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Silicon Valley Linesのビデオ

私が以前メンバーだった、Silicon Valley LinesのビデオがYoutubeにアップロードされましたので、紹介しておきます。TSG Multimedaという鉄道模型関係のビデオ制作会社の専門の人が撮影したものだけに、クオリティが高く、単に見ているだけでも楽しめます。

仔細に見ると、アメリカのレイアウトの楽しみ方を一部を理解していただけるのではないかと思います。字幕ボタンを押していただければ、ある程度英語のわかる方であれば中身はフォローできるかと思います。思ったより正確に認識しています。

dda40xさんに、Switchingの遊び方について書くように言われていてまだ果たせていませんが、このビデオの4:30秒くらいに、Switchingの指示を記した書類であるSwitch Listが出てきます。この中には、どこでどの貨車を拾って/置いてゆくか、が書かれており、列車の運行を受け持つ各人は、この指示に従って途中途中のIndustryでSwitchingを行いながら、列車を運行してゆきます。残念ながら、Switchingそのものの様子についてはこのビデオには含まれていません。

Dennis氏のところで行ったSwitchingは、Waybill and Car Cardという別の方法です。どう説明したらよいか、悩んでいるところですが、上記のSwitch Listの方式とまとめてなるべくわかりやすくまとめてご紹介したいと思います。

Silicon Valley Linesは、一部を除いて単線ですので、側線を使ったすれ違いを行いながら、列車を運転してゆきます。この様子がビデオの10:00前後で説明されています。

要は「役割分担しながら実物と同様に鉄道を運行する」というのがアメリカの多くのレイアウトの楽しみ方だと思っているのですが、私の知る限り、このような遊び方は、日本の趣味誌ではあまり紹介されていないのではないかと思います。私の力ではその楽しみ方のごく一部しかお伝えできないとは思いますが、追々紹介してみきたいと思います。

 

米国での貨車の重さの設定の一例 ~RP20.1のとらえ方~

いつもお世話になっているワークスKさんのBlogに、モデルが脱線し易い4つの理由という記事が投稿されています。経験豊富かつ博学のワークスKさんらしく、さまざまな考察が加えられているのですが、私にはいささか手に余るようです。議論のポイントは貨車の重さと理解したので、長大編成を走らせる米国のレイアウト(HO)で貨車の重さに関し、どういうルールを採用しているか、というのを数人の知人に聞いてみました。

まず、私がメンバーだったSilicon Valley Linesですが、NMRA RP20.1(以下RPと略)の値の10%の範囲とすること、というルールとなっていました。ただし、これより重い分には車検は通っていましたし、むしろ「重いほうが推奨される」という雰囲気でした。これはずいぶん前に車検の話を書いたときに書きました。

別の知人が所有している個人所有のレイアウトの大型レイアウトでは、RPに従っているという、という答えが返ってきました。

もう一つ、近々紹介を予定しているCal Centralというクラブの主要メンバーに聞いたところ、厳密なルールは決めていないが、多くのメンバーはこうしている、という長文の説明が返ってきました。ざっくりポイントだけ紹介すると次のようになります。

・経験的にはNMRA RP20.1の値では若干軽いと思う。RP+1oz(1ozは約28.3グラム)以上とするようにしている。このルールにすることで脱線の可能性を大きく減らすことができる。40ftの貨車の場合だと、4.75oz(約135グラム)以上としている。話を単純にするために小数点以下を切り上げてしまうことも多い。40ftの貨車の場合だと、5oz(約142グラム)。

サンフランシスコベイエリア近辺の著名な大型レイアウト(床面積で100平方メートル前後、最大のもので約250平方メートル)でも同様(RP+1oz)のルールを採用している。これらのレイアウトにはアップダウンやカーブがあり、長編成を走らせるとカーブの急なところで軽い車両が脱線することが多い。ここで言っている長編成とは、15両~20両以上のものを指す。レイアウトによっては、40両以上とか100両以上の場合もある。

・あるレイアウトでは、貨車の重さがRP+1ozとなるように整備し、保線を完璧に行い、カプラーの高さを厳密に揃える、などの調整を行うことで、25両以上の貨車をフルスロットルで推進運転して脱線しなかったという実績がある。

・重さのばらつきにも注意が必要。編成中の相対的に軽い車両のほうが脱線しやすい。ただ、経験的には、上記のRP+1ozを守っておけば、2oz(約57g)程度のばらつきは許容できる。

「そもそもみんなRP20.1ってどうとらえているの」という質問を投げかけてみたところ、「RP25のような寸法に関する規格はちゃんと守るけれど、RP20.1のような規格はあくまで最初の拠り所と考えていて、自分たちが最善と考える数値を実験的に導き出している」という答えが返ってきました。

十分なサンプル数とは言えず、また、レイアウトの設計、走らせる列車の構成、走らせ方、などにも大きく左右されると思いますので、どれだけ有益な情報になるかはわかりませんが、少しでもご参考になればと思い紹介してみました。

最後に、Silicon Valley Linesでの長大編成の映像を紹介します。これは純粋にテスト目的で編成したもので、通常の運転会ではこの1/2~1/3の長さとなりますが、長大編成の雰囲気を味わっていただくにはよいかと思います。先頭5両で引っ張っていますが、補機を中間や最後に入れる構成とすると、一段と運転に注意が必要になると思います。

Robert’s Rules Of Order (2)

最新版のRobert’s Rules of Order Newly Revised(以下RONR)は、全部で200ページもあり、私自身もごくごく一部しか理解していませんので、何か簡便にまとまったものがないかと思って探していたところ、「米語による公式会議運営手順」と題して、Kaz Utsumi氏が簡単にまとめられた資料を見つけました。参照、引用をお願いしたところ、ご快諾いただきましたので、「第3章 動議提出、ならびに討議の仕方」から抜粋し、紹介させていただきます。なお、下線、およびカッコ内に補足とある部分は、私が加えたものです。

—- ここより引用
(A) 動議(Motion) 提出
A会員が動議を提出する手順は立ち上がるか、又は少人数の場合、まず右手を挙げて、Mr. Chairman/Madam Chairと言い、議長に発言許可を求めます。議長:The Chair recognizes Mr. A またはA会員を指差して指名します。それからA会員は立ち上がり: Mr. Chairman/Madam Chair, I move that…… と動議を提出します。
(一部略)
そして他のB会員がSecond 又はI second the motionと言えば、議長はA会員の動議を議題として討議しなければなりません。 ここでB会員は必ずしもA会員の動議に賛成する訳ではありません、ただA会員の動議は討議するに値すると考えただけでも良く、その後の採決に不賛成投票をしても良いのです。 あるいは誰もSecondと言わなければ、議長はIs there a second to this motion? と尋ね、なおSecondがなければ、A会員の動議は議題とされません。 これは少数意見を尊重するために考え出された手法ですが、ただ一人だけの意見だと分かると、それは討議は時間の浪費ですから、動議とは成りません。
(一部略)

(B) 討議 (Discussion) 
議長はSecondと聞くと、It has been moved and seconded that ……. と動議を要約し周知させ We are now ready for discussion on the motion. 又はIs there any discussion? 討議が始まります。
(一部略)
するとC会員がMr. Chairman と挙手し、議長に発言許可を求め、The Chair recognizes Mr. C. またはC会員を指差します。C会員は賛成なり不賛成の意見を述べます。 議長は次にC会員の対立意見を他の会員に求めます。 他の会員が発言を求めている間、議長はC会員に再度発言許可を与えません(補足: 次にC会員が発言できるのは、他の発言希望者が意見を述べた後)。複数の人が同時に反対や賛成意見を述べたり、一方的な論議にならないよう、議長は賛否両論バランス良く、公平に議論を進める義務があります。

(C) 修正動議 (Amend the Motion)
討議していると、この動議は修正される必要があると考えたE会員は修正動議(Amend the Motion)の動議を提出できます。例えばA会員の動議(Main Motion)はAd Hoc Committee を作り、詳細を検討するとします。 E会員のAmendmentは誰がどのようにしてAd Hoc Committeeを作るかとします。 議論を進めていくと、F会員は何日までに作ると更なる修正動議を出します。 そして後から出てきた修正動議から順に採決を取ります(補足:この場合、F会員の修正動議、E会員の修正動議、A会員の本動議の順序で採決。Last-In, First-Outと言う)。 このような修正動議は二度までと限定されています。
正式には、三度目の修正動議には議長は Our procedure allows up to two amendments, thus your motion is out of order. と言って、三度目の修正案を拒否します。これは動議があまり複雑にならぬようとの配慮です。
—- ここまで引用

少し細かいところまで引用しましたが、有意義な議論を公平にかつスムーズに行うための工夫を感じ取ってもらえるのではないか、と思います。

このように見てくると、たかが趣味のクラブとはいえ、広く認められた議事規則を採用して運営しているということ、そして、クラブのメンバーが、RONRにしたがってスムーズな議事を進められるだけの最低限の知識を持っているということ、に驚かされます。特に後者に関し、米国では、このような議事規則に関する実践的な教育の場面が設けられているのではないか、などということを想像してします。

最後になりますが、資料の参照、引用をご快諾いただいたKaz Utsumi氏にこの場を借りて御礼申し上げます。

2009/9/10追記:
ワークスKさんより、ライオンズクラブのRobert’s Rules of Orderの解説記事の存在を教えていただきました。

Robert’s Rules Of Order (1)

私の在籍したクラブのBy Laws and Constitutionの紹介を続けてきました。Model RailroadingのBlogとしては、あまり面白いとも思えない話題を長々と続けてきたのは、私の感じたアメリカのクラブの一側面を伝えたいとの思いでとりあげたものです。これに関してもう一つの話題を書きます。

最後のシリーズの(6)で、

第8条 議事の運営方法 には、議事の進め方が書かれています。

という紹介をしました。実際の議事の雰囲気は、以前書いた記事に紹介しました。

会議は毎月1回開催されるのですが、これがまたなかなかすごくて、最初は圧倒されました。私は仕事で「国際規格標準化会議」みたいなものに出ることがあるのですが、運営の方法が全くそれと同じなのです。まず議題は「I move to … (…の動議を提出します)」と始まって、他のメンバーから「Second! (賛成)」の声があってはじめて議論が始まります。

これを読むと、いろいろと複雑な手続きが決まっていて、上で書いた第8条には、色々なことが細々と書かれていると想像されるかもしれませんが、実際には次の一文が書かれているのみです。

特に定めのない限りは、最新版のRobert’s Rules of Orderに従う

Robert’s Rules Of Orderは、米国でのさまざまな場面で会議の議事運営に標準的に採用されており、米国を中心とした各種の国際標準を決める場面でも使われている議事規則で、初版が1876年に出されており、かれこれ130年以上の歴史があるものです。

上記サイトの歴史のページによれば、陸軍で働いていたH.M. Robert氏は、たまたま地域のコミュニティの会議の議事進行を頼まれたものの、進め方がわからなくて困ったのが、Robert’s Rules of Orderをまとめることになったきっかけになったそうです。その後Robert氏は、自身で議事進行の研究を進めるとともに、全米各地で働く中で、議事進行規則が地方や参加者の出身地によってばらばらであることを認識し、標準になるものを自分で書いたのが初版となり、その後脈々と改訂が行われ、現在は第10版となっています。

日本では「ロバート議事規則」と呼ばれるようですが、本記事を書いている時点では、Wikipediaの解説の日本語版がないのを見ればわかるとおり、あまり広く知られているようには思えませんので、次回そのポイントを簡単に紹介してみたいと思います。

By Laws and Constitution (6)

引き続き、By Laws and Constitutionの紹介です。

ここまでのところで、クラブの運営方針、会員の資格、役員の仕事、定例会議の運営、を紹介してきました。第6条以降は、組織の運営にかかわるどちらかというと細かい話がまとめられており、以下簡単に説明します。

第6条 役員会 には、緊急に決めるべきことがある場合などに会長権限で召集できる役員会の召集の方法、運営の方法が決められています。
第7条 委員会 には、特命事項を検討するために委員会を設立する場合の方法が決められています。
第8条 議事の運営方法 には、議事の進め方が書かれています。
第9条 By Laws and Constitutionの修正方法には、このBy Laws and Constitutionの修正方法が述べられています。

第10条 収入と支出 には、予算の決め方、共用の支出に関する払い戻しについて書かれています。この払い戻しですが、予算外のものについては、定例会議の決議を必要とし、更に100ドル以上の支出については、定例会議での議決を必要とする、というようなことまで決められています。

第11条 解散 には、解散したときのクラブの資産の処分について書かれており、すべての負債を処理した後に残ったクラブの資産については、似たような目的を持った、免税措置を受けた団体に寄付する、ということが書かれています。今回読み返してみて、ここまで決めてあったというのを認識して、驚いた次第です。

さて、この最後の条項の「免税措置を受けた」ということについて触れてみたいと思います。

アメリカでは、すべての人に確定申告の義務があります。この際、米国の国税局であるIRSの501(c)という規約に記載されている、一定の条件を満たしたNPOに対する支出については控除の対象となります。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アメリカの主要なHistorical Societyが、この501(c)(3)の認定を受けています。私がこの一連のシリーズを書くことになったきっかけは、Alco Historical & Technical Societyの設立を紹介したことにあるのですが、このAlco Historical & Technical Societyのトップページにも、「501(c)(3)の適用の申請を目指す」ということが紹介されています。

アメリカでは、寄付をする文化が発達しています。このような寄付活動は、節税ととらえられるかもしれませんが、私はむしろ、税金という形でお金を払って社会に薄く還元するよりは、寄付という形で特定の目的に支出することで、自分の信じる社会のあり方を実現する一助とする、という社会的な意味が大きいと思っています。

有名な寄付の例としては、古くは鉄鋼王カーネギーが数多くの図書館を寄付したとか、最近ではマイクロソフトの創始者のビル・ゲイツが寄付活動に専念するといったものがあり、寄付は大きな財を成した富裕層だけの話だと思われがちです。しかし、アメリカでは、上に書いたような、NPOへの支払いを控除対象にできるということで、一般市民レベルでも寄付を促進できるようになっている、ということを記しておきたいと思います。

このような仕組みが整備されているということは、私がワークスKさんの掲示板に書いた
米国では『人々が集まるためのルール作り』がしっかりしている
ということを、社会的な側面から支えている、と捉えることができると考えています。

By Laws and Constitution (5)

長々と続いていますが、By Laws and Constitutionの続きです。

第4条 役員の条項には、クラブの役員とその仕事が決められており、年1回の選挙の方法も、公正に行われるように細かく手続きが書かれています。

役員のポストは6つあり、以前紹介したように、以下のようになっています。

1) President(会長): 定例会議と役員会を取り仕切ること
2) Vice President(副会長): 会長の代行
3) Superintendent (監督): レイアウトの問題の発見、報告、管理、対処の指示
4) Secretary(書記): 議事録の作成、配布
5) Treasurer(会計): 予算の作成、予算遂行状況の管理/報告

面白いと思ったのが、会長の権限が上記の役職の順序で継承されていくことが明文化されていることです。日本では、副会長の権限は、「会長を補佐し」みたいな表現が一般的かと思いますが、副会長の一番最初の任務は、「会長不在のときに会長職を代行する」と決められています。同様に監督の仕事の一番最初に書かれているのは、「会長、副会長不在のときに会長職を代行する」ということで、以下、書記、会計と続いてゆきます。

このほか目に付いたのは、会計担当の役割の1つとして、毎年の予算の立案というのがあるのですが、その際の支出の優先順位が明確に決められていることです。

第5条 会議には、クラブで行う会議とその位置づけが決められています。

一番重要なのは、毎月第一金曜日に開催される、定例会議(Business Meeting)です。一番重要と書いたのは、この会議だけが「議決」を行うことができるからです。そのため、会議の定足数(quorum)も決められており、厳密に守られています。月末になると、定足数に足りるかどうかを確認するメールが飛び交うのが通例で、定足数を満たさない場合は、定例会議は延期されます。
定例会議の「議決」に必要な数は、出席者で投票の資格のある人の半分となっていますが、メンバー加入の承認、会費の改定など、重要と思われる案件については2/3となっています。

By Laws and Constitution (4)

By Laws and Constitutionの4回目です。2回か3回で終わるつもりでしたが、改めて読み返してみると、新しい発見があり、あと数回続きそうです。模型のBlogのはずなのに、お硬い話題に踏み込んでしまって、自分自身戸惑っていますが、こんなことを書いているBlogが一つくらいあってもいいだろう、ということで書き進めてゆきます。もう少しお付き合いください。

第3条 会員では、正会員、家族会員など5つのクラスの会員の定義、会費の決め方、退会の手続き、が決められています。以下、正会員を例にとって、会員になる方法、会員として持てる権利について紹介してゆきます。

会員になる方法は、以前簡単に触れました。入会意思のある人は、3ヶ月の慣れるための期間(familiarization period)を、仮会員という形でクラブに参加します。この後、定例会議で審査し、2/3の賛成で入会となります。

今振り返ると、かなり厳しい審査と思いますが、このシリーズの(3)で紹介したクラブの趣旨を共有しつつ、他のメンバーと協調ができるか、ということが問われていたのだと思います。

「協調」という言葉を補足すると、これは「自分の主張を持ちつつ、他人の主張に聞く耳を持ち、尊重する」ということです。このシリーズの(1)のコメントに書いた、

アメリカでは、「個人が対等」ということが強く意識されているので、「好きなように生きたい自分」を実現するには、「好きなように生きたい他人」を意識し、両者の折り合いをつける必要があります。

ということに相当します。なかなかニュアンスが伝えにくいのですが、日本語で連想する「協調」は、「同調」に近いと感じているので、一言補足してみました。

正会員の持つ権利として明記されているのは、クラブのレイアウトで運転をする権利、レイアウトの部屋の鍵を受け取る権利、レイアウトの建設を担当する権利、クラブの役員になる権利、などです。他のクラスの会員として持てる権利は、この一部となります。

意外なことに、正会員の権利として一番最初に書かれており、最も重要なものは、上のどれでもありません。「議決に参加する権利(right to vote)」です。これは正会員だけの特権で、他の会員が持つことのできない権利でもあります。

これが何を意味しているかということを考えてみましたが、クラブの方向性を決めるプロセスに参加し、自分の意見を反映することができる、そうして、自分たちのクラブは自分たちが動かしてゆくのだ、という意識と責任感とが持てる、ということだと思います。趣味のクラブとはいえ、運営してゆく中では、いろいろな課題が出てきます。それに対処するために、メンバーのひとりひとりが知恵を結集し、議論を尽くし、一番良い決断を下すというための権利だと思います。

こう考えると、right to voteというのは、単に多数決のときに賛成か反対かの票を投じるという権利だけではなく、それに至る議論のプロセスに参加できるという意味を含んだ、広い意味ととらえるべきなのでしょう。

By Laws and Constitution (3)

少し間が空きましたが、By Laws & Constitutionの続きです。今回は、クラブの目的を中心にご紹介します。

第1条: 名称では、組織の名前(Silicon Valley Lines)が定義されているとともに、「カリフォルニア州の法律に基づいた、非営利団体である」、ということが明記されています。

第2条: 目的には、具体的なクラブの活動の目的が、7項に分けて記載されています。ざっくり意訳すると、次のようになります。

A. 啓発を目的としたレイアウトの建設、図書ライブラリの整備、そして(実物の)鉄道に関するものの修復、を通じ、アメリカの鉄道の伝統を保存すること。

B. 模型鉄道を趣味とする人、実物の鉄道のファン、鉄道の歴史研究家が集い、知識やアイディアやスキルを情報交換するための場所を提供すること。

C. 会員や一般の人々の間で、個々人の成長やスキルの向上を図るとともに、その手助けを行うこと。

D. NMRAとその下部組織、趣味の業界、同様の興味を持っている鉄道に関する組織と協力しあうこと。

E. (一般の人々に対する)サービスの機会、ワークショップ、(NMRAなどの)大会、公共メディアを通じた定期的なコミュニケーションを通じ、この趣味界を活性化し、良くしてゆくための、啓発の機会を提供すること。

F. この組織は、メンバーの金銭上の利益を目的とするものではない。

G. この組織の活動は、特定の主義主張を振りかざしたり、政治的な活動から成ってはならない。

日本的な感覚からすると、D.やE.のあたりが目新しく思われるかもしれません。これは、NMRAに相当する組織が存在していない、というのが大きいのでしょうか。

これ以外の条文は、当然のことが書かれているように思われるかもしれませんが、ここまでこまごまと書かれているというのはアメリカならではと思います。例えば、F.とかG.など、趣味で集まる組織なので、こんなことわざわざ書かなくても、と思うのですが、こういうことまで、抜かりなく書くのがアメリカなのでしょう。裏返すと、そういう良からぬことを画策する輩がいないとも限らない、ともいえるのですが。

このように、活動の目的が詳細に言葉になっているというのは、By Laws & Constitution (1)に、ワークスKさんから頂いた、アメリカ社会の特質は……というコメントの中の、
> また意志を伝える手段は、あうんの呼吸は不可能で、必ず言葉、さらには文字を使う……ということだった思います。
という一文を反映している一例と考えてよいかと思います。

By Laws and Constitution (2)

前回の記事に沢山のコメントを頂いたので、遅くなってしまいましたが、予告したとおり、私の在籍していたSilicon Valley Linesの”By Laws and Constitution”の概要を紹介します。念のため、前回記事にも書きましたが、By Laws and Constitutionは、クラブによって異なるものであり、私個人の限られた経験に基づいて以下議論を進める、という点はご了解ください。

これは全部で11条からなっていています。

第1条 名称
第2条 目的
第3条 会員
第4条 役員
第5条 会議
第6条 幹事会
第7条 委員会
第8条 議事の運営方法
第9条 (By Laws and Constitutionの)修正方法
第10条 収入と支出
第11条 解散時の手続き

こうやって書くと、構成自体は一般的と思われますが、改めて印刷して驚いたのは、13ページもあるということです。よく読み返してみると、こんなことまで決めてあったのか、ということまで条文化されています。一例を挙げると、クラブの運営上必要となる「決議」を、どの会議で、どれだけの賛成が必要か、ということが案件ごとに決められています。

こう書くと、規則でがんじがらめに運用しているように感じられるかもしれませんが、実際はそのようなことを感じたことはありませんし、決議に必要な賛成の数が決められているからといって、多数決万能主義が横行しているわけでもありません。

クラブの会議では、皆が自分の思うことを堂々と主張していますし、意見がまとまらず、急ぎでない案件については、無理に採決に持ち込むこともありません。

このあたりの雰囲気は、以前こちらのエントリに書いたことがあります。

今振り返ってみると、ここまでしっかり決めてあると、組織の運営という観点では、透明性が確保されていて、誰が役員をやっても同じ運営ができるため、逆に議論に集中できるのかもしれない、というようなことを感じています。

いくつかの条文については、次回もう少し掘り下げてみたいと思います。

By Laws and Constitution (1)

文才が豊かとはいえない私は、Blogのネタをひねり出すのに苦労しているだけではなく、そのネタに至る書き出しをどうするかでいつも悩んでいます。ネタを見つけても、書き出しが思い浮かばずにしばらく記事にできないことも多々あります。

先日ご紹介したクラブのイベントという記事も、その一例です。このときは、苦し紛れに、ワークスKさんの掲示板で触れた、アレクシス・ド・トクヴィルの主張を引っ張り出して書き始めました。本題よりこちらに反応があったのには予想外で、ワークスKさんには、次のようなコメントをいただきました。

この中で、northerns484さんの発言にあった「米国では『人々が集まるためのルール作り』がしっかりしている」というところがポイントか、と私も思い始めました。
逆に日本では、ここのところがアヤフヤだということです。

ここの私の発言というのは、ワークスKさんの掲示板のAlco Historical Societyのスレッドに書いた以下の文です。

(トクヴィルの主張のうち)「人々が集まろうとする」という観点に注目すると、米国では「人々が集まるためのルール作り」がしっかりしていると考えています。
ご紹介したAlco Historical Societyのトップページの活動の現状の一行目には、
We have our By-Laws and Consitution written.
とあります。一般的に、By-Laws and Constitutionには、組織の目的や運営の仕組みが、事細かに定義されています。トクヴィルの主張を頭に入れてこのページを見返すと、この一行が先頭にあるというのは、大きな意味があるのでは、と感じています。

この中に書いた”By Laws and Constitution”、定款というのが一番近いと思うのですが、一体どんなことが書かれているのか、具体的なイメージが湧きにくいと思います。組織ごとに異なるものですから、どれだけ参考になるかはわかりませんが、私の在籍していたクラブのBy Laws and Constitutionで何が決められているのかを次回ご紹介したいと思います。