月別アーカイブ: 2006年4月

クラブの紹介 – Silicon Valley Lines (その5-車検)

さて、前回は運転会の話をしました。運転会を行うためには、当然車両が必要となりますが、各自が勝手に持ち込んで運転するというわけには行きません。必ず車検(Inspection)を通さなくてはなりません。

メンバーが自分の車両を走らせたいと思う時は、まず必要な調整をして、申請用紙に記入して、車検を依頼します。担当のメンバーが車検を行い、パスすると、運転可能な車両としてデータベースに登録されます。このデータベースへの登録をもって、運転に参加できるようになります。

さて、一回車検に通ればそれで終わりかと言うと、決してそういうわけではありません。経年変化など、どうしても調整が必要になる場合が出てきます。運転に支障をきたすようなトラブルが発生した場合、容赦なくレイアウトから除かれ、Bad Order Formと呼ばれる書類が添付され、持ち主に調整の依頼が行きます。当然、調整が終わり、再度車検を通るまでは、走行を禁止されます。

そのほか、一両一両は車検をパスしても、編成を組んでみると具合が悪い、ということもよくあります。たとえば、Walthersの客車ですと、カプラー間隔が狭く、幌が干渉してカーブで脱線するのには手を焼きました。とにかく、走行第一の立場に立って、いろいろなところを調整しないと、運転会でトラブル続出ということになります。

ご参考までに、車検の項目をご紹介します。

機関車の車検
1) 車輪のフランジの高さ、バックゲージの正確さ — これは、市販品のゲージをあてて、チェックを行います。
2)カプラーの高さ — これは、クラブの特定のカプラーゲージを基準に高さを検査されます。高さの違いがごくわずかに見えても、運転には支障をきたすことがよくあります。これは特に特に念入りにチェックされます。カプラーそのものは、KadeeもしくはMcHenryが推奨されています。
3) DCCアドレス設定 — 当クラブでは、DCCのアドレスとして、4桁アドレスを利用します。原則として、機関車の番号をそのままDCCのアドレスにしますので、機関車を購入する前に、メンバーは他の機関車と番号が衝突しないよう、機関車の番号のデータベースを用意しています。実は、このデータベースの管理は私が行っています。
4) CV値の設定 — 我々のクラブでは、DCでの運転は行っていません。そのため、念のためCV29のBit2を0にします。これは、DCCの最初のパケットが拾えなかったとき、DCと思い込んで全速力で走り出すことがあるから、ということでした。

車両(貨車、客車) の検査
1) 車輪のフランジの高さ、バックゲージの正確さ – 機関車と同じで、販品のゲージをあてて、チェックを行います。それから、当クラブは、車輪はすべて金属製であることが必須です。プラの車輪の置き換えに関しては特に推奨があるわけではありませんが、入手しやすさ、転がり抵抗の少なさから、Intermountainの車輪が人気があります。
2) カプラー — これは機関車と一緒で、高さがシビアにチェックされます。
3) 重量 — 原則としてNMRAの標準からプラスマイナス10%の重量に収まっていることが求められますが、重い分には文句は言われません。皆さん、ミクロウェイトを積んだり、いろいろと工夫されているようです。
4) 転がりテスト — 2%の坂に向かって車両を動かし、坂をスムーズに上り下りするかどうかをチェックします。

クラブの紹介 – Silicon Valley Lines (その4-運転会)

さて、毎月の最終金曜日は、運転会となっています。前にも書いたとおり、レイアウト全体としては未完成なのですが、メインラインと、ヤードの大部分は線路の敷設は終わっていますので、すでに相当に高度な運転を楽しむことができます。

逆に、運転会にあわせ、皆がレイアウトの建設を進めるので(たとえば、レールの増設や、自動ポイント切り替え器の追加、ポイント切り替えパネルの配線、など)、結果としてレイアウト建設を促進するという効果もあります。

一回の運転会では、20くらいの数の列車を裁きます。列車の編成は、担当のメンバーがパソコンのプログラムで生成し、その出力を印刷したものが、運行指示として手渡されます。この運行指示には、どこからどこへ行くか、途中どこで入れ替え作業を行うか、などが詳細に書き込まれています。

旅客列車など、始点から終点まで単純に動かすだけの場合もありますが、複雑な貨物列車では、途中の側線で何回も入れ替え作業を行なわなければなりません。総走行距離も150メートル以上となるものもありますので、入れ替え作業や単線部分での待ち合わせなどを含めると運行に30分くらいかかる場合も多々あります。

こういう状況ですから、一人で勝手に動かすということはありえず、メンバーの一人がDispatcherと呼ばれる役にまわり、列車の位置を把握し、指示を出す係りとなります。運転するメンバーはDispatcherと無線で交信しながら、自分がどこにいるか、自分がどこまで進んでいってよいか、などを確認して運転を進めなければなりません。

タイミングによっては、複数の列車からDispatcherにいっせいに交信が入りますので、適切なタイミングに、簡潔にかつ確実にコミュニケーションすることが求められます。ここのコミュニケーションがうまく行かないと、他の列車を運行している他のメンバーに多大の迷惑をかけることになりますので、かなりの緊張を強いられます。

で、ここで困ったのが「英語」です。何しろ、普段使っているのとは異なる英語が早口で飛び交いますので、最初は何が何だかよくわかりませんでした。まあ、しばらく聞いていると、一種の定型化されたパターンに従っているということがわかり、誰にどんな指示が行っているか、というのは問題なくわかるようになりました。それでも、無線の音の品質の関係などでわからないこともあります。その場合は恥ずかしがらず確認をするようにしています。

一方で、喋るほうは今一歩です。まぁ、自分の場所とか、自分がどうしたいかとか、私なりの(平易な)英語で伝えていて、問題なく通じてはいるようです。そういう意味ではそんなに困ることはありませんが、皆が使っているような「かっこいい」英語での交信ができないので、もどかしく感じています。もっとも、使い慣れない英語を使って誤解を招くほうが大きな問題になりますので、割り切ってあきらめていますが。

クラブの紹介 – Silicon Valley Lines (その3-活動)

クラブの活動は、毎週金曜日です。だいたい夜7時ごろから集まり始め、12時ごろ散会します。散会した後、近くのDenny’sに行き、夜中の2時ごろまで皆でわいわいとおしゃべりしているメンバーもたくさんいます。私もよく付き合っていますが、とにかく彼らのエネルギーに圧倒されることが多いです(よく喋る、よく食べる)。

前回の記事にも一部書きましたが、毎月第一金曜日はクラブの運営に関する会議、最終金曜日は運転会となっています。その他は、レイアウトの建設に携わったり、レイアウトで走らせる車両の調整など、各自のペースに合わせて自由に活動しています。

人によっては、走らせることだけに徹していますので、会議と運転会とだけに顔を出す、というメンバーもいます。このあたりは、メンバー各々の自主性、方向性が尊重されていますので、メンバーとして最低限の義務をしっかり果たしていれば、出てこないといってとやかく言われることは全くありません。

さてこのメンバーの出欠に絡めて、Silicon Valley らしいことをひとつご紹介します。いろいろな個人的な事情で、Leave Of Absense(休会というのが近いでしょうか?)が認められています。で、あるメンバーが休会に入ったのですが、その理由が「レイオフされたから」というのを聞いて、びっくりしました。でも、こちらの厳しい雇用関係を理解してくると、なるほどという感がありますが。その一方で、会社を起業して上場した株の売却益かなにかで、もう一生何も働かなくてもよいくらいの財産を持っている(らしい)メンバーもいます。

話の脈絡がなくなってきましたが、そんなこんなで、いろいろな人がいます。皆に共通しているのは、「Model Railroadingが大好き」という強い情熱を持っているということです。

クラブの紹介 – Silicon Valley Lines (その2-クラブの運営)

さて、こちらのクラブに属して驚いたのは、その運営が規則に基づいて徹底的に民主的に行われていることです。考えてみれば当たり前の話かもしれませんが。それでも、10ページ以上もある規約がまとめられており、その冒頭にはしっかりと、「このクラブは、カリフォルニアの法律に基づいた非営利団体である」というようなことが明記されているのを見たときは、ちょっとびっくりでした。もっとも、会費の徴収や運営資金の管理のための銀行口座を開設していますし、レイアウトや保管してある車両に保険も掛けていますので、そのためにはこういった規約がしっかり定められた組織であることが必要なのかもしれませんが。

この規約の中には、メンバーになるための手続き、役員の定義や、会議の運営、などが事細かに記載されています。

メンバーになるためには、まず3ヶ月の「お試し期間」を経て、その後、会議でメンバーの2/3以上の賛成を経て、ようやく入会、というステップを踏むことになります。クラブは毎週金曜夜に集まるのですが、お試し期間に半分以上は出席することが求められます。お試し期間というと、入会する側にとっての「お試し」であるように聞こえますが、同時にクラブメンバーからの「こいつはうちのクラブに入れる価値があるか」という「お試し」でもあるのだと思いました。

役員は1年の任期制で、以下の5つの役職が定義されています:
1) President(会長)
2) Vice President(副会長 )
3) Superintendent (監督) あんまりいい訳ではないですが、実態としては、レイアウトの建設の進行管理や、建設済みの場所であっても、不具合のチェックなどを行っています。
4) Secretary(書記)
5) Treasurer(会計)
これらの役職は、上記の規約により、選挙で選ばれます。もっとも現実には、持ち回りで信任投票というのが実態ですが。

会議は毎月1回開催されるのですが、これがまたなかなかすごくて、最初は圧倒されました。私は仕事で「国際規格標準化会議」みたいなものに出ることがあるのですが、運営の方法が全くそれと同じなのです。まず議題は「I move to … (…の動議を提出します)」と始まって、他のメンバーから「Second! (賛成)」の声があってはじめて議論が始まります。

趣味のこととはいえ(趣味だからこそ?)、議論は白熱することも多く、意見のある人はしっかり自分の意見を主張して、議論が尽きてコンセンサスが得らるまでは採決には至りません。正直、何が議論されているかはわかりますが、この議論そのものについてゆくのはつらいです。まあ、それでも議題は事前にメーリングリストで議論されることも多いですし、議事録もしっかり出されますので、そういった機会でフォローすることでなんとか対応しています。

クラブの紹介 – Silicon Valley Lines

今日は、私の属しているクラブ、Silicon Valley Linesを紹介します。

このクラブは、1979年に設立され、現在の2代目の固定レイアウトを建設中です。大きさは7m×22mの総2層(一部3層)、線路の敷設は70%の完成度、シーナリーを含めた全体の完成度はとしては40%くらいでしょうか。この2代目レイアウトの建設は、1999年から始まったこともあり、制御は全てDCCで行っています。

Silicon Valleyという名前を冠しているとおり、こちらの代表的なハイテクIT企業に勤めているメンバーが多いのも特徴かと思います。たとえば、皆さんよくご存知のりんごのマークの会社とか。その他、DCCのエキスパートもいます。いろいろ聞けばたちどころに答えが返ってくるのですが、こちらの知識が全く追いついていないので、何をどう聞けばいいのかわからない状態という、非常にもったいない状態にあります。

当然日本人は私だけですが、仕事で日本に行ったことがあるというメンバーも多く、快くメンバーとして受け入れていただきました。ただ、入会するにあたっては、現在のメンバーの2/3以上の賛成が必要とかあり、それなりの条件をクリアしないといけませんが。あと、英語での議論はしんどいです。。。

どのように運営されているかとか、レイアウトの詳細とかは、追ってご紹介したいと思います。

BLI Insider -Broadway LimitedのNewsletterより

(本記事は、ネタばれ注意)

Broadway Limited (BLI)から、”The Birth of Broadway Limited’s Royal Stealth System”と題したNewsletterが届きました。BLIは、ここのところ、Stealth Seriesと名付けたサウンドデコーダ無しの製品を必ずリリースしていますので、その話だと思って読み進んでゆくと。。。

「競争を勝ち抜くために、今までにないきれいな音を出して、今より75ドルは安いものを出す、という企画が出された」
(え、なんでStealthの話でこういう始まりなの?)

「考えに考えた末、Intelのプロセッサを積み、Boseのスピーカーを積むことにした」
(あれあれ、なんか変だよ。)

そうです、これはApril FoolのNews Letterでした。オチまで書くのはどうかと思いますし、ニュアンスをうまく訳すのは私の手に余るので、ここまでにしておきますが、なかなかやるなぁ、という感じです。

閑話休題、BroadwayがDCC/サウンドがパッケージされた機関車を次々とリリースし、誰でも手軽に楽しめるようにしたことに刺激され、DCC/サウンドが、業界の一種の標準的な仕様になりつつあります。

これに同期して、サウンドデコーダーも選択肢が増え、値段もこなれてきました。Stealth Seriesが出たときは、単に音の要らない人向けに安いバージョンを出したのかな、と思っていましたが、こういう状況を踏まえると、自分の好きなサウンドデコーダーを積みたいという要望に応えるべく、企画されたと考えるのもアリかもしれません。

SoundTraxxのTsunamiは評判が良いようです。クラブの友人が、これを搭載した機関車を持ってきていましたが、他のデコーダーに比べ、明らかに音の抜けがいいようです(スピーカーの性能や取り付け方法に由る場合も多いので、断定はできませんが)。BLI等に搭載されているQSIデコーダーも、内臓しているチップのアップグレードが開始されるとのこと。

見方によっては、BLIがDCC/Soundを広く普及させた第一期が終わって、これから、より良いサウンドを求める第二期が始まったと考えることもできると思います。

ご参考までに、ご存知の方が多いと思いますが、DCC/サウンド関係の情報は、Tony’s Train Exchangeが充実しており、デコーダーの比較などは、ここにまとまっています。そのほか、このサイトには、ユーザーの目から見たデコーダーの比較やら、実際の搭載例がまとめられています。

W&R Northern Pacific L Series 0-6-0

先週末、行きつけの模型屋を覗いたところ、なにやら茶色の箱に金色のラベルの高そうな模型を2台もご購入の御仁が。よく見ると、W&Rの新製品のNortehrn Pacific 0-6-0 Switcher L-7/L-9でした。ちらっと伝票が見えましたが、軽く2000ドルを超えていました(げっ)。Silicon Valley近辺は、消費税が8.25%ですので、それだけでも馬鹿になりません。うらやましい限りです。

それはさておき、この方と話をしていると、お店のOwnerが、バージョン違いだけれど、もう一台あるよ、とわざわざショーケースから出して見せてくださいました。

MakerはBoolim。水平、垂直がしっかり出て、適度に抑えの効いた艶の塗装と、相変わらずの手馴れた出来上がりです。走行性能も抜群です。スロー走行でもギクシャクすることは全くありませんし、モーター、ギヤのノイズは皆無です。

それに加えて、いつものW&Rの凝りよう。圧巻はValve Gear。何という形式のValve Gearか失念してしまいましたが、1ミリ角もないような部品がとバーの上を左右に行き来します。スローですとその動きもゆっくりですので、実はOwnerに言われるまで全く気がつきませんでした。工作とか、調整とか、物凄く大変だったと思いますし、よく量産品でここまで仕込んだなぁと思います。

今まで、すばらしい模型を見て、感動を覚えることが何度もありましたが、今回はそれを通り越して、なんだか見てはいけないものを見てしまったような、恐怖に近い感覚さえ覚えました。