月別アーカイブ: 2009年10月

SPのキャブフォワードAC11のレストア (1) – キャブフォワード –

この記事は、Mark Schuzter氏Espee’s Cab Forwardsの1ページめのSouthern Pacific’s Cab Forwardsを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2009年4月25日に作成されました。


サザン・パシフィックのキャブフォワード

これらのページは、2台のアカネのキャブフォワードのレストアの記録をたどるものである。

キャブフォワード

セントラルパシフィック鉄道、後のサザンパシフィック鉄道は、大陸横断路線が開通した後、シエラの山岳地帯を超えて貨物を輸送したいという強い願望を持ち、次々と大きな機関車を作っていった。しかし、山岳地域の最小半径の小さなカーブによって、機関車のホィールベースが制限された結果、従来型の機関車では、大きさに制約が課せられた。サザンパシフィック鉄道が考えた解決方法は、フランス人のエンジニアのマレー(M. Anatole Mallet)氏による設計を基にした、新しい連接形の機関車の導入であった。サザンパシフィックは、マレー式の機関車を用いることで、シエラの山々を超して貨物輸送ができるということを認識した。

しかし、ほどなくして、サザンパシフィック鉄道は、これらの新しい機関車では、別の問題を解決する必要がある、ということがわかった。シエラの路線は高地にあり、冬の間線路を開通させておくために、何マイルにもわたって木製の雪よけが設置されていた。初めてマレー型機関車をこの雪よけの中を走らせたとき、乗務員が機関車の煙で窒息しかかったのである。煙は、雪よけで跳ね返され、キャブに直接侵入してきた。後に、乗務員が呼吸をしやすいように呼吸装置がキャブに備えられたものの、排気の強い熱を和らげるには役にたたなかった。

従来型のマレー式機関車の1台を、テンダーを先頭にして(機関車を後ろ向きにして)、雪よけの中を運転する、という実験が行われた。煙突が乗務員の後方を走行する形になるので、乗務員は排気に関する問題から解放された。これらの実験の結果、キャブフォワードの考え方が誕生した。初期のキャブフォワードは、逆向きに走るように改造されたマレー式機関車であった。機関車の煙室側の後ろにテンダーを連結できるように、(燃料の)油と水の配管が機関車の長さの分だけ延長された。これらの機関車はたいへんうまくいったので、一連の異なるキャブフォワードのシリーズのデザインにつながっていった。

AC-8シリーズまでで、キャブフォワードの設計は頂点に達し、その後のAC-10からAC-12にいたる発注は、AC-8の設計にほぼ一致している。[訳注:AC-9は、シエラでは使われなかったので、通常の形状の(キャブフォワードではない)連接機関車です]。AC-10からAC-12は、4205から4294の90台の機関車からなり、すべて1942年から1944年までに製造された。これらの大型のキャブフォワードは、蒸気機関車の黄昏の時代に作られ、4294はサザンパシフィックに納入された最後の新製蒸気であった。[訳注: 4294は、カリフォルニア州鉄道博物館に静態保存されています]

これは、Dick Kuelbs氏によって1956年に撮影されたAC-11、4271号機である。


 

SPのキャブフォワードAC11のレストア – 目次 –

引き続き、Mark Schutzer氏のブラス機関車の作例を紹介してゆきます。今度は、Akaneのキャブフォワード(AC11)です。

技法的には、これまでにご紹介したP-8パシフィックや、クラスMT-4マウンテンに共通する部分がありますが、日本型にはない、大型の連接機ということで、これまでと違った部分も多く、お楽しみいただけるのではないか、と思っています。

前の記事の目次でも書きましたが、日本では一般的ではない技法や材料が出てきたり、一部間違いがあったりしますが、参考になる部分も多いのではないかと思います。そこまで行かなくとも、米国にはこのような楽しみ方をしている人がいるということ、日本から輸出された模型がこのように愛されているということ、ということだけでも感じ取ってもらえれば、と考えています。特に、アカネというメーカーが存在した、ということを理解してもらうだけでも意味があると思っています。

なお、訳を掲載する当たっては、Mark Schutzer氏の許可を得ています。元記事、写真の著作権は、Mark Schutzer氏に属しますが、他の人に著作権がある一部の写真については、その旨が明記されています。

訳にあたっては、日本語としての読みやすさを主眼に、原意を損なわない程度に意訳したつもりですが、私の実力不足により、原文の微妙なニュアンスが訳し切れていないところがあるなど、所期の目標が達成されているとは思えません。また、用語を中心とした専門的な知識の欠如により、誤訳、不適切な訳が含まれていると思います。何か気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。

これまで同様、このページは目次とし、以下、記事を追加する度にそのリンクを追加してゆく形を取りたいと思います。

サザン・パシフィックのキャブフォワード(AC11)のレストア
(1) キャブフォワード
(2) キャブフォワードの模型
(3) 最初の一歩
(4) 駆動系の改修
(5) バランスをとる
(6) ディテールの追加
(7) 塗装の準備完了
(8) 線路上での試験
(9) 塗装の準備
(10) 塗装
(11) デカールはり
(12) ウェザリング
(13) 仕上げ
(14) 完成

祖父江欣平氏の訃報に接して

すでにdda40xさんのBlogに書かれているとおり、祖父江欣平氏がお亡くなりになられたこと。

祖父江欣平氏の死去
続 祖父江欣平氏の死去
続々 祖父江欣平氏の死去

祖父江氏の功績などについては、お付き合いの長いdda40xさんの上記の文書をお読みいただきたいのですが、ここでは私なりに追悼の意を表したいと思います。

私が米国型に興味を持つようになって、気がつくと30年近くになります。この間、数多くのHOスケールの模型を見たのですが、ここ数年、O-Scaleの模型に目が行くようになりました。初めて覗いたO-Scale Westのあちこちで”Sofue Drive”と書かれた三条ウォームに改造された機関車があるのを見て、米国での祖父江氏の存在の大きさを認識するに至りました。

そのうち、祖父江氏作のOスケールのMax GrayやUS Hobbiesの模型をよく見る様になって感じたのは、特にカツミを中心とする、日本から輸出されたHOスケールの模型の多くが、機関車の構造、プロポーションなど、祖父江氏のOスケールの模型を範にとっているのではないか、ということです。

プロポーションといえば、祖父江氏の実物の印象の捉え方に対するセンスには抜群のものがあります。50年以上前の模型で、限られた資料で作られたにもかかわらず、ぱっと見たときの説得力の高さは何故なのだろうと感じます。

つい先日まで訳を連載していたMark Schutzer氏がレストアしたカツミのSPのマウンテンも、Oスケールのものを参考にしたのだろう、と推測しています。

私見ですが、このような祖父江氏のOスケールの模型が米国で評判を獲得したことは当然のことであり、結果として米国の模型界を活性化させ、HOスケールも含めた日本からの模型の輸出を盛んにしたこと考えています。そのことは、日本の模型産業を活発化させ、日本の16番の模型が発展する礎になったのではないでしょうか。祖父江氏は世界の鉄道模型趣味界にとって、大変な恩人であったと言っても過言ではないと思います。

一度お伺いしてじっくりお話をさせていただいたことがあります。祖父江氏は、機関車作りの職人というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、私が驚いたのは、一級の鉄道模型趣味人でもあった、ということです。どこそこのプロトタイプが良いとか悪いとか、祖父江氏なりの価値観をご披露いただきました。

圧巻だったのは、UPのパイロットのロストワックスの部品を持ち出されて、「ほらね、このステップの滑り止め、網目板だと思うでしょ。でも違うんですよ、実物はピラミッド状のとがったもが細かく並んでいるんで、ちゃんとそういう型を起こしたんですよ」と言われたことです。このこだわりは、実物や模型に対する深い理解があってこそ、だと思っています。

今度はあれを作るんだ、と熱っぽく語られた様が今でも印象に残っています。

心よりご冥福をお祈り致します。

SoundTraxx 90-Day Safety Net Warrantyを利用してみました (2)

さて、SoundTraxx 90-Day Safety Net Warrantyを利用するには、購入後90日以内であることはもちろんですが、デコーダーを送り返すにあたって、以下の条件を守るように、と書かれています。

(1) デコーダー本体を送ること。これはもちろんですが、時々、機関車を送る人がいるので、それはやめてくれ、との補足があります。
(2) 正規代理店から購入したレシートの原本を、同封すること。これはコピーでは不可で、必ず原本が必要とのことです。修理完了時に返却してくれます。
(3)しっかりとした箱に梱包し、保険をかけられる手段で送ること。

このほか、壊れたときの状況を説明した手紙を作成して同封することにしました。こういうのはくどくど書いても仕方ないので、簡潔に「デコーダーとレシートの原本を同封したので、SoundTraxxの90-day Safety Net Warrantyで修理・交換をお願いしたい。動かなくなったのはかくかくしかじかの状況である。もしも質問があれば、メールかファックスでお願いしたい。」しかかいていません。

送付には、郵便局のEMSを使いました。保険も掛けられ、トラッキングも到着の確認もでき、1200円なので、まずまずではないでしょうか。

待つこと約3週間、修理されたのか交換されたのかはわかりませんが、正常動作するデコーダーが送り返されてきて、ほっとしました。このようなサービスがあるのは、心強いものです。デコーダーの設置は、ユーザーに委ねているので、ユーザーが安心してDCCを楽しめるようにしている、という配慮なのでしょう。

とはいっても、壊したときの精神的ダメージ、時間のロス、送り返す面倒くささを考えると、このようなサービスは2度と使いたくないと思いましたが。

今回の教訓:
(その1)まず、配線はよく確認すること。

(その2)人間はいくら注意をしても、必ず間違いをすると思って対処をしておくことこと。

(その3)コネクタは、キーつきのものにして、反対方向に差し込めないようにするか、ピン配置が対称になるようにして、反対に差し込んでも問題のないようにしておくこと。ただし、後者の場合は、コネクタの体積が増えるので、使う場所をよく考える必要があります。

参考までに、以下は、返送されてきたデコーダーの配線に使ったモレックスの2ミリピッチのコネクタです。商品番号は、ピン側が53253、ソケット側が51065、ソケットに使う金具が51065となります。これがベストのものだとは思わないのですが、大きさ(体積)、許容最大電流だけでなく、入手製なども含めて総合的に考えると、一つの選択肢だと思っており、時々使っています。

SoundTraxx 90-Day Safety Net Warrantyを利用してみました (1)

ずっと人の記事の訳ばかりしているのもマンネリ化するかと思うので、たまには自分の経験談でも書こうと思います。こんなことを書くと私のそそっかしさがバレるのではありますが、ちょっとした失敗談を書いてみようと思います。同じことでお困りの方にお役にたてれば幸いです。

先日、SoundTraxxTsunamiを購入して、取り付け作業を行っていた時のことです。デコーダーにコネクタを仮付けして、プログラミング作業を行おうとしていたのですが、コネクタを誤って反対に挿してしまったのに気づかず、「あれ、音が出ない」と思ったときはすでに後の祭り。

青い顔をして、マニュアルを引っ張り出し、デコーダーのリセットをかけたのですが、デコーダーがウンともスンとも反応せず、壊してしまったかとがっくり。しょげ返って修理方法を調べていたとき、Digital Sound Decoder Warranty Informationというページを見つけ、その一文を見て、目が点になりました。

引用すると(下線、太字は私が付加したものです)、

If during the first ninety (90) days you damage your Digital Sound Decoder or it fails to operate, SoundTraxx will repair or replace the system free of charge if:

訳すると

購入後90日の間に、あなたがサウンドデコーダを壊したり、デコーダが動作しない場合は、Soundtraxxは、それを無料で修理もしくは交換します。

とあります。

通常、自分の不注意で壊したものは、修理代は自己負担という頭があったものですから、この下線部を引いたところを何度も読み返し、「主語がYouになっているということは、自分の不注意で壊した場合も含むんだよな」と自分を納得させ、指示されたとおり送り返すこととしました。

※もちろん、不注意で壊したというというのは、常識的な範囲で取り扱っていたときのことであり、上記サイトには、デコーダーを包んでいる熱収縮チューブを取り外したり、基盤に穴を開けたり加工をしたり、という場合は含まれないとあります。

 

SPのマウンテンMT-4のレストア (10) – 完成した模型の写真 –

この記事は、Mark Schuzter氏Restoring Southern Pacific MT-4の10ページめのFinished model photosを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2004年4月19日に作成されました。


さあ、これで完成した模型の写真を載せることができる。
(クリックで拡大します)

そして、機関士側から機関車を写した写真である。
(クリックで拡大します)



さて、これでこの話は終わりである。この機関車は完璧な状態となり、次の27年の仕事の準備ができた。


SPのマウンテンMT-4のレストア (9) – 再組み立てとウェザリング-

この記事は、Mark Schuzter氏Restoring Southern Pacific MT-4の9ページめの、ReassemblyWeatheringとを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2004年4月19日に作成されました。


再組み立て

すべてのものが乾いてから、マイクロマスクを剥がし、様々な形をした塗装用の支持具から取り外した。それからすべてのものを元通りに組み立てた。軽くウェザリングするつもりなので、この時点では、どこにも注油をしていない。

ここまでのところ、煙室の扉については、チャンスがなかったので、まだ塗っていない。大きな前面の開口部を隠すために、機関車に取り付けてみた。

以下は、ウェザリングを施す前の、組み立ての終わった機関車の写真である。

そして、これは修理を行ったスカイラインケーシングの最終的な状態の写真である。


ウェザリング

私は、デイライトのペイントスキームを施された機関車の晩年によくあったように、軽くウェザリングを施すこととした。機関車にウェザリングを施すに当たって、いくつかの異なった手法を使った。まず、線路から巻き上げられた土ぼこりを表現するために、フレームの下方と車輪とにフロックィルを吹き付けた。一様な効果が得られるように、動輪が回転している状態で吹き付けを行った。

約5倍に希釈したポリスケール(Polly Scale)のオイリーブラック(oily black)で、ロッドやバルブギアを軽くウォッシュした。塗料は非常に薄いので、望むような効果を得るには何回かの繰り返しが必要である。私の望んだ効果を得るまで、何回もウォッシュを繰り返した。

この他のウェザリングについては、Bardgon Enterpriseの製造した各種のウェザリングパウダーを使用した。全体の効果を簡単に調整できるので、これは良い製品である。パウダーを使う鍵は、絶えず垂直方向に塗布することである。これは、ボイラーから筋が垂れているのを表現する効果がある。

最後に、バルブギアとロッドに油を塗布した。少し走らせた後では、油がこれらのパーツの上に広がり、非常に実感的な視覚効果を与える。


SPのマウンテンMT-4のレストア (8) – 線路上での試験とフレームの塗装 –

この記事は、Mark Schuzter氏Restoring Southern Pacific MT-4の8ページめのTrack Testingと、Painting the Frameとを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2004年4月19日に作成されました。


線路上での試験
新しい駆動系とモーターとを、ボイラーを載せていない状態で、短い試験用線路でテストしていたが、すべてものを組み立て直して、機関車をレイアウト上でテストする時となった。過去に苦い経験をしたこともあり、すべての機械的な問題を解決するのは、フレームと車輪とを塗装する前に行うこととしている。調整の最中に、きれいな塗装面を傷つけてしまうのは、いとも簡単なことである。

さて、すべての部品を組み立てた後で、機関車をレイアウト上で何周か走らせた。機関車は良く走り、半径24インチ(610ミリ)のカーブの通過も全く問題がない。新しい駆動系のパーツは静かであり、モーターやギアボックスよりも、レールと車輪とのノイズのほうがうるさいくらいである。機関車は、前進、後進とも、機械的にひっかかりそうな兆しを示すことなく、そろそろと進むことができる。

以下は、線路上の機関車の写真である。


フレームを塗装する

私は、主台枠を塗装するとき、すべての部品をばらばらにして、別々に吹き付け塗装するようにしている。そこで、すべての部品をばらばらにした後、残った油を完全に取り除くために、主台枠と車輪とラッカーシンナーに浸した。その後で、すべてものを洗剤と水とでよく洗い、完全に乾燥させた。

少し厚手の紙から、各々の車輪の持ち手を作った。これには2つの役割がある。まず車輪を保持するのが簡単となる。そして、車軸とベアリングのエリアに塗料がかからないように保護する役割を果たす。次にタイヤにマイクロマスクを塗布し、塗料がかからないようにした。クロスヘッドガイドやベアリングシートを含む他のエリアもマスキングした。すべてのマスキングが終わった後で、エアブラシで部品を塗装した。

以下は、焼付けの準備が出来た部品である。


SPのマウンテンMT-4のレストア (7) – テンダーの塗装 –

この記事は、Mark Schuzter氏Restoring Southern Pacific MT-4の7ページめのPainting the Tenderを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2004年4月19日に作成されました。


テンダーを塗装する

テンダーの本体の塗装は、ボイラーと同じ方法で進めた。テンダー本体の大部分は、薄いデイライト色で塗られているので、まず最初にフロックィルのプライマーグレー(Primer Grey)を塗った。次に,中央部のデイライト・オレンジ(Daylight Orange)の帯を吹いた。その後でオレンジの帯をマスキングし、テンダーの上の部分、下の部分をデイライト・レッド(Daylight Red)で吹いた。次に黒を吹くことにしていたので、この時点では、赤のエリアの上下の境界について気にしていなかった。

最初の方の段階の写真である。

さて、この塗装は、ここから急に面倒になる。下側の赤と黒との境界は、機関士側では、底に沿ったパイピングの下に隠れるのに対し、機関助手側では、底に沿った太いパイピングのすぐ上に来なければならない。そして、この境界は、両側のツールボックスの裏を走り、なおかつツールボックスは黒く塗ならなければならない。パイピングの支持金具を避けるために、マスキングテープに切り込みを入れる必要があった。言うまでもなく、これはマスキングに費やした多くの時間の始まりでしかなかった。

テンダーの下側前方の、カーブした黒と赤との境界線を塗装をするために、まず方眼紙にテンプレートを描いた。次にその方眼紙を切り抜き、テンダーに重ねた。何度も切りながら調整を繰り返し、このテンプレートが正しいカーブになったところで、透明のアセテートのシートにテープで止めた。次に、アセテートを、紙と同じ形になるようにカットした。これで、アセテート上に正しいカーブが得られたことになる。次に、アセテートの上にマスキングテープを貼り、カーブに沿って、かみそりの刃をつかって、マスキングテープをカットした。テンダーの反対側は、アセテートの裏側にマスキングテープを貼り付け、同じことを繰り返した。この方法はとてもうまくゆき、結果として、両側のカーブは全く同じとなった。同じ方法を使って、カーブした銀のストライプに必要となるマスキングテープを切り出した。

黒を塗った後の写真を数枚掲載する。

黒の塗装が終わった後で、下方の赤と黒の境界がもっと下側に近くなければならないということに気が付いた。そこで、再度面倒なマスキングを行い、境界があるべき場所に来るように、赤を吹いた。こうして、すべてのテンダーの色を塗ったところで、銀色の帯の塗装に注力することにした。

私は銀の帯を3段階に分けて塗った。まず、テンダーにマスキングを行い、赤とオレンジの境界部の2本のストライプを塗った。焼き付け作業を行ない、マスキングテープを取り除き、下側の直線部の帯となるべき部分が出るように、マスキングを行った。底に沿ったパイピングのおかげで、このマスキングが、最も大変な(そして時間のかかる)ものとなった。帯の直線を出すためにマスキングテープを使ったが、黒のままにしておかなければならない、ツールボックス、はしご、底に沿ったパイピングのマスキングには、マイクロマスクを塗布した。こうして、下方の帯を塗装した後、再度焼きつけを行い、テープを取り除いた。最後に、一番上の帯と、カーブした部分の帯が出るようにマスキングし、2本の帯を吹き付けた。最後の焼付けを行った後、模型を流し台に持って行き、マイクロマスクを丁寧に洗い落とした。

マイクロマスクでマスキングできなかったところや、黒がかかってしまったところがあったので、マスキングを行い、あちらこちらをタッチアップすべく塗料を吹いた。

機関車の場合と同じく、デカールを貼る下地として、テスターのグロスコートを軽く吹いた。機関車の番号とサザン・パシフィックのレタリングは、機関車の場合と同じく、マイクロスケールのデカールセットを利用した。テンダーのデータと、後方の照明のナンバーボードは、フットヒル・モデル・ワークス(現San Juanデカール)のものを使った。

以下、デカール貼り付けが終了し、完成したテンダーの本体である:

下側の赤と黒の境界が本来あるべき場所にあることに注目してほしい。この時点では、テンダーはまだつやのある状態である。

以下は組み立ての終わったテンダーの写真である。
(クリックで拡大)

ここまで来ると、あとは後方のライトにMVレンズをはめ込み、軽くウェザリングを施せばよいだけである。

ひとつ付け加えておくと、もとの車輪は、めっきがはげていたので、NWSLの洋白削り出し車輪で置き換えた。ウェザリングを施したバージョンの車輪を使い、洋白を露出させるべく、軽くサンドブラストをかけた。これによって、車輪の踏面が、レールとの接触で磨耗した適度の輝きが出るようになった。


SPのマウンテンMT-4のレストア (6) – ボイラーの塗装 –

この記事は、Mark Schuzter氏Restoring Southern Pacific MT-4の6ページめのPainting the Boilerを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2004年4月19日に作成されました。


ボイラーを塗装する
マウンテンクラスの機関車のデイライト塗装は、GSクラスの機関車に比べると、部分的なものであった。機関車は、キャブのみがデイライト塗装となっていた。テンダーは、実物の写真に見えるように、全体がデイライト塗装であった。

私が塗装をするときは、薄い色を吹かない限り、普通はプライマーコートを吹くことはしない。この機関車に関しては、キャブのエリアと、凹みを修正したあたりにプライマーコートを吹いた。プライマーを吹くことで、凹みが適切に修正されたということを確かめることができた。次に、まず一番薄い色(フロックィルのデイライト・オレンジ)から始め、吹き付けを行っていった。各々の色を塗る度に、warm(華氏125度=摂氏51.7度)に設定したオーブンで、最低12時間、焼付けをするようにした。次に、私はデイライトの赤の帯を塗装し、次に煙室と火室をテスターの「焼けた金属色(Burnt Metal)」で塗装した。各々の色を塗った後で、マスキングテープと、マイクロマスクを組み合わせて、塗装が終わった部分をマスキングした。黒については、フロックィルのウェザードブラックを2に対し、エンジンブラックを1混ぜたものを使った。最後のステップは、キャブの銀の帯を塗ることであった。私は、マスキングテープを使って、帯を塗りたいところ以外のキャブの全体をマスクした。それから、テープでマスキングされていないところに、フロックィルのオールドシルバー(Old Silver)を薄くスプレーした。

マスキングテープに関して、言っておきたいことがある。この機関車を塗装するまでは、パクトラのマスキングテープを使っていたのだが、焼付けた時にテープが残ったり、あるいはテープを数日貼ったままにしておくと、模型に粘着物がくっつくという問題を経験していた。今回の塗装では、タミヤの模型用のマスキングテープを使ったが、この製品には非常に満足している。ペイントの端がきれいなだけでなく、このテープは焼付けしても問題がないという利点もある。いくつかの部分で、2色もしくは3色塗り重ねて焼付けを行った後でも、当然のように剥がすことができる。まて、私はテープを1週間近く貼りつけたままにしていたが、何も問題なかった。今回のような塗装を行おうとしている方には、このテープは広くお勧めできる。

以下は、塗装のいろいろな段階のボイラーを示すものである。


すべての色の塗装が完了した後で、デカール貼りの準備のために、テスターのグロスコートを軽く塗った。私は3つの異なるデカールセットをボイラーに使った。機関車の番号は、マイクロスケールの87-33のSPデイライトセットを使った。キャブの標記と列車番号とは、フットヒル・モデル・ワークス(現在はSan Juanデカール)のSP蒸気用デカールセットを利用した。キャブの標記に使ったのはアルミ色のセットであり、列車番号にはレタリンググレーのセットを使った。デカールを保護するため、そして塗装のつやを抑えるため、テスターのダルコートを塗り重ねて完了とした。

そして、完成したボイラーの写真である。(クリックすれば拡大する)