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Know Thy Niagaras

久しぶりに新刊の本を買いました。正確には、発売が予告された時点で予約をしていたものがようやく発刊され届いたものです。

Know Thy Niagaras
Tom R. Gerbracht
New York Central System Historical Society
ISBN 978-0-492-08187-7

New York CentralNiagaraは、数ある4-8-4の中でも、知名度、性能のいずれでもトップクラスを争う機関車ですが、その研究書の決定版となることは確実です。著者のTom Gerbracht氏は、New York Central System Historical Society(以下NYCSHS)の会長職を以前務められ、現在はディレクターという肩書きで、NYCSHSの運営の指導的な立場にいらっしゃる方です。

カラーを含む未公開の写真が数多く掲載されており、また、ALCOの公式図面が数多く含まれています。下記は、Elevation(正面図)です。

ひとつ驚いたのは、NYCもDuplexの検討をしていたということです。簡単な図が掲載されています。

Gerbracht氏によると、この本の出版に際しては、

  1. “Stochastic Print Process”を使って、印画紙のクオリティに近い写真の印刷ができること、
  2. 写真の注釈を充実させること、
  3. モデラー向けに外観に関係する図面を多く乗せること、
  4. 技術的な情報を含めつつも、一般の人に読みやすく伝えること、
  5. この一冊だけあれば困らないような本にすること、

に留意したとしたことです。

ちなみに、タイトルの中の”Thy”というのは、”Your”の古い表現のようで、日本語の訳としては”汝の”という言葉が使われることが多いようです。なにやら宗教的な意味合いを持たせたのだろうかとも思いましたが、Gerbracht氏によると「そういうつもりはない」とのことでした。

NYCSHSのWebサイトから購入することができます。Amazon.co.jpでは扱っていません。定価は$89.95で、送料が$25くらいかかるのが少々痛いところですが、再版はしないとのことですので、早めに買わないと売切れてしまうと思います。

 

N&WのクラスJ、611号機の動態への復活

すでにあちらこちらで発表されているので、いまさらの感はありますが、N&WのクラスJ、611号機の動態復活作業が終わりに近づき、 エクスカージョンのスケジュールも決まり、チケットの販売も始まったというニュースが流れています。

先日の5月9日のNational Train Dayに合わせて、復活の作業を行っているNorth Carolina Transportation Museumで自走テストをしたそうです。この時の様子がYoutubeに掲載されています。

シリンダーのカバーや台車の塗装がまだのようですね。予定では5月30日にRoanokeに戻るとのことです。

実は私も$25.00と雀の涙程度ではありますが寄付をしました。このお礼と報告との手紙がVirginia Museum of Transportationから来ていました。わずかな寄付でもこういうレターを送ってくれるのは律儀だなぁ、と思いますが、一方でアメリカでは寄付という行為が日常一般に行われることの裏返しであるようにも思います。


まずこれはお礼の手紙。

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こちらは、Excursionのスケジュールです。

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予約はwww.fireup611.orgから行えます。もうかなりが売りきれているようです。私も乗ってみたいとは思いますが、いつのことになるやら。

CavalierPelicanPowathan Arrowと、N&Wにゆかりのある列車の名前が使われていますね。


これは、Fireup 611!のプロジェクトの進み具合の報告です。

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611の復活に際して集められた寄付は、機関車の動態復活、機関車を保存する建物、 エクスカージョンの費用に充てられるということでしたが、そのお金を何にいくら支出したかが述べられています。

動態復活の作業については、次のような作業を行ってきたとのこと。

  • 611号機は2014年5月にノースカロライナ交通博物館に到着した、
  • ボイラージャケットやスカートが外され、ボイラーの修理、状態の調査、部品の交換や修理を行い、水圧テスト、蒸気圧のテストも完了した、
  • 2つの空気圧縮機の整備が終わり、取り付けを待っている状態にある、
  • 1994年当時には必要なかった安全装置のために発電機を追加した、
  • 安全弁やスロットルバルブの整備を行っており、新しい洗口栓をとりつけた、
  • 各種の部品や計器の整備が終わり、取り付けを待っている状態である。
  • バルブハンドル他、キャブの部品の整備が終わり、取り付けを待っている状態である、
  • テンダーの塗装が終わった、

といったことが書かれています。詳しくは、fireup611.orgのFacebookページを辿ってもらうのがよいと思います。

機関車を保存する建物については、もともと2線のものを建てる予定だったが、St. Louisの交通博物館からクラスY6a、2156号機を借りることになったので、3線のものにすることにしたとあります。クラスJ611号機、クラスA、1218号機と、クラスY6a2156号機が並ぶと、N&Wの蒸気機関車の最後の時代を飾った主力の3型式がそろうことになります。

これは往時のJ、A、Y6を写した写真です。この風景が再現されることになります。

※Nortolk Southernの公式Flickrに掲載されているものを共有しています。

2156号機はすでにSt. Louisを出発し、Roanokeに到着しています。St. Louisを出発するときの様子を撮影したYoutubeを見つけました。移動の様子を記録したFacebookのページも用意されています。

途中、West VirginiaにあるPrichardという街にある有名なCoaling Towerで停車して写真を撮影したものがNorfolk SouthernのFlockrに掲載されています。ここで撮影された写真をどこかで見たのですが、思い出せません。

ただでさえ移動スピードが遅いうえに、こんな場所で写真を撮るということは、本線の運行スケジュールに差支えなかったのだろうか、という余計な心配をしたくなりますが、Norfolk Southernもいきな計らいをしますね。


よくある質問(Frequently Asked Question)」です。

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最後の項目に、N&W Class J 611を商標登録する手続きを行ったとあります。写真などを商用利用する場合は、ライセンスが必要とあります。611の保存などの資金に活用するようです。


この611号機は、Roanokeのシンボルと言ってもよい機関車であり、この動態への復活は、地元のTV局でも取り上げられていますので、次回、紹介してみたいと思います。

 

Norfolk SouthernがFire Up 611!に150万ドルを寄付

611

何回かご紹介している、ノーフォーク・アンド・ウェスタンのクラスJ(4-8-4)の611号機を動態に復活しようというFire Up 611!ですが、このプロジェクトに対してノーフォーク・サザン(以下NS)が150万ドルを寄付した、というニュースが入ってました。単に寄付しただけならば、前回の記事の補足で書いたのですが、そのお金の調達方法が面白かったので、簡単に紹介してみたいと思います。

まず、NSのプレスリリースはこちらとなります。地元のTV局のニュースや、地元紙にも紹介されています。

今回の寄付によって、Fire Up 611!が集めた総額は200万ドルを超えたとあります。当面350万ドル、最終的には500万ドルを目指していることからすると、まだ道は長いと思いますが、今回の寄付が大きな弾みになるのでしょうか。

肝心の寄付のお金の調達方法ですが、米国を代表する抽象画家であるマーク・ロスコが1959年に描き、NSが1996に購入して保有している絵(無題)を、美術品のオークションで有名なサザビーズで競売にかけて売却して得たとのことです。もともと150万ドルから200万ドルが落札価格と予想していたところ、 369.3万ドルで落札されたとあります。この絵を紹介しているサザビーズのページはこちらとなります。

NSがこのような貴重な美術品を保有しているということ、そしてそれを競売にかけて寄付するという発想をするところが、アメリカらしいような気がします。

※冒頭の写真は、NSの公式Flickrサイトへリンクをはっているものです。

 

Fire Up 611!プロジェクトが一歩前進

以前、ノーフォーク・アンド・ウェスタンのクラスJ(4-8-4)の611号機を動態に復活しようというFire Up 611!のプロジェクトを紹介しましたが、「機関車の修復を行うだけの資金は集まった」という公式サイトの発表がありいました。

もとの計画では、2013年9月末までに、350万ドルを集め、それを
1) 611号機を完全にレストアするための費用
2) 611号機を整備するための建物を新規に建てるための費用
3) エクスカージョンのための費用
に充てるということでした。

今回の公式発表では、
・アメリカ国内、国外15か国から約2000件の寄付があったこと、
・611号機そのものを修復する(mechanically restore)するだけのお金は集まったこと、
・これによって、「611号機が動態に復活するかどうか」という話ではなく、「611号機がいつ動態に復活するのか」という話になってきたこと、
・募金は、611号機を数十年にわたって走らせるために必要となる整備用の施設を用意することを目的にシフトすること、
・その資金が集まるまで、611号機はVirginia Museum of Transportationに保管されること、
が述べられています。

現時点でどれだけのお金が集まったかは書かれていませんでしたが、もともとの計画で目指していた350万ドルの内訳のうち、機関車の修復に必要な金額は50万ドル~75万ドルということでした。平たく言えば、目指していた金額は集まらなかった、というだと思いますが、それを「Fire Up 611のプロジェクトは、重要なマイルストーンを達成した(Fire Up 611 reaches important milestone!)」と前向きに言い換えてしまうところがアメリカらしいような気もします。

それはともかく、上記の2000件近くの寄付の中には、わたくしの雀の涙ほどの寄付も含まれているので、今後の動きを楽しみにしてゆきたいと思います。

ご興味のある方に、寄付のためのボタンを貼り付けておきます。

Donate Now

 

Let’s fire up 611!

前々回にご紹介したノーフォーク・アンド・ウェスタンの611号機(クラスJ、4-8-4)を動態に復活させるためのスタディの結果が28日の11時(現地時間)に発表されたようなので、紹介してみたいと思います。

結論から言うと、「復活は可能」で、それを現実のものとするには、今年の9月末までに350万ドル(簡単の為に$1.00=100円とすると、3.5億円)の寄付が必要だ、とのこと。この金額が集まれば、9ヶ月をかけて611号機をレストアし、2014年度のNSの21st century steam programの牽引機の一員に加わる事になるのだそうです。

この350万ドルの使途ですが、
1) 611号機を完全にレストアするための費用
2) 611号機を整備するための建物を新規に建てるための費用
3) エクスカージョンのための費用
で、最終的には500万ドル(同、5億円)を集めて、ある程度長い期間エクスカージョンを継続したい、というのが検討を進めた委員会の意向だそうです。

レストアの内容は詳しくはFireup 611!のサイトのこのページに記されていますが、さっと見たところでは、
・先台車の修復
・最新の規格に適合するようにボイラーを修理し、検査報告書を提出する事
・最新の保安施設の搭載
といったところが目に付きます。1994年にエクスカージョンが突然中止された際に、スタッフが良い状態で保存できるように、さまざまな手を打ったのが功を奏していると書かれているのが印象的です。

すでにあちこちで紹介されていますが、Trains.comのWebサイトのこの記事が一番まとまっています。当然地元でも注目されていて、611号機が保存されているRoanokeの地方紙がこちらの記事を掲載しています。地元のTV局は、正午のニュースのトップニュースとして取り上げています。もうひとつ、夕方のニュースでも再度取り上げられています

こちらは、Fireup 611!の募金のための公式プロモーションビデオです。

3ヶ月で350万ドルというのは、かなり野心的とも思うのですが、動態に復活した姿をぜひ見たいと思います。

こちらから寄付ができるようになっていますので、ボタンを貼り付けておきます。
Donate Now

[2013/7/13追記]
Press Conferenceのビデオが公開されました。

Fireup 611!: N&Wの611の動態復活に向けたスタディが開始

バージニア交通博物館(Virginia Museum of Transportation、以下VMT)が2013年2月22日に発表したところによれば、VTMに保存されているノーフォーク・アンド・ウェスタン鉄道611号機(クラスJ、4-8-4)を動態に復活させるための検討を始める委員会が設立されたとのことです。

Fireup 611!というプログラムと称し、60日から90日をかけて、機関車を動態に復活するための技術的な課題、安全を含めた運行上の課題、そしてもっとも大事なビジネスプラン、を検討するとあります。

1994年に突然excursionが打ちきられた後20年近くになりますので、技術的な観点からは、動態に復することのできる状態にあるか、法律で求められるボイラーに関する要件が大きく変わっていることへの対応、といった検討がなされるものと思います。

また、運行の観点では、蒸気機関車の運行に不可欠な給水施設をどう用意するか、本業の貨物輸送のスケジュールに著しい影響を与えないか、ということが検討必要なのでしょう。

一番大変と思われるのがビジネスプランの立案です。ファンの心理からは、ぜひ復活してもらいたいという思いはありますが、これだけの機関車を復活するには相応の初期投資が必要となりますし、さらにそれを運行し続けるには、継続的にお金が入ってくるようにしなければなりません。このような、お金の回る仕組みが説得力のある形で描けなければ、動態復活も絵に描いた餅にしかなりません。

ということで、このFireup!611の活動も、「動態に復活する」ではなく、「動態に復活できるかどうかの可能性を検討する」としか言っていません。とはいえ、記者会見が大々的に行われたこともあり、動態に復活することを前提にこの活動を開始したのであろうということを期待しています。

以下のリンクは、Jの生誕地であるRoanokeの地方紙、”The Roanoke Times”に記載された記事です。
Transportation museum launches study to get 611 steam engine rolling again

また、当日の 記者会見の模様が以下のYoutubeに掲載されています。

さて、どんな結論が出るでしょうか。今から楽しみです。

 

Illinois Railway Museumを訪問 (6)

もう一台保存されている4-8-4が、このBlogでもたびたび紹介しているAT&SFのクラス2900である、2903号機です。
まずはフロントビュー。

第一~第二動輪から、前方を写してみました。

これは第四動輪です。動輪径は80インチ(2032mm)です。

これはサイドロッドです。タンデムロッドの様子がわかります。残念ながらメインロッドは取り外された状態にあります。

火室とキャブです。

その下、従台車を写しました。

軸箱にはしっかりと”Timken”と刻まれています。

テンダーです。長いので、ようやくこれくらいで写すのが精一杯です。

Buckeyeの4軸の台車です。3つに分けて写してみました。

昨年(2009年)、Modestoで2925号機を見たときの話はこちらとなります。この時は金網が邪魔だなぁ、と思い、今回は、隣の車両との間隔が狭く、なおかつ照明条件もよろしくない、ということで、納得できる写真をとるのは大変だなぁと思いました。

Illinois Railway Museumを訪問 (5)

Display Barn 9には、各種の大型蒸気が保存されています。

これは、ノーフォーク・アンド・ウェスタン鉄道の、Y-3、2050号機です。この博物館の中で、おそらく最大の蒸気機関車だと思います。通路が狭く、うまく全景を撮影することができなかったのですが、一枚。

ここの展示で嬉しかったのは、私の大好きな4-8-4が多く保存されていることです。

これは、グランド・トランク・ウェスタン鉄道のU-3b型です。

Detroit Model Railroad Club訪問記で、U-4bの模型の動画をご紹介しましたが、これはその前の世代の機種となります。

ミルウォーキーのS3、265号機です。まずはフロントマスク。


機関車の全景を撮ろうとしても、これが精一杯というところです。

下回りを2枚。

動輪径は、74インチ(1880mm)です。

テンダーのロゴです。小ぶりではありますが、下地を赤にしていて、よく目立ちます。こういうアクセントが効いているところが、アメリカ型の魅力の一つだと思います。
さて、この265号機、ワークスKさんの掲示板でも話題になった、パブリック・エネミーズに「出演」した261号機と同型機です。

上記の掲示板にも書いたとおり、この261号機は、売りに出され、カリフォルニアのコレクターが落札した、ということでしたが、その後、この261号機を運行していた”The Friends of 261″が買い取ったということが、こちらのニュースレターに記されています。

これからの資金調達などを考えると、決して前途は明るいとは言えないと思いますが、まずは一件落着、というところでしょうか。

UP 844 at Niles Canyon

ワークスKさんの掲示板に、UP844のWestern Heritage Tourのことを紹介させていただきました。その後掲示板にも書き込みましたが、現地でも注目度合いは高かったようで、至る所に写真やビデオが投稿されています

このツアーの最中の2009年4月22日、UP844は、オークランドからストックトンに移動する途中、Niles CanyonのHearst Sidingと呼ばれる場所に一時停車しました。その際、Golden Gate Railroad Museumが保有しているサザン・パシフィクのパシフィック(4-6-2) 2472と、Pacific Locomotive Association/Niles Canyon Railwayが保有しているRobert Dollar Lumber Company No. 3とが出迎えるという、豪華なイベントになりました。

心憎いと思ったのは、この一時停車は、もともと計画されたものではなく、ツアー開始後に、上記のGolden Gate Railroad MuseumとPacific Locomotive WorksとUPとが、協議を行い、実現したものだそうです。事前のアナウンスがどれくらいされたのかはわかりませんが、それでも200人近くが集まったとのことです。

さて、知人の一人が、この時の写真を送ってくれました。掲載許可をもらいましたので、ご紹介します(写真は、クリックしていただければ拡大します)。

一番左に見えるのが、UP844です。その隣に、SPの2472、Robert Dollar Lumber Company No. 3、と並んでいます。

上記のクローズアップです。

UP844が少し前に出て停車したアングルです。1944年製ですから、65年を経ています。数年前に大改装を行ったというのもありますが、とてもそのような古さを感じさせないですね。

※ 上記3枚の写真の著作権は、David Griffy氏に帰属します。

このほか、Golden Gate Railroad Museumのホームページには、写真が掲載されており、このときのビデオも掲載されています。このビデオは高解像度で記録されていますので、インターネット回線に余裕のある方は「HD」と表示されている箇所をクリックしてみてください。

ご参考までに、停車した場所は以下のあたりになります。クリックするとGoogle Mapsが開きます。


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