のすべての節点に均等に力が加わる場合をBaltimore Truss Bridgeで考えてみます。下図のとおり、I、G、J、C、K、H、Lの各店に下向きに\(\frac{100}{7}\)の力が加わるとします。
これまでの計算どおり、A点、B点のそれぞれに上向きの50の力が加わります。M-A、A-Iの力はこの上向きの力から計算することができます。M-Iの部材のI点には、下向きの\(\frac{100}{7}\)を打ち消す力が働きます。また、I-Gの部材のI点には、A-Iの部材のA点を打ち消す力が働きます。これらを表現したのが下図です。
ここで、M点のような、Baltimore Trussに特有の、小さなトラス構造の頂点にどのような力が加わるかを一般化して解いてみます。
ここから、Baltimore Truss Bridgeの小さなトラス構造の縦の部材に下向きの力がかかった場合、その\(\frac{1}{\sqrt{3}}\)の力(注:斜材の角度が60度のとき)が、小さなトラス構造を構成する斜材に斜め上向きにかかる、ということがわかります。
また、大きなトラス構造の斜材の上半分には、その下半分にかかる力から上で計算した小さなトラス構造の値を引いた大きさの力が、反対向きにかかる、ということがわかります。
ただし、これは、大きなトラス構造の斜材に関して、下半分からは斜め上向きの力が、上半分には斜め下向きの力が加わる、という前提ですので、もしも向きが反対であれば、符号を反転する、引き算をした結果、符号が反転したら、向きを反転させる、といったことが必要です。
この結果をもとに計算結果を記入したのが下図です。
次に注目するのがN-Jの部材です。J点には下向きに\(\frac{100}{7}\)の力がかかりますので、N-Jの部材のJ点には上向きの\(\frac{100}{7}\)の上向きの力が、N点には\(\frac{100}{7}\)の下向きの力が加わります。
上で求めた通り、N-Gの部材のN点には、斜め上向きの\(\frac{100}{7\sqrt{3}}\)の力が加わります。ここまでを表現したのが下図です。
ここまでくると、G点にかかる力を次のように解くことができます。
ここまでの結果を書き込みます。
次はD点に注目して、かかる力を計算します。
この結果を追加したのが次の図です。
上で解いたBaltimore Truss Bridgeの小トラスの頂点の力のかかり方の一般解から、N-Cにかかる力を求めます。N点に左斜め上からかかる力に、Nの小トラスの斜材にかかる力を加えればよいのですが、Nから左斜め上に\(\frac{200}{7\sqrt{3}}\)の力が加わっていますので、これはN点に左斜め上から\(-\frac{200}{7\sqrt{3}}\)の力が加わると考えます。これに\(\frac{100}{7\sqrt{3}}\)を加えると、Nに向けて右斜め下から\(-\frac{100}{7\sqrt{3}}\)の力が加わることになります。これを言い換えると、Nから右斜め下に\(\frac{100}{7\sqrt{3}}\)の力が加わる、ということです。
何やら面倒くさそうな計算に思えますが、じっと矢印の方向を見ると、簡単に計算できるようになります。この結果を加え、右側にも対称に結果を加えたのが次の図です。
少々わかりにくいので、分数を計算して、最終的に次が得られます。
今回は、力のかかり方が中心だけではない場合を計算してみます。下図のとおり、Pratt Truss BridgeのG、C、Hの3つの節点のそれぞれに均等に\(\frac{100}{3}\)の下向きの力が、橋全体には合わせて100の力がかかることを想定します。
まず最初に、A点、B点にかかる上向きの力は、それぞれ50となります。
A-D、A-Gにかかる力はこれまでの計算と同じであることがわかります。また、G点には下向きの\(\frac{100}{3}\)の力がかかりますから、G-DのG点で上向きの\(\frac{100}{3}\)の力がかかります。また、A-GのG点にかかる力と反対の力がG-CのG点にかかります。
F点には垂直方向の力は加わりませんので、F-Cの部材はZero Force Memberとなります。
ここまでを現したのが次の図です。
次にD点に注目します。D点から下向きに\(\frac{100}{3}\)の力が加わるので、前回とは計算が異なってきますが、基本的な計算方法は変わりません。
これらから、最終結果は次のようになります。
今回は、前回と同様の計算をBaltimore Truss Bridgeで行ってみます。前回同様、橋の中心(C点)に下向きの100の力がかかると、橋の下辺の両端であるA点、B点には上向きの50の力がかかり、A-M、A-Iの構造材にかかる力は前回と同じ計算で求めることができます(下図参照)。
また、I点、J点、F点、K点、L点には、垂直方向の力を持ちうる部材が1つしかありませんから、M-I、N-J、F-C、O-K、P-Lの構造材はZero Force Memberであることがわかります。
更に、M-Iの部材がZero Force Memberですので、I-GのI点には、A-IのI点と反対向きで同じ大きさの力が加わります。
ここでM点に注目して力のかかり方を一般的な場合で計算してみると、つぎのようなことがわかります。
つまり、Baltimore Truss Bridgeの特徴的な小さなトラス構造の縦の部材がZero Force Memberであった場合は、その小さなトラス構造の斜材もZero Force Memberとなる、ということです。最初の図で言うと、M-IがZero Force Memberであれば、M-GもZero Force Memberとなります。同様にN-G、O-H、P-HもZero Force Memberとなります。
また、大きなトラスを構成する斜材に注目すると、小さなトラス構造の頂点を境に反対向きで同じ大きさの力が加わる、ということになります。これらを考慮したのが下の図です。
ここまで来ると、今回考えているように中心にのみ力がかかる場合、Baltimore Truss Bridge特有の小さなトラス構造は構造的には何も寄与せず、Pratt Truss Bridgeと等価となる、ということがわかります。したがって、最終的に以下のような結果を得ます。
今回より、橋の構造部材にかかる力の計算の具体例を何回かに分けて取り上げてゆきます。
なお、話を簡単にするために、以後のすべての議論において、力のかかるのは節点のみとします。また、計算を簡単にするために、斜材の角度はすべて60度とします。したがって、
\(cos(60^\circ) = \frac{1}{2} \)
\(sin(60^\circ) = \frac{\sqrt{3}}{2} \)
となります。
例題として使うのは、前回の説明で使った4パネルのPratt Truss Bridgeです。下辺の中心に100の力が加わるものとします。
どの計算でも、最初に行うべきことは橋の両端(支承)にかかる力を計算することです。B点を支点とすると、Cに加わる100の力を打ち消す力がA点にかかることとなります。これは梃子の原理で下のとおり簡単に計算ができます。
同様にA点を支点としてB点に加わる力を計算すると、同じく\(50\)となります。
これらの力がわかると、A点とB点との構造部材にかかる力を計算することができます。下図はA点にかかる力を計算したものです。
前回説明した通り、A-Dの構造材に注目すると、A点にかかる力と反対向きの力がD点にかかります。同様に、B点にかかる力と反対向きの力がG点にかかります。これらを記入したのが次の図です。
ここで、Zero Force Memberの説明をします。これは、力の全くかからない、圧縮でも伸張でもない部材のことで、上の図で点線とした、D-G、F-C、E-Hが相当します。G点に注目すると、垂直方向に力が発生する可能性があるのは、D-Gの部材のみであり、G点にかかる力が発生しても、それを打ち消して垂直方向の力の総和を\(0\)とする力が存在しません。したがって、G点には力が発生せず、D-Gの構造材には力がかからないことになります。F点、F点についても同様です。
紛らわしいのはC点で、Cに下向きに\(100\)の力がかかっているので、F-Cの構造材に力がかかりそうな気がしますが、上記の議論でF点には力がかかることはありえないので、F-Cの構造材には力がかかりません。したがって、Cにかかる下向きの力を打ち消す力は、D-C、E-Cの斜材で発生することとなります。
次にD点に注目すると、下図のように簡単に計算できます。
ここまでの結果を反映したのが下の図です。これで左半分の力のかかり方がわかりました。
この橋の力のかかり方は、左右対称なので、右側にも同じ数字が対象に入ります。最終的に次のような結果となります。
念のために、C点の力の総和が\(0\)になることを検算します。
次回は、4パネルのBaltimore Trussで同様の計算を行ってみます。
模型にはほとんど関係のない話ですが、自分自身の備忘録のために書き残しておくこととします。大部分の方には興味のない話と思われますので、読み流してください。この分野の造詣は深くはありませんので、説明が不十分であったり、不適切な表現があることがありますが、ご容赦ください。
橋を設計する中で、橋の部材には圧縮部材と伸張部材があるということを理解しました。この部材の圧縮、伸張の力をどのように計算するか、ということに興味を持ち、いくつか例題を作って解いてみたというお話です。
話を単純化して、橋を一本の棒とみなし、その棒に下向きの荷重がかかるとすると、下のように曲がろうとします。この時、橋の下辺には伸張力が加わるために延び、橋の上辺には圧縮力が加わり、縮みます。
実際の橋にかかる力を計算するには、下図のように、橋の構造を描き、力のかかる場所を決めて、橋の構造部材が集まる節点にどのような力が加わるかを計算してゆけばよいことになります。
力のかかり方を計算する際のルールは単純で、下図に示す通り、節点に集まる力の総和がゼロになるということです。
具体的には、節点に集まる部材の水平方向(\(x\)軸方向)の力の総和、同じく垂直方向(\(y\)軸方向)の力の総和、のいずれもが\(0\)になるようにすればよい、ということです。
上記の例では、\(F_1\)と\(F_2\)の垂直方向との力の和が\(0\)となります。したがって\(F_2\)の角度を\(\theta\)とすると、
\(F_1 – F_2 \times sin(\theta) = 0\)
が成り立ちます。同様に、垂直方向については、
\(-F_2 \times cos(\theta) + F3 = 0\)
が成り立ちます。
このような式を、力が分っている節点に注目して解きます。言い換えると、解けるところから解いてゆく、ということです。この時、矢印の方向が分らない場合がありますが、その際はどちらかの方向を仮定して計算し、マイナスとなったら、矢印の方向を反転させます。
一つの節点の力のかかり方がわかったら、構造部材の反対側にその力とは反対方向の力がかかります。例えば、下図上のように、左側の節点に外向きに働く力が働いたら(左向きの青い矢印)、右側の節点には反対向きの力を加えます(右向きの青い矢印)。同様に下図下のように、左側の節点に内向きに働く力が働いたら(右向きの赤い矢印)、右側の節点には反対向きの力を加えます(左向きの赤い矢印)。
こうすると、次に解くことのできる節点が出てきますので、そこにかかる力を解き、ということを丹念に繰り返せば、全体として橋にかかる力が計算できます。
最終的に橋のすべての部材にかかる力が分った場合、上の図の青い矢印のような部材は圧縮部材、赤い矢印のような部材は伸張部材として働くことがわかります。この部材に働く力だけ見ると圧縮・伸張という言葉と混乱しますが、これは部材の内部に働く力に注目するからであって、外からこの部材にどういう力が加わるか、という観点で見る必要があります。
次回以降、簡単な例題を作って解いてみます。
つらつらと書き連ねてきた橋の設計の話題は今回が最終回です。
今回Blogの記事を書くにあたって、図面を描き始めたころのデータを確認したところ、2015年6月という日付が記録されていました。最終的に図面が完成したのが2016年10月なので、一年ちょっとかかったことになります。実力相応といえばそれまでですが、もう少しさっさと仕上げられれば、というところです。
週末にわずかな時間をとれるかとれないか、という状況が続いていたのがこれだけ時間がかかった根本的理由ですが、作図をするよりも基本的な橋の知識や実物を調査して考えている時間の方が長かったというのもあります。アイソメトリック図の作図も、門構のところの描き方を考えているのに時間がかかったというのもありました。
ただ、これだけ時間をかけていると、さすがの私でも隅から隅まで構造が頭の中に入ってきましたので、レーザーカットの部品ができ、だいたい組みあがった橋をdda40xさんに見せていただた時の第一印象は「あぁ、図面通りだ」ということでした。
以前平岡幸三氏のライブスチームに対する思想というエントリで紹介した氏の言葉の中に
ここまできっちり設計してしまうと、できあがった時の姿は細かいところまで想像できるという。
というくだりがありました。私ごときがこんなことを書くのもどうかと思いますが、この言葉の意味するところがちょっぴりわかったような気がしました。
前回書いた通り、DXFデータをdda40xさんにお渡しして私の役目はほぼ終わったかなぁ、と呑気に構えていたのですが、加工業者からの連絡で次のような対応をすることになりました。
データファイルの分割
前回掲載した図の通り、加工する板の厚さごとにすべての部品をまとめた2つのDXFファイルを渡しました。材料の無駄を省くという意味もありましたが、加工業者の手間が省けるだろうと考えてのことでした。
ところが、「これだけ大きいと、加工機械で読みこめない」と言われました。そんなことがあるのかというのが第一印象でしたが、加工機械では一度に扱えるメモリ容量が違うのだろうと思い直し、部品ごとにデータを分けて改めて渡しました。結局最初からそのようにした方がよかった、ということですね。
レーザー加工の制約
すでにこちらに書いた通り、8mmの板に細いスリットを開けることはできないと言われました。詳しい理屈はわかりませんが、板の厚みがある場合は長時間レーザーを照射する必要があり、カットの幅が広がるため、ということのようです。
従って、この8mmの板については、接着ということになりました。時間があったら、もう少し位置決めを確実に行えるような構造を考えたかったところです。
そのほか、天板および門構の細かいトラスは、随分と加工に手間がかかったようです。レーザーカットは、外形をざっくりと切るのは得意でも、あまりに細かい部品を多数作るのには向いていないのかもしれません。
ここまでで書ききれなかったことをつらつらと連ねてみたいと思います。
部品の検証
技術の進展で、CADのデータを渡せばそのままのものを加工業者が作ることができるようになりました。今回も、DXFというフォーマットに落として加工業者に渡しました。こちらの意図をデータの中に完全に反映することができるため、便利な時代になったと言えばそのとおりなのですが、一方で渡すデータに設計側がすべて責任を持たなければならない、ということでもあります。
素人の設計の悲しさで、あちらを直してはこちらを直す、ということを繰り返しつつ作図してゆきましたので、設計した部品が最終的に正しく組み立てられるか、ということについて、神経を使って検証を進めました。組み立てを自分が行うのであれば、どこか間違いがあっても自分の責任で後始末すればよいのですが、今回はdda40xさんが組み立てられるので、なおさらです。
一例は、部品のはめ合わせのためのスリットとタブの位置の位置関係の検証があげられます。業者に渡すデータを作成した後、まっさらのCAD図面にタブとスリットで組み合わせる部品を置いて、位置関係が正しいかを確認する作業を行いました。集中力が必要な作業であったため、休み休み行いましたが、これだけで1日を費やしました。
部品をひとまとめに
dda40xさんほかと話をしている中で、小さな部品についてはひとまとめにしておいた方がよい、ということになり、そのようにしました。レーザーカットした後に、加工業者はそれらを「拾い集める」という作業が入り、これが一苦労なのだそうです。作る側いにとっても事情は同様で、部品が細かく分かれていると、作業の合間に行方不明になったりということあり得ると思います。
ということで、最終的に次のようなデータを作成して、渡しました。
まずこれは、t0.8の部材。
これは、t8.0の部材。中に見える四角いものは、路盤の格子を組むための治具です。
あとは、部品が出来上がるのを待っていればよかったのですが、そう簡単には行きませんでした。