月別アーカイブ: 2007年2月

Union PacificのGreen Locomotive (2)

さて、前回ご紹介したUPのGreen Locomotiveの展示ツアーですが、「Union Pacific and GE Transportation Host Green Locomotive Technology Tour」と題したUPのプレス・リリースに詳しく記述されています。

かいつまんで紹介すると、” UPとGE Transportationとは、機関車からの排出物を減らすための最新および実験中の技術を展示するために、Green Locomotive Technology Tourを実施し、2月20日から28日にかけて、7つの都市をまわる。連邦政府、カリフォルニア州、地方政府の高官や、地元の高校生に、排出物を削減するためのUPの最新技術を紹介する。さらに、燃料の節約への取り組みや鉄道の安全に関する紹介や、機関車の内部の見学を実施する“、とあります。

さらにUPの環境に対する取り組みとして、“UPは、2007年末までに、総額6000億円($1=120円)以上を環境にやさしい機関車の新規購入に費やし、古い機関車からの排出物を減らす技術の試験に数億円を投じることになる。”ともあります。

今回のTourでは、以下の4つの機関車(技術)が展示されるそうです。
(1) GE Evolution:
GEが360億円以上と8年以上の歳月をかけて研究開発を行い、実証された技術の最高のものと、最新の技術とを組み合わせた革命的なディーゼル機関車である。すでに24の特許が成立し、13の特許が特許審査中、18の特許を公開中である。

(2) Genset Switcher:
UPは、新しい低排出のGensetと呼ばれる入れ替え機関車の利用の先鞭をつけている。Gensetは、Tier3という(最も厳しい)規制に適合するディーゼルエンジンを使っており、NOxや粒子状物質を80~90%削減する一方で、16%の燃費向上も達成している。UPは、2006年から、Long Beachで、Gensetのプロトタイプを試験してきた。最初の量産機が2007年1月にLos Angeles Basin 操車場に配備され、UPは、2007年の終りまでに、160以上のGensetを運用する予定。

(3) Oxicatを装備した長距離機関車:
1989年6月に建造された高出力・長距離機関車に酸化触媒(Oxicat)を搭載し、1年間の実験をLos Angelesで進めている。Oxicatは、車やトラックに搭載されている酸化触媒と同様の働きをするものであり、ディーゼルエンジンの排気管の中に装着した。超低硫黄ディーゼル燃料を使った静止試験では、粒状物質の50%の削減が確認された。

(4) DPFを装備した低出力入れ替え機関車:
1982年11月に建造された入れ替え用機関車に、ディーゼル粒状物質フィルター(DPF)を搭載し、1年間の実験をOaklandで進めている。このフィルタは、高温シリコンカーバイドのブロックを利用し、排気中の粒状物質をとらえる。静止試験では、DPFを装着した場合、80%の粒状物質を減らす事ができた。

今回のイベントは、上記のGensetの配備が始まった事をアピールするために行なっているようです。この配備の記事もプレス・リリースの中見つけましたので、次回ご紹介したいと思います。

Union PacificのGreen Locomotive (1)

先日Clubのメーリングリスト流れてきたメールの1つのタイトルに “Union Pacific のGreen Locomotive”というフレーズを見つけて、一瞬うろたえてしまいました。

「え、まさか、UPがあのPainting Schemeを変えるの???」と驚いてしまった私はアホです、はい。冷静な皆さんはお分かりかと思いますが、このGreenとは、Environmentally Friendly(環境にやさしい)の意味です。

メールの内容は、”2007年2月20日から2月28日にかけて、Union Pacificが環境にやさしい最新型機関車の展示ツアーを行い、カリフォルニア内の7都市をまわる。政府関係者やメディア等の招待者のみのイベントだが、限られた数の趣味関係者も特別招待したい”とのことでした。Silicon Valley近辺では、Oaklandが一番近いところで、少し足を伸ばして、Stockton、Roseville、Fresnoくらいだったら行けるでしょうか。

向こうに住みつづけていたら、間違いなく名乗りを上げるところでしたが、そうもいかないので、「誰か行ったら、写真とってきてよ」と返信をしておきました。

ところがその後、続報が入ってきて、実はこの招待メールは、UPがNMRAのPCR(Pacific Coast Region)に宛てて出したものが、あちこちのクラブにばら撒かれたものであるということが判明。更に、いろんな人がUPの窓口に個別に連絡をして、UP側が混乱をしているとも。私も反射的に返信しましたから、向こうのファンもちょっとした興奮状態なんでしょうね。

このままUP側に迷惑を掛けて関係を悪くしてはいけない、ということで、NMRA/PCRとしては、行き先の都市毎に、取りまとめ役のボランティアが窓口となって、UPに連絡する、ということに落ち着いたようです。

我々のクラブからも、誰か参加するかもしれません。各都市とも25人とのことで、競争率は高そうですが。

ちなみに、このイベントのアナウンスは、UPのPress Releaseからも読むことができます。別記事で紹介してみたいと思います。

Norhtern Pacificで使っていた石炭 (4:おまけ) – Rosebudの採掘現場?

2009/4/25追記:
RAILTRUCKさんから、「ストリートビューを見たら」とのコメントを頂きました。ということで、覗いてみるとやっぱりただの平地のようです。

更に調べてみると、私がこの記事を書いた2007年2月15日当時は内容が充実しているとは言えなかったWikipediaのMontana州Colstripの記述が大幅に拡充されているのを発見しました。最新版では「Colstripは、Northern Pacificが露天掘りで石炭を採掘するために作った街である」と書かれており、露天掘りの様子の写真も掲載されています。

ということで、この記事は、私の早とちりでした。深くお詫びします。キャンセルしようかとも思いましたが、いい加減なことを書いてはいけない、という戒めの意味で、このままにしておきます。

ようやくこれで、つっかえたものがすっきりしました。RAILTRUCKさん、ありがとうございました。

2007/12/30追記:
RAILTRUCKさんから、「この模様は農場で、トラクター等の入った後とは考えられませんか?渦巻き状に掘り下げているようには見えず、平面的な感じがします。」とのコメントをいただきました。確かにその可能性もありますので、下記は「保留」とさせてください。機会があれば自分で確かめたいと思います。

RAIL TRUCKさん、コメントありがとうございました&返信が遅くなって大変申し訳ありません。

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われながらしつこいとあきれるのですが、Northern Pacificの石炭のネタを続けます。

Northern Pacificが利用していたRosebudですが、「露天掘りをしていた」とありましたので、ひょっとしてその痕跡があるかとおもって、GoogleのMapを覗いてみました。

採掘していたのは、「モンタナ州Forsyth近辺のNorthern PacificのMainline沿い」とありますから、それをもとにサーチしてみると、人工的な長方形の模様をたくさん発見することができます。

拡大すると、渦巻状に地下に掘り進んでいると思われる様子が見えます。現在でも採掘をしているということでしょうか。当時の痕跡はわかりませんが、これだけ大規模に採掘し続けられているということは、Northern Pacificが使ってた当時から、簡単に大量に採掘できたということでしょうね。

しかしながら、こんなことまでわかるとは、恐るべしGoogle。

ということで、Northern Pacificの石炭については一区切りつけることにします。調べているうちに、どんどん疑問が出てきて、もっと調べてみたいことが出てきたのですが、手持ちの資料では不十分ですので、またの機会に。(もう少し余裕があればなぁ)。

ワークスKさんの疑問から、いろんなことを調べることになり、自分自身新しい発見がありました。こういうのがblog/インターネットの良いところですね。ワークスKさんに感謝です。

Northern Pacificで使っていた石炭 (3) – Rosebudの品質

さて、NPが使っていた石炭に関し、前々回の記事で参照したThomas Dresslerの本には、ligniteと書かれており、前回の記事で参照したWikipediaでは、sub-bituminous coalと書かれているのが気になりました。なんとなくすっきりしないので、Googleを使っていろいろと調べてみたところ、米国エネルギー省のエネルギー情報機関(?)/Department of Energy, Energy Information Administrationのサイトに、石炭に関する用語の定義集を見つけました。

この分類が、蒸気機関車華やかなりし頃の分類と同一かどうかというのは確認していませんが、大幅に変わるとも考えにくいので、この分類を使って、Northern Pacificがどんな石炭を使っていたか、見てみたいと思います。

まず、石炭のランクには、高い品質の順番に、無煙炭(anthracite)、瀝青炭(bituminous coal)、亜瀝青炭(semi-bituminous coal)、褐炭(lignite)の4つがあり、それぞれの水分とBTU(British Thermal Unit)とは以下のようになっているとあります。但し、BTU値は、水分とミネラル分(灰のもとになる)を除いたあとの値で、平均BTUは、採掘直後?(as received:水分とミネラル分を含む)の値です。

Anthracite/無煙炭
水分: 15%
BTU値: 2200~2800万/ton、平均2500万/ton

Bituminous/瀝青炭
水分: 20%
BTU: 2100~3000万/ton、平均2400万/ton

SemiBituminous/亜瀝青炭
水分: 20~30%
BTU: 1700~2400万/ton、平均1700~1800万/ton

Lignite/褐炭
水分: ~45%
BTU: 900~1700万/ton、平均1300万/ton

Thomas Dresslerのデータを再度引用すると、NPの使っていたRosebudは、

水分:25%
BTU:8750/ポンド = 1750万/ton

とあります(但し、tonは、ShortTon = 2200ポンドと仮定)。まず第一に、石炭の品質としては決して高くないことがわかります。

このBTU値が、水分/ミネラル分を含んでいるかどうかはわかりませんが、数字だけで分類すると、Semi-Bituminousとなります。ただ、この分類そのものが厳密なものとは考えにくいので、RosebudはLigniteだ、といっても差し支えないということでしょうか。Ligniteとしては、最もまともなレベルであることがわかります。平均的なグレードのligniteだったら、さすがにNorthern Pacificも機関車の燃料として使うことはためらったのではないでしょうか。

限られたデータからの考察ではありますが、Northern Pacificがどんな石炭を燃料としていたのか、というのがおぼろげながらわかるデータだと思います。

Norhtern Pacificで使っていた石炭 (2)

Northern Pacificで使っていた石炭や機関車に関し、Wikipediaに次の記述を見つけましたので、紹介しておきます。

Northern Pacific was known for many firsts in locomotive history and was a leader in the development of modern supersteam locomotives. NP was one of the first railroads to use Mikado 2-8-2 locomotives in the USA. The 4-8-4, known as the Northern on many railroads, was first built by Alco in 1926 for NP and designated Class A. The 2-8-8-4, called the Yellowstone, was first built for the NP by Alco in 1928 and numbered 5000, Class Z-5, with more built by Baldwin Locomotive Works in 1930. Much of this and later devopment was due to NP’s need to burn low grade semibituminous coal strip-mined at Rosebud, Montana. The coal thus called Rosebud had a Btu 50 percent lower than eastern coal which meant that the fireboxes had to be bigger than those used by most locomotives. The Wootten firebox was used, which was also used by the anthracite railroads.

Northern Pacificは、機関車の歴史の中で多くの「初物」で知られており、また近代的なSupersteam locomotiveの開発のリーダーのひとつであった。NPは、米国でミカド2-8-2を使用した最初の鉄道のひとつである。多くの鉄道で「ノーザン」と知られている4-8-4は、1926年にALCOによってNP向けに初めて建造され、クラスAと分類された。イエローストーンと呼ばれる2-8-8-4は、1928年にALCOによってNP向けに初めて建造され、5000番の番号を与えられ、クラスZ-5と分類され、さらに1930年にBaldwinによって追加分が建造された。NPによる、これらの機関車の導入、およびその後の発展は、モンタナ州Rosebudで露天掘りで採掘されていた低品質の準瀝青炭を燃やす必要があったためによることが大きい。この石炭はこのためRosebudと呼ばれ、東部の鉄道に比べて50%低いBTU値しかなかった。このことは、ほとんどの機関車で使われていたものよりも火室を大きくする必要があったことを意味していた。ウーテン型の火室が使われ、これは無煙炭を使っていた鉄道(東部の一部の鉄道の代名詞)でも使われていた。

写真は、Z-5のボイラーの写真です。いかに火室の部分が大きいか、感じ取っていただけるかと思います。これは、1930 Locomotive Cyclopediaに掲載されているものです。

Northern Pacificで使われていた石炭


ワークスKさんから、Northern Pacificは本当にligniteを使っていたのか、というご質問を頂きましたので、資料をひっくり返して見ました。

以下は、1980年代前半にThomas Dresslerが著し、N J Internationalから刊行された”The First Northerns – Northern Pacific A Class 4-8-4”の冒頭に書かれている情報を抜粋したものです。

・NPの機関車に使われていた石炭は、モンタナ州Forsyth近くの、NPの本線の近くの会社の所有地で、露天掘りで採掘していた。

・石炭は廉価であったが、質は高くなく、Rosebudという名前で知られていたlignite(亜炭)であり、25%の水分(moisture)と9%の灰(ash)を含んでいた。

・BTU(British Thermal Unit:熱量の単位)は、1ポンドあたり8750しかなく、他の大部分の鉄道で利用されていた石炭のBTU値をはるかに下回っていた。

・炭鉱の立地条件、およびコストの面で、NPはこの石炭を燃料として使うことにし、1920年代中ごろ以降のNPの機関車は、この石炭を燃やすように設計されていた。

ちなみに、Rosebudというのは、上記Forsyth Cityの隣のCityの名前であり、またこの一帯の地域(County)の名称でもあります。

さて、この本ですが、出されてすぐのころに購入したものです。NPの4-8-4について非常によくまとめられた本です。今でも探せば入手できるのでしょうか(ISBN 0-934088-03-9)。表紙の写真を載せておきます。