アメリカの社会」カテゴリーアーカイブ

アメリカに行ってきました – 携帯電話を買う

ワークスKさんから、鉄分はどうした、とコメントをいただきましたが、しばらく旅の話を続けます。

アメリカ旅行をするにあたって、知人とのコンタクトに電話があったほうが好都合なので、携帯電話を手配することとしました。一番簡単なのは、日本の携帯を持って行って、そのまま使う、という方法です。会社で出張する時はこの手段を使っていましたが、ちょっと通話するだけでとんでもない通話料となったことが多く、個人の旅行でそんな出費をするわけにはいきません。また、アメリカの知人が私にかける場合には、+81の国際電話通話となるので、いやがられるだろう、というのもあり、この方法は却下。レンタルという手段もありますが、使わないのに毎日基本料をとられるものがほとんどで、バカバカしいのでパス。

知人とも相談しいろいろ考えた結果、「現地で買う」こととしました。10日ほどの滞在ですから長期契約などはできず、買ったのは所謂プリペイド携帯(向こうでは「No Contract Phone」と呼ぶことが多いようです)です。レンタカーのフロントで空港近くの量販店を教えてもらい、「No Contract Phoneが欲しいんだけれど。通話とSMS(向こうではTextと呼びます)だけできて、一番安いやつ」と伝えると、じゃあこれかな、と見繕ってくれたのが、15ドルの電話機と、15ドルの通話料のカード。合わせて30ドル(+税)で各種手数料などは一切不要。

手続きでは、名前を聞かれ、市外局番はどれがいいと聞かれ、君は旅行者なんだから住所はこの店にしておくよ、と言われて30分もかからずにあっけなく終了。日本では、プリペイド携帯購入時は身元の特定を十分にするように指導がされているとのことですので、この簡単さは何なんだろうと思いましした。

通話料も15ドルで150分使える(ただし1か月まで)ので、今回の旅行には十分でした。ちょっと調べてもらえればわかると思いますが、日本の携帯を使う場合、レンタルする場合に比べると、圧倒的に単価が安いです。次回アメリカ旅行するときも、この電話機を持って行って、通話カードを買ってチャージだけすればよいはずです。

そんなこんなで、日米の携帯電話事情の違いに多少戸惑いながら旅を始めることとなりました。

アメリカに行ってきました – 最近の車事情など

前の記事にも書きましたが、我が家のアメリカ旅行はすべて車で移動することを基本としています。今回はレンタカーを予約する際に車種の選択で「Hybrid」とリクエストを出しておきました。カウンターで「Priusを用意したから」と言われ安心して車のピックアップに向かったのですが、トランクを開けるとスペースが小さすぎます。車をよく見ると確かに「Prius」とあります。しばらく狐につままれた気分でもう一度よく見ると、「Prius C」と書かれているのを発見。ようやくここにきて状況を把握。これは、日本でプリウスとして売られている車ではなく、アクアとして売られている車だ、ということです。これでは家族分のスーツケースが入らないので、カウンターに戻って、Prius CではなくPirusはないのか、と交渉したのですが、すべて出払っているということ。仕方なくSUVかワゴンにしてくれと要求したら、あいにく選択肢が残っていないということで、キャデラックのSUVが割り当てられました。

Cadillac

私には分不相応なので、こんな車に乗っていいのかと思いつつドライブを始めたのですが、結局3100キロくらいをこの車で走り、それだけの長距離を移動するには非常に快適であり、結果的には正解だったと思います。ただ、給油する際にものすごい勢いでガソリンを飲み込んでゆくので、はらはらとはしましたが。

今回、サンフランシスコ/シリコンバレー近辺を走っていて驚いたのは、電気自動車が多数走っていたことです。私の生活圏では一週間に1回みるかどうかという日産のLEAFをいたるところで見ました。また、見慣れない高級セダンをぽつぽつと見るなぁと思ったら、TESRAのモデルSでした。現地の知人に、「電気自動車をよく見るのだけれど、充電設備などのインフラは整っているのか」と聞いたところ、「まだまだだけれど、決まった距離を通勤する分には問題ない範囲で使っているのだと思う。それに、一人しか乗っていなくてもカープールレーンを走ってもよいので、そういうメリットを考えて購入している人も多い」という意見でした。

電気自動車の普及も思っているより早く来るのかも、というようなことを感じました。

Norfolk SouthernのTVコマーシャル (後編)

Norfolk Southernの新しいTVコマーシャルの件、前回の記事で「Making of」映像の概要を紹介し、、腑に落ちないところがあったということを書きました。まずはコマーシャルの最初に歌われる「Norfolk Southern, what’s your function?」という言い回しです。私個人の感覚なのですが、コマーシャルとしてはずいぶんとベタな言い回しをしているように感じました。

それから、Making of映像の一番最初に「Updating a Classic」という言葉が出てきたり、説明の中に「Recreate」という言葉が出てきて、振り付けとか、ミュージカルとか、シンコペーションとか、いう言葉が出てくることも気になっていて、たぶん何かネタとなるものがあったのだろうという想像はできたのですが、それが何なのかがちゃんと聞き取れていませんでした。

しばらく調べて、次の映像を見つけたときに、目から鱗が落ちたような気がしました。

これは、1973年から85年まで放映されていたSchool House Rock!という子供向けの教育番組のために作られた、「Conjunction Junction」というものです。英語の接続詞(Conjunction)であるAND、BUT、ORを使って単語や句や文をつなぐことで、表現の幅が大きく広がるということを、貨車を使って視覚的に説明しています。

ORを表現するのがORE  CARとなっていたり、屋根に上がってブレーキをかける様が表現されていたりとか、鉄道に造詣の深い人が映像制作に携わっていると思われます。これが発表されたのが1973年なので、カブースも含まれているのも嬉しいですね。

本題に戻って、NSのコマーシャルは、これを下敷きにして実物を使って現代の映像として再現したものです。メロディや構成をほぼ踏襲しているほか、いろいろな表現が引用されています。

Conjunction junction, what’s your function
Hooking up words and phrases and clauses

Norfolk southern, what’s your function
Hooking up the country helping business run

となっていたり、

I’ve got and, but, and or.
They’ll get you pretty far.

our trains, trucks and bridges
oh they’ll get you pretty far

になっているとか。

70年代を子供時代で過ごした人にとっては、懐かしさも感じさせるコマーシャルになっていると思います。このコマーシャルを担当していた人の中にもこのオリジナルを子供時代に見ていた人が多いであろうことが想像されます。1973年制作なので、今年がちょうど40周年という節目の年でもあります。NSも相当力を入れていたのだと思います。

このあたりの経緯は、NSのプレスリリースにまとめられています。この存在に最初に気づいていればこんなに悩まずにすんだのですけれどね。

最後に、コマーシャル単体の映像も載せておきます。

Norfolk SouthernのTVコマーシャル (前編)

ワークスKさんが、MRHに紹介されていたNorfolk Southern (NS)の動画について掲示板に紹介されていましたが、この件について少し書いてみたいと思います。

件の動画はこれです。

これは、要するに、NSの新しいTVコマーシャルのいわゆる「Making of」映像で、ざっくり私の理解した範囲を書くと、半年以上の時間をかけていること、通常の運用の合間を縫って撮影したこと、当初は機関車2台の予定だったのが4台になったので迫力満点になった、といったことが紹介されています。

技術的には、機関車が勢ぞろいする様子は実は機関車をバックさせて逆回転させているとか、機関車を俯瞰する映像を撮影するためにプログラム可能な最新式のカメラを使って、開始位置と停止位置とを指定してボタンを一押しすれば、カメラがその通りに動いて、迫力ある映像を撮影してくれる、といったことが紹介されています。

最後のところでは、俺たちは子供のころから鉄道好きでトレイン・セットで遊んで育ってきたんだ、迫力満点の実物の機関車が俺たちの合図で動くのを見るのはたまらないぜ、といった感じの事を、少し興奮したスタッフが語っています。

コマーシャル自体の内容は、「Norfolk Southern, what’s your function?」という言い回しで始まり、それに対して、「Hooking up the country and helping business run」と応える形で始まります。それぞれ、「Nofrolk Southernよ、お前の役目は何なんだい?」、「国の中の人や会社ををつなげて、ビジネスの動きを助けているのさ」、といった意味です。その後もこの調子で、一般人にとって感心が高い「雇用を生み出す」ということにNSが間接的に貢献している、といったことも織り込みつつ、NSがアメリカという国を動かす力の一端を担っているということを少し愛国的なトーンで訴えているものです。

というところで、「Making of」の話はおしまいなのですが、私自身は腑に落ちないところがありました。まぁ、要するに肝心なところが聞き取れていなかったということで、非native speakerの限界だと思うのですが、それは次回に。

Steam, Steel and Stars

あまり何も書かないとずるずると書かなくなってしまうので、昔話をしつつ、本を一冊紹介してみたいと思います。

趣味の本に限らず、本屋さんをぶらぶらしながら気に入った本を見つけるのが好きです。もうずいぶんと昔の話になってしまいましたが、アメリカに初めて暮らすことになって間もないころ、かなり大きな書店を散策している時に、この本を手に取りました。「アメリカの文化/暮らし」といった、一般読者向けのコーナーに置かれていたと記憶しています。何の予備知識もなく、タイトルの「Steam」という言葉を見つけて条件反射的に手にしただけで、それが何の本なのかについては全く気にもとめていませんでした。

手にして驚いたのは、前回の記事でのワークスKさんへのコメントの中で紹介したHotshot Eastboundの写真が裏表紙に使われていることでした。そうか、ノーフォーク・アンド・ウェスタン鉄道(以下N&W)の写真集だったのか、ということを認識したのではありますが、その時点ではそもそもN&Wという鉄道に対する興味が希薄だったので、まぁ、いいかと書棚に戻しました。

ところが、どうも気になる本で、この書店に来る度には手に取ってぱらぱらめくるということを繰り返し、結局購入するに至りました。N&Wの鉄道の活躍を素晴らしい技術で写しているということもありますが、それよりもN&Wを取り巻く「人」やその沿線の街での「50年代の古き良きアメリカの暮らし」が生き生きと写されていることがこの本の魅力なのだと思います。

特に、N&Wで働く人々の表情が魅力的で、どの人も誇りに満ちた顔をしています。こんな顔をして仕事をしている人いるのだから、N&Wはきっと素晴らしい鉄道会社だった違いないと思うようになりました。またこの本の写真を撮影したO. Winston LinkがN&Wの写真を撮るようにとるようになったきっかけのエピソードにもそれを裏付けるようなことが書かれており、その後以前紹介した「N&W: Giants of Steam」とか、「The A: Norfolk & Western’s Mercedes of Steam」を購入することとなり、上記の私の思いは間違っていないと思うようになりました。

Steam, Steel and Stars
Photographs by O. WINSTON LINK
Text by TIM HENSLEY
HARRY N. ABRAMS, INC. Publishers
ISBN 0-8109-2587-7

残念ながら、現在は絶版となっているようですが、相当数が出版されたと思うので、気長に探せば入手できると思います。私は今でもちょっとした合間にこの本を手に取っています。

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Robert’s Rules Of Order (2)

最新版のRobert’s Rules of Order Newly Revised(以下RONR)は、全部で200ページもあり、私自身もごくごく一部しか理解していませんので、何か簡便にまとまったものがないかと思って探していたところ、「米語による公式会議運営手順」と題して、Kaz Utsumi氏が簡単にまとめられた資料を見つけました。参照、引用をお願いしたところ、ご快諾いただきましたので、「第3章 動議提出、ならびに討議の仕方」から抜粋し、紹介させていただきます。なお、下線、およびカッコ内に補足とある部分は、私が加えたものです。

—- ここより引用
(A) 動議(Motion) 提出
A会員が動議を提出する手順は立ち上がるか、又は少人数の場合、まず右手を挙げて、Mr. Chairman/Madam Chairと言い、議長に発言許可を求めます。議長:The Chair recognizes Mr. A またはA会員を指差して指名します。それからA会員は立ち上がり: Mr. Chairman/Madam Chair, I move that…… と動議を提出します。
(一部略)
そして他のB会員がSecond 又はI second the motionと言えば、議長はA会員の動議を議題として討議しなければなりません。 ここでB会員は必ずしもA会員の動議に賛成する訳ではありません、ただA会員の動議は討議するに値すると考えただけでも良く、その後の採決に不賛成投票をしても良いのです。 あるいは誰もSecondと言わなければ、議長はIs there a second to this motion? と尋ね、なおSecondがなければ、A会員の動議は議題とされません。 これは少数意見を尊重するために考え出された手法ですが、ただ一人だけの意見だと分かると、それは討議は時間の浪費ですから、動議とは成りません。
(一部略)

(B) 討議 (Discussion) 
議長はSecondと聞くと、It has been moved and seconded that ……. と動議を要約し周知させ We are now ready for discussion on the motion. 又はIs there any discussion? 討議が始まります。
(一部略)
するとC会員がMr. Chairman と挙手し、議長に発言許可を求め、The Chair recognizes Mr. C. またはC会員を指差します。C会員は賛成なり不賛成の意見を述べます。 議長は次にC会員の対立意見を他の会員に求めます。 他の会員が発言を求めている間、議長はC会員に再度発言許可を与えません(補足: 次にC会員が発言できるのは、他の発言希望者が意見を述べた後)。複数の人が同時に反対や賛成意見を述べたり、一方的な論議にならないよう、議長は賛否両論バランス良く、公平に議論を進める義務があります。

(C) 修正動議 (Amend the Motion)
討議していると、この動議は修正される必要があると考えたE会員は修正動議(Amend the Motion)の動議を提出できます。例えばA会員の動議(Main Motion)はAd Hoc Committee を作り、詳細を検討するとします。 E会員のAmendmentは誰がどのようにしてAd Hoc Committeeを作るかとします。 議論を進めていくと、F会員は何日までに作ると更なる修正動議を出します。 そして後から出てきた修正動議から順に採決を取ります(補足:この場合、F会員の修正動議、E会員の修正動議、A会員の本動議の順序で採決。Last-In, First-Outと言う)。 このような修正動議は二度までと限定されています。
正式には、三度目の修正動議には議長は Our procedure allows up to two amendments, thus your motion is out of order. と言って、三度目の修正案を拒否します。これは動議があまり複雑にならぬようとの配慮です。
—- ここまで引用

少し細かいところまで引用しましたが、有意義な議論を公平にかつスムーズに行うための工夫を感じ取ってもらえるのではないか、と思います。

このように見てくると、たかが趣味のクラブとはいえ、広く認められた議事規則を採用して運営しているということ、そして、クラブのメンバーが、RONRにしたがってスムーズな議事を進められるだけの最低限の知識を持っているということ、に驚かされます。特に後者に関し、米国では、このような議事規則に関する実践的な教育の場面が設けられているのではないか、などということを想像してします。

最後になりますが、資料の参照、引用をご快諾いただいたKaz Utsumi氏にこの場を借りて御礼申し上げます。

2009/9/10追記:
ワークスKさんより、ライオンズクラブのRobert’s Rules of Orderの解説記事の存在を教えていただきました。

Robert’s Rules Of Order (1)

私の在籍したクラブのBy Laws and Constitutionの紹介を続けてきました。Model RailroadingのBlogとしては、あまり面白いとも思えない話題を長々と続けてきたのは、私の感じたアメリカのクラブの一側面を伝えたいとの思いでとりあげたものです。これに関してもう一つの話題を書きます。

最後のシリーズの(6)で、

第8条 議事の運営方法 には、議事の進め方が書かれています。

という紹介をしました。実際の議事の雰囲気は、以前書いた記事に紹介しました。

会議は毎月1回開催されるのですが、これがまたなかなかすごくて、最初は圧倒されました。私は仕事で「国際規格標準化会議」みたいなものに出ることがあるのですが、運営の方法が全くそれと同じなのです。まず議題は「I move to … (…の動議を提出します)」と始まって、他のメンバーから「Second! (賛成)」の声があってはじめて議論が始まります。

これを読むと、いろいろと複雑な手続きが決まっていて、上で書いた第8条には、色々なことが細々と書かれていると想像されるかもしれませんが、実際には次の一文が書かれているのみです。

特に定めのない限りは、最新版のRobert’s Rules of Orderに従う

Robert’s Rules Of Orderは、米国でのさまざまな場面で会議の議事運営に標準的に採用されており、米国を中心とした各種の国際標準を決める場面でも使われている議事規則で、初版が1876年に出されており、かれこれ130年以上の歴史があるものです。

上記サイトの歴史のページによれば、陸軍で働いていたH.M. Robert氏は、たまたま地域のコミュニティの会議の議事進行を頼まれたものの、進め方がわからなくて困ったのが、Robert’s Rules of Orderをまとめることになったきっかけになったそうです。その後Robert氏は、自身で議事進行の研究を進めるとともに、全米各地で働く中で、議事進行規則が地方や参加者の出身地によってばらばらであることを認識し、標準になるものを自分で書いたのが初版となり、その後脈々と改訂が行われ、現在は第10版となっています。

日本では「ロバート議事規則」と呼ばれるようですが、本記事を書いている時点では、Wikipediaの解説の日本語版がないのを見ればわかるとおり、あまり広く知られているようには思えませんので、次回そのポイントを簡単に紹介してみたいと思います。

By Laws and Constitution (6)

引き続き、By Laws and Constitutionの紹介です。

ここまでのところで、クラブの運営方針、会員の資格、役員の仕事、定例会議の運営、を紹介してきました。第6条以降は、組織の運営にかかわるどちらかというと細かい話がまとめられており、以下簡単に説明します。

第6条 役員会 には、緊急に決めるべきことがある場合などに会長権限で召集できる役員会の召集の方法、運営の方法が決められています。
第7条 委員会 には、特命事項を検討するために委員会を設立する場合の方法が決められています。
第8条 議事の運営方法 には、議事の進め方が書かれています。
第9条 By Laws and Constitutionの修正方法には、このBy Laws and Constitutionの修正方法が述べられています。

第10条 収入と支出 には、予算の決め方、共用の支出に関する払い戻しについて書かれています。この払い戻しですが、予算外のものについては、定例会議の決議を必要とし、更に100ドル以上の支出については、定例会議での議決を必要とする、というようなことまで決められています。

第11条 解散 には、解散したときのクラブの資産の処分について書かれており、すべての負債を処理した後に残ったクラブの資産については、似たような目的を持った、免税措置を受けた団体に寄付する、ということが書かれています。今回読み返してみて、ここまで決めてあったというのを認識して、驚いた次第です。

さて、この最後の条項の「免税措置を受けた」ということについて触れてみたいと思います。

アメリカでは、すべての人に確定申告の義務があります。この際、米国の国税局であるIRSの501(c)という規約に記載されている、一定の条件を満たしたNPOに対する支出については控除の対象となります。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アメリカの主要なHistorical Societyが、この501(c)(3)の認定を受けています。私がこの一連のシリーズを書くことになったきっかけは、Alco Historical & Technical Societyの設立を紹介したことにあるのですが、このAlco Historical & Technical Societyのトップページにも、「501(c)(3)の適用の申請を目指す」ということが紹介されています。

アメリカでは、寄付をする文化が発達しています。このような寄付活動は、節税ととらえられるかもしれませんが、私はむしろ、税金という形でお金を払って社会に薄く還元するよりは、寄付という形で特定の目的に支出することで、自分の信じる社会のあり方を実現する一助とする、という社会的な意味が大きいと思っています。

有名な寄付の例としては、古くは鉄鋼王カーネギーが数多くの図書館を寄付したとか、最近ではマイクロソフトの創始者のビル・ゲイツが寄付活動に専念するといったものがあり、寄付は大きな財を成した富裕層だけの話だと思われがちです。しかし、アメリカでは、上に書いたような、NPOへの支払いを控除対象にできるということで、一般市民レベルでも寄付を促進できるようになっている、ということを記しておきたいと思います。

このような仕組みが整備されているということは、私がワークスKさんの掲示板に書いた
米国では『人々が集まるためのルール作り』がしっかりしている
ということを、社会的な側面から支えている、と捉えることができると考えています。

By Laws and Constitution (5)

長々と続いていますが、By Laws and Constitutionの続きです。

第4条 役員の条項には、クラブの役員とその仕事が決められており、年1回の選挙の方法も、公正に行われるように細かく手続きが書かれています。

役員のポストは6つあり、以前紹介したように、以下のようになっています。

1) President(会長): 定例会議と役員会を取り仕切ること
2) Vice President(副会長): 会長の代行
3) Superintendent (監督): レイアウトの問題の発見、報告、管理、対処の指示
4) Secretary(書記): 議事録の作成、配布
5) Treasurer(会計): 予算の作成、予算遂行状況の管理/報告

面白いと思ったのが、会長の権限が上記の役職の順序で継承されていくことが明文化されていることです。日本では、副会長の権限は、「会長を補佐し」みたいな表現が一般的かと思いますが、副会長の一番最初の任務は、「会長不在のときに会長職を代行する」と決められています。同様に監督の仕事の一番最初に書かれているのは、「会長、副会長不在のときに会長職を代行する」ということで、以下、書記、会計と続いてゆきます。

このほか目に付いたのは、会計担当の役割の1つとして、毎年の予算の立案というのがあるのですが、その際の支出の優先順位が明確に決められていることです。

第5条 会議には、クラブで行う会議とその位置づけが決められています。

一番重要なのは、毎月第一金曜日に開催される、定例会議(Business Meeting)です。一番重要と書いたのは、この会議だけが「議決」を行うことができるからです。そのため、会議の定足数(quorum)も決められており、厳密に守られています。月末になると、定足数に足りるかどうかを確認するメールが飛び交うのが通例で、定足数を満たさない場合は、定例会議は延期されます。
定例会議の「議決」に必要な数は、出席者で投票の資格のある人の半分となっていますが、メンバー加入の承認、会費の改定など、重要と思われる案件については2/3となっています。

By Laws and Constitution (4)

By Laws and Constitutionの4回目です。2回か3回で終わるつもりでしたが、改めて読み返してみると、新しい発見があり、あと数回続きそうです。模型のBlogのはずなのに、お硬い話題に踏み込んでしまって、自分自身戸惑っていますが、こんなことを書いているBlogが一つくらいあってもいいだろう、ということで書き進めてゆきます。もう少しお付き合いください。

第3条 会員では、正会員、家族会員など5つのクラスの会員の定義、会費の決め方、退会の手続き、が決められています。以下、正会員を例にとって、会員になる方法、会員として持てる権利について紹介してゆきます。

会員になる方法は、以前簡単に触れました。入会意思のある人は、3ヶ月の慣れるための期間(familiarization period)を、仮会員という形でクラブに参加します。この後、定例会議で審査し、2/3の賛成で入会となります。

今振り返ると、かなり厳しい審査と思いますが、このシリーズの(3)で紹介したクラブの趣旨を共有しつつ、他のメンバーと協調ができるか、ということが問われていたのだと思います。

「協調」という言葉を補足すると、これは「自分の主張を持ちつつ、他人の主張に聞く耳を持ち、尊重する」ということです。このシリーズの(1)のコメントに書いた、

アメリカでは、「個人が対等」ということが強く意識されているので、「好きなように生きたい自分」を実現するには、「好きなように生きたい他人」を意識し、両者の折り合いをつける必要があります。

ということに相当します。なかなかニュアンスが伝えにくいのですが、日本語で連想する「協調」は、「同調」に近いと感じているので、一言補足してみました。

正会員の持つ権利として明記されているのは、クラブのレイアウトで運転をする権利、レイアウトの部屋の鍵を受け取る権利、レイアウトの建設を担当する権利、クラブの役員になる権利、などです。他のクラスの会員として持てる権利は、この一部となります。

意外なことに、正会員の権利として一番最初に書かれており、最も重要なものは、上のどれでもありません。「議決に参加する権利(right to vote)」です。これは正会員だけの特権で、他の会員が持つことのできない権利でもあります。

これが何を意味しているかということを考えてみましたが、クラブの方向性を決めるプロセスに参加し、自分の意見を反映することができる、そうして、自分たちのクラブは自分たちが動かしてゆくのだ、という意識と責任感とが持てる、ということだと思います。趣味のクラブとはいえ、運営してゆく中では、いろいろな課題が出てきます。それに対処するために、メンバーのひとりひとりが知恵を結集し、議論を尽くし、一番良い決断を下すというための権利だと思います。

こう考えると、right to voteというのは、単に多数決のときに賛成か反対かの票を投じるという権利だけではなく、それに至る議論のプロセスに参加できるという意味を含んだ、広い意味ととらえるべきなのでしょう。