月別アーカイブ: 2014年11月

土木コレクション2014 HANDS+EYES

仕事で外出の帰り途に新宿駅西口を通ったら、「土木コレクション2014  HANDS+EYES」という展示会が目に留まりました。土木学会がその創立100周年を記念した事業の一環として主催しているもので、ここに示されているパネルのように、日本のランドマーク的な建築物がその設計図面とともに紹介されているほか、実物の図面も数枚展示されていました。図面好きの私にはたまらない展示会で、時間つぶしにと思ってさっと通り過ぎるだけのつもりだったところ、ずいぶんと長居をしてしまいました。

CADなど存在しない時代の図面ですので、当然手で人間が描いたものです。達人がその一本一本の線に神経を込めて描いたであろうということが伝わるようです。図面によって、つまりはそれは人によって、ということだと思うのですが、それぞれの個性があることもわかります。

設計者の頭にあるものを、製作者に伝えるためのコミュニケーションの手段というのが図面の第一義的意義であると考えています。そこに求められるのは、わかりやすさ、正確さ、スピード、だと思います。このような存在である図面と絵画のような芸術とは根本的に異なるものだと思うのですが、美しい図面を見るといつも芸術的であると感じます。絵画の巨匠の素描をみると、力強くであったり、軽やかであったり、いろいろな個性がありますが、ども線にも無駄がないと感じます。素晴らしい図面を見ていると、同じようなことを感じるのです。

11月22日土曜(ということなので、本日!)まで開催されています。お近くでお時間のあり、図面が好きという方はご覧になってはいかがでしょうか。このほか、全国各地の本屋さんで図録を入手することが可能とのことです。学会の事業ということもあると思いますが、定価650円+税、というのは良心的な価格設定だと思います。

平岡幸三氏のライブスチームに対する思想

dda40xさんのBlog他で平岡幸三さんの講演の話が掲載されています。

「品位の高い部品を作る」というのが良い模型を作る原動力とのことですが、これを読んだ私は「設計が重要」と平岡さんが主張されているのを思い出しました。

日本放送出版協会が昭和50年11月に発行した「趣味の世界」というシリーズの第2巻、「私の模型鉄道(ライブスチーム)」という新書版の本で、8つの事例が紹介されている中の1つとして平岡さんが取り上げられています。この本が編集されたのは、平岡さんがLive Steam誌にShayの記事を連載されていたころであり、平岡さんの3台目のギアードロコであるハイスラーのV型エンジンができあがったころです。このV型エンジンの写真を見て、本当に美しい工作だとこの本を入手したときに感じたのを今でも覚えています。

古い本なので、入手が難しいかもしれないと思い、この本に紹介されている平岡さんの思想を示す部分を引用してみたいと思います。漢数字を算用数字に変更した以外は原文のままです。

まずは、シェイを作成するにあたって、平岡さんは次のような方針をたてたとのことです。当たり前のことが書いてあるようですが、まともに動く機械を作るという点で重要な方針が語られています。

①プロトタイプにできるだけ忠実に作ること。ライブ・スチームにありがちな形態の崩れを少なくし、ボルトにいたるまでなるべくプロトタイプを忠実に再現させること。

②実物のシェイと同じく大牽引力、急曲線通過の特徴を持たせる。すなわち平坦線路で大人5人以上引け、最小通過半径は1.8メートルとする。

③運転保守が容易で安全であること。どこかを点検するために、機関車全体をバラバラに分解しなければならないような構造はやめ、エンジン、台車などの各ユニットごとに簡単に取り外すことができる、というモジュール思想を取り入れて設計する。また、ボイラーの許容水面変動範囲が小さいと、運転が非常に難しくなるため、この模型では25ミリとし、十分な余裕を設けること。

この方針を受け、クランクシャフトなどの設計がいかに大変だったかというようなことが書かれており、次のように続けられています。

しかし「性能、工作、運転、保守のすべての死命を制するのは設計がよくできているかどうかです。それにライブ・スティームの楽しさの6割は、設計にあるんじゃないかと思います」という平岡さんは、まず完全な設計図を描き、それから作業に取りかかる。

(略)

製作図面は各部品ごとに、製作公差まで入れたものを描いた。できあがった模型を収納する箱まで設計してある図面は、なんと100枚以上に達している。

ここまできっちり設計してしまうと、できあがった時の姿は細かいところまで想像できるという。だから、”ちゃんと動くかな”というような心配や、夢のような期待もまったくないそうである。

この図面、全部書き上げるまでに、1100時間かかっている。製作時間は970時間だから、作っている時間より、製図をしていた時間のほうが養鶏にかかっていることになる。”楽しさの6割は設計”というのは、時間の上にもあてはまるようだ。

走行性能が第一義的に求められるライブスチームの世界では特に、まともに走るものを作るためには設計が重要と思うのですが、設計がしっかりしていることは、作るべき部品がいかにあるべきかを明確にすることにつながり、その結果自分の作っている部品をそのあるべき姿に近づけようとすることができると感じました。

平岡さんは最高峰に位置する人ですので、私がそのまま真似るのは無茶というものですが、それで諦めるのも芸がないので、自分のできることからやっていこうと考えています。

 

アメリカに行ってきました – iPhoneのカメラの性能をみて考えたこと

今回の旅行ではかなりの写真を撮りました。数年前に買った安物のコンパクトカメラなので、光量が十分なところではそこそこきれいに取れるのですが、夕暮れ時や室内では自動設定では思うように色が出ず、マニュアルで露出をコントロールしてだましだまし撮りました。それでも満足のゆく写真はほとんどないのではありますが、まぁそれは自分の腕に起因するので、あきらめるしかないですね。

それはさておき、いろいろと露出を試行錯誤している横で、娘がiPhone 5で写真を撮っている画面をふと覗くと、こちらの方がはるかに自然に自動的に露出をコントロールしているのを見てショックを受けました。自分のコンパクトカメラは、安物とはいえ一応ちゃんとした「カメラ」ではありますので、スマホのくせに、というようなモヤモヤ感を持って帰国した直後、iPhone 6が発売3日で全世界で1000万台を売り上げた、というニュースに接し、自分の頭が固くなりすぎていないかと思い直し、次のようなことを考えてみました。

Wikipediaによると、2013年度のiPhoneの出荷台数は約1.5億台となっています。2012年9月にiPhone 5が発売されていますので、この年の出荷はほぼiPhone 5と考えられます。こちらのiPhoneの製造原価分析よると、iPhone5のカメラの推定原価は14.8ドルとあります。この価格が調達価格だと仮定すると、カメラを製造した会社の2013年度の売り上げは14.8ドル×1.5億=22.2億ドルとなります。計算が面倒なので1ドル=100円とすると、2220億円。撮影するためのソフトウェアはAppleが開発しているはずで、その開発費やらその他もろもろを考慮に入れると、iPhone5のカメラだけを仮想的に取り出して年間売り上げを算出すると、固く見積もっても3000~4000千億円は行くことは確実と思います(本来はもっと精緻な分析をすべきでしょうが、それがここの目的ではないのでご容赦ください)。

一方で、たとえばデジタルカメラの雄の一つであるキヤノンですが、2013年度の事業構成によると2013年度のデジタルカメラの売り上げは約9700億円と計算できます。上記のiPhone 5に比べて倍から3倍の規模ですが、カメラの開発に投入できる金額という観点で見ると話は違ってきます。キヤノンはコンパクトカメラから高級一眼レフの幅広い商品ラインアップの製品開発を行っているの対し、iPhoneは基本的に1機種です。1機種あたりの開発費で見ると、iPhoneのカメラの開発に投入できる金額の方が大きい可能性は十分にあります。

Appleはそもそもメディアの扱いに長けたコンピュータを作ってきた会社ですので、カメラの開発に必要となる画像処理技術に強いエンジニアも数多く在籍しているはずです。故スティーブ・ジョブスは人間の感性に強いこだわりを持った人だったので、iPhoneの開発において、カメラ機能が使いやすいとか、写真が綺麗に取れる、といったことにも相当こだわったのではないかと推測します。

そんなこんなを考えると、iPhoneのカメラの性能が良いのも不思議ではない、と考えを改めなければならないと思うようになりました。普通の人が普通に写真をとるという観点では、iPhoneで十分以上の性能を確保しているのだと思います。撮影後即座にネット上のSNSにアップロードするという一連の流れをスムーズに行うという楽しみ方を提供しているという点で、普通のコンパクトカメラに比べて分があると思います。

スマホの形状からくる物理的な制約によって、撮れる写真に制約がある場合もあるでしょうが、それで困るのは少数派でその場合は本格的な一眼レフを使えばよいのだと思います。そういえば今回行った先々の公園で、本格的な一眼レフを三脚に備え付けて素晴らしい写真を撮っている人でも、合間にiPhone/スマホで写真を撮っていたのを何度も見かけました。そういう人たちも手軽に撮影するにはiPhone/スマホで十分と認めていたのかもしれません。

とかなんとか書いた上で、やっぱりちゃんとした一眼レフが欲しいと思うようになったのではありますが。。。

 

アメリカに行ってきました – サウスウエスト航空を使う

グランドキャニオン・ノースリムを後にし、ラスベガスまで半日ほどでドライブし、そこからサンノゼまで飛行機で移動したということを書きましした。日本往復便に併せて飛行機のチケットを手配すればよかったのですが、この移動は発券後に決めたため、ネットで探して一番料金が安かったサウスウエスト航空を使うことに。

この会社、日本では知名度は高くないように思いますが、ずっと好業績を続けている航空会社です。近年はやりのLCC(Low Cost Carrier)のビジネスモデルを確立したともいわれており、その方面の教科書で成功事例として取り上げられることもあります。その特徴的なところを体験しましたので紹介してみます。ご存じの方にはいまさらですが、ご容赦ください。

(1)座席指定という概念がない。

通常の航空会社に慣れた人にとっては、これが一番の違いだと思います。チェックインすると搭乗番号が割り当てられるので、その番号順に搭乗して好きな席を選んで座ります。ネットを使えば24時間前からチェックイン可能なので、良い場所に座りたければ早くチェックインするしかありません。空港のカウンターまでチェックインできなかった私には、ほぼ最後の番号が割り当てられ、家族がバラバラに座ることとなりました。

実際の搭乗では、まずA-1からA-25、A-26からA-50という二つの列ができ、A-1からA-25の人が順に搭乗し、その次にA-26からA-50の人が搭乗し同時にA-1からA-25の列にB-1からB-25の人が並ぶ、ということを繰り返してゆきます。

極端なことを言えば定員になったかどうかだけ管理すればよいので、航空会社は予約システムを簡素化し、開発費を抑えることができます。搭乗ゲートで乗客の座席の変更リクエストに時間を費やしている航空会社の職員を見ることがありますが、このような窓口対応も最低限にできます。

(2)メジャーな空港にはなるべく乗り入れない。

サウスウエストは、多くの場合主要都市の表玄関の空港ではなく少し外れた空港を使っています。本社のあるダラスでは、ダラス・フォートワース空港ではなくダラス・ラブフィールド空港に乗り入れています。ニューヨーク、シカゴでもそれぞれ、ジョン・F・ケネディ空港シカゴ・オヘア空港を避けています。表玄関の空港は利便性が高いのではありますが、着陸料も高いので、経営コストや運賃に跳ね返ることになります。

(3)飛行機は1機種のみ。

サウスウエストが保有・運行しているのはボーイング737のみです。機種を統一することによって保守の部品を共通化することができるので、部品をまとめて大量に購入することができ、調達費用を下げることができると思います。管理すべき部品の点数も絞られますし、保管のためのスペースも減らせる、といったことによって間接的なコストも削減できると思います。

複数の機種を保有すると、その機種ごとにパイロットをそろえ、それぞれの機種ごとにパイロットの管理をする必要がでてきます。保有する機種を一種類にすることで、管理体系を一本に単純することができますし、いざという時の人員のやりくりも柔軟に対応できるはずです。同様のことが整備のスタッフに言えると思います。単一の機種に集中して会社のリソースを投入できるというのは、航空会社に最も求められる安全の確保という観点でも有利だと思います。

 

さて、搭乗しての感想は、特にないというのが正直なところです。とはいっても、もともと短かめの距離を移動することに主眼を置いてサービスしている会社ですので、対価として求めるものは安全かつ時間通りの運航ということだと割り切るのが妥当だろうと思います。その観点からは満足のできるサービスでした。

上で書いたようなことは、言われてみればコロンブスの卵的な発想かとは思うのですが、誰に対してどういうサービスを提供するかを絞り込み、それまでとは異なる新たなビジネスで儲かる仕組みとして形にしてここまで会社を発展させてきたというところは賞賛されるべきことなのだろうと思います。