月別アーカイブ: 2010年5月

ヘンリー・フォード博物館(Henry Ford Museum)を訪問 (3)

前回ご紹介したC&OのH-8の迫力に圧倒され、もうこれで十分に堪能したと思って、あまり期待もせずに周りの展示物を見ているうちに、一台の機関車が目にとまりました。Bessemer and Lake Erie Railroadのコンソリデーション(2-8-0)である、154号機です。これ以上は載せられないのではないか、というくらいに太いボイラーが印象的でした。

この鉄道、名前は知っていましたが、実物を見るのは初めてです。上記Wikipediaの記述にあるとおり、鉄鉱石や石炭など、重量物を運んでいた鉄道ということで、高出力を追求した機関車なのでしょう。実物に関する資料が手持ちにはないのですが、steamlocomotive.comの記述によれば、1909年にBaldwinが製造し、蒸気の終焉まで活躍した、とあります。

それにしても、よく知られている機関車以外にも、魅力的な機関車が色々なところで活躍していたのだ、ということを感じました。

これ以上後ろに引けないので、こういう角度で撮るのが精一杯です。写真では、ボイラーの太さがもう一歩伝わってこないような気がしますが、車輪の高さとボイラーの高さとのバランスをよく見ていただけますでしょうか。

フロントを狙ってみました。

反対側です。照明条件が良くなく、暗い写真を処理してようやくここまで見えるようにしました。

キャブを写してみました。

ヘンリー・フォード博物館(Henry Ford Museum)を訪問 (2)

ヘンリー・フォード博物館の鉄道関係の収蔵品の「目玉」というべきは、C&OのH-8(Allegheny: 2-6-6-6)です。アメリカ型の蒸気に詳しい方には説明するまでもないのですが、チェサピーク・アンド・オハイオ鉄道(C&O)が1941年から1948年にかけて、ライマ社で60両を建造した、アメリカでも最大級の機関車です。(このほか、バージニアン(Virginian)鉄道が、ほぼ同型機を1945年に8両を発注)。

このAlleghenyについては、詳しく紹介すると長くなり、私も簡潔に紹介するだけの知識を持ち合わせていません。ライマ社のSuper Powerコンセプトの集大成と言ってもよい機関車であり、巨大な火室を支えるために、他に例を見ない6輪(3軸)の従台車を装備しているのが特徴である、ということだけにとどめ、詳しくは本や雑誌の紹介に譲りたいと思います。

この1601号機は、廃車後ヘンリーフォード博物館まで自走して、そのままこの状態で補完されたということなので、状態は非常に良好です。相変わらずの写真ですが、お楽しみ頂ければ、と思います。

まずは、真正面から見た画像です。

少し、斜め前に回ってみました。

前方の動輪です。

これが6輪従台車です。

キャブの中に入ってみました。機関士の席からみたスロットルです。この巨大かつ高性能の機関車を運転するというのは、どのような気分だったのでしょうか。

機関士の席から前方はこのように見えます。こんな巨大な機関車で視界がこれだけしかない中での運転は神経を使ったに違いありません。

テンダーのストーカーを撮ってみました。

キャブの入り口から出たところの台から機関車の前方を撮ってみました。やはり長い機関車です。床に小さな箱が置いてあるのがわかるでしょうか。この箱の中には、Fine Art Modelsが作成した1/32のAlleghenyの模型が置かれています。実物がどれくらい巨大か、ということを理解するヒントになるでしょうか。

後ろを振り向いてテンダーを撮ってみました。これも巨大ですね。

Alleghenyのテンダーの後ろ側は4軸のBuckeye台車となっていますので、これを撮ってみました。私のコンパクトカメラでは、全部が入りきりませんでした。

ヘンリー・フォード博物館(Henry Ford Museum)を訪問 (1)

Chicago Museum of Science and Industry訪問後、450キロほど東、デトロイトの近くのDearbornという街に移動しました。聞き慣れない名前かもしれませんが、ここはビッグスリーの一角のフォード社のお膝元で、その街中にヘンリー・フォード博物館があります。名前だけを聞くと、「フォード社の歴史」を記録する博物館という印象があり、実際そのような側面もありますが、この博物館は独立した財団法人として運営されています。私自身が見学して感じたのは、この博物館は「車を一つの軸として、広くアメリカの歴史を記録する」ことを目的としているということです。

「車でアメリカの歴史を語る」という観点で、最も象徴的なコレクションは歴代の大統領専用車でしょう。以下の写真は、1963年11月23日、ケネディ大統領がダラスで暗殺された時に乗車していた、まさにその車です。この展示の前に立った瞬間、見覚えのある、「その瞬間」のビデオ画像が今までにない現実感を伴って頭の中に蘇り、まるで自分がその瞬間に居合わせたような錯覚を覚えました。良い展示物は、歴史の雄弁な証言者になる、ということでしょうか。

この他印象に残ったのは、車にまつわる「小道具」とでも言うべきものです。アメリカでは、単調な道を延々と長時間ドライブすることが多々あり、見知らぬ途中の街で、給油をしたり、簡単な食事や宿泊をすることがつきものです。これらはドライブの一部と言ってもよいと思うのですが、この博物館には、旧式のガソリンの給油ポンプだとか、マクドナルドのネオンサインとか、モーテルの部屋を再現したもの、などがさりげなく置かれています。単に車を紹介するだけでなく、人々の暮らしを記録しようとしているのだと感じました。

一角には、古いホンダ・アコードが展示されていました。なぜ?と思ったのですが、「1982年に日本の自動車会社が米国で最初に現地生産した自動車である」、という解説を読み、納得しました。当時は日米自動車摩擦などと言われていた難しい時代だったはずですが、その中でもこの事実に歴史的意義を認めた人がいたから、収蔵されたということでしょう。

この博物館に行く前に、dda40xさんが「博物館としてあるべき姿を具現している」と言われていたのですが、なるほど、コレクションのポリシーがしっかりしていると感じました。この他、ここではとても紹介しきれませんが、農機具だとか、工業用のスチームエンジンとか、飛行機だとか、色々なものが所蔵されています。これらの収蔵品が良い状態で保存されているのも印象的でした。例えばスチームエンジンなどは「鋳物の芸術」とでも呼ぶようなものが多くあり、実際に稼働する状態にあるものもあります。

さて、前置きが長くなりました。数は限られていますが、鉄道関係で見逃せないものもあります。その話は次回に。

[2010年6月27日追記]
この博物館のマップを以下に掲載しました。クリックすると拡大します(大きなファイルなので、少し時間がかかると思います)。