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ユニバーサルジョイントの使い方(14) – α=βとなる条件を改めて考える

このシリーズは5~6回で終わるつもりにしていました。が、書いておいた方がよいかと思うことは次々に出てくるもので、前回まで引っ張り、ようやくおしまいと思っていたところ、またまたネタが出てきたので、あと数回続きます。ここまでの詳細な議論に興味のある方は限られていると思いますが、どこかで参考となる場面があれば幸いです。

さて、2つのユニバーサルジョイントを同位相で組み合わせ、\(|\alpha| = |\beta|\)とした場合に、駆動面と最終駆動面との基準点の角度は一致し、角速度が一致するということを述べてきました。この\(|\alpha| = |\beta|\)となる条件をもう少し具体的に見てみます。

まず考えられるのは、次の図のような場合です。ここで、右側の\(\alpha\)傾いた軸に動力源がつながり、左側の\(\beta\)傾いた軸に最終的に動力が伝達されると考えてください。また、\(\alpha\)が右下に傾き、\(\beta\)が上に傾く場合、つまりはこの図を上下に対称にひっくり返した場合は、ここでの議論と等価となりますので省略します。なお、前回と同様、\(\alpha\)、\(\beta\)とも、2つの軸のなす角度を示していますが、これらは、駆動面と伝達面とのなす角度、中継面と最終伝達面とのなす角度と同じです。

このような状態では、2つの傾いた軸は平行となります。平行な2つの線に交わる線を引いたときに錯角が等しい、というというのは中学校の数学で習う項目でした。

このことは、モーターにつながる軸と、車輪・ギアのつながる軸を絶えず平行になるようにしておけば、\(|\alpha| = |\beta|\)を実現できる、ということを意味しています。ただ、このような条件を満たすような場合は、模型に関して言えば限られるのではないかと思います。

もう一つ考えられるのは、次のような場合です。上と同様に、右下に\(\alpha\)傾いた軸に動力源がつながり、左上に\(\beta\)傾いた軸に最終的に動力が伝達されると考えてください。また、この図を上下に対称に反転させた場合も等価の議論ができますので省略します。

これが成立するのは、\(\alpha\)傾いた軸と、\(\beta\)傾いた軸と、水平の軸(2つのユニバーサルジョイントをつなげる軸)とが、二等辺三角形をなす場合であると言い換えることができます。

\(\alpha=\beta\)が成立するいくつかの例を次の図に示します。ここでは、右側の軸を水平に固定しましたが、これは模型を念頭に、モーターの伝わる軸は(車体に対して)固定されており、左側の軸がボギー台車につながっており、最終的に何らかの手段で車輪を駆動する、ということを想定しています。

この図はどういうことを示しているかというと、台車の回転する中心から等距離にユニバーサルジョイントを置くような配置ができれば、\(|\alpha|=|\beta|\)を実現することができる、ということです。

ただ、HO/16番クラスでは、ユニバーサルジョイントの距離を十分に確保できるような駆動系の配置をとることができるか、という問題が出てくると思われます。またゲージにかかわらず、駆動系のメカニズムが台車と干渉しないように駆動軸全体を床より高いところに位置させる必要がでてきます。従って、このような配置を実用的に使うことのできる場合がどの程度あるのかは、やや疑問ではあります。

ユニバーサルジョイントの使い方(13) – 具体的な数値をあてはめてみる

長々と多くの式を並べてきましたが、ユニバーサルジョイントの基準点の角度や角速度がどの程度異なってくるのかを、いくつかの数字を入れてグラフで見てみたいと思います。

ここでは、ジョイントを2度から14度まで2度ずつ変化させて見ます。2つのジョイントをつないだ場合は、\(|\alpha|=|\beta|\)とします。

2度から14度というのには明確な根拠はないのですが、16番でEF級電気をモーター一つでユニバーサルジョイントで台車に動力を伝達した場合には、これくらいの角度になるだろうということをラフな作図で得た結果です。カーブの半径は600mmを想定しています。この作図をしながらいろいろと思ったことがありますので、頭の中が整理できたら、別の稿を起こしたいと思っています。

2°から14°というのがどれくらいの角度かを直感的に理解できるように下の図を用意しました。ここでは、水平線に対する傾いた線の角度で表示していますが、これは駆動面と伝達面とがなす角度、中継面と最終伝達面とがなす角度と同じとなることはそれぞれの線に垂直な線を引けばわかると思います。

(1)ユニバーサルジョイントを1つのみ使った時の駆動面の基準点の角度\(\theta\)と伝達面との基準点の角度\(\varphi\)との関係は下の式で表されます。

\(\varphi = tan^{-1}(tan(\theta-\frac{\pi}{2})\cdot\frac{1}{cos(\alpha)})\)

\(\theta\)を\(x\)軸にとったときに、\(\varphi-(\theta-\frac{\pi}{2})\)を\(y\)軸にとったときのグラフが下の図となります。\(\alpha\)を10°程度とした時に、この差が0.5°くらいとなります。

(2)ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせ、伝達面と中継面との位相を90度ずらした時の駆動面の基準点の角度\(\theta\)と最終伝達面との基準点の角度\(\xi\)の関係は下の式で表されます。

\(\xi=tan^{-1}(tan(\theta-\frac{\pi}{2})\cdot\frac{1}{cos^2(\alpha)})\)

\(\theta\)を\(x\)軸にとったときに、\(\xi-(\theta-\frac{\pi}{2})\)を\(y\)軸にとったときのグラフが下の図となります。ユニバーサルジョイント1ケの時に比べ、角度の差が大きくなっていることがわかります。

(3)ユニバーサルジョイントを1つ使った時の駆動面と伝達面との基準点の角速度の比は下の式で表されます。

\(\frac{cos(\alpha)}{cos^2(\omega t) + sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}\)

これをグラフにしたのが下図です。

(4)ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせ、伝達面と中継面との位相を90度ずらした時の駆動面と最終伝達面との基準点の角速度の比は下の式で表されます。

\(\frac{cos^2(\alpha)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^4(\alpha)}\)

これをグラフにしたのが下図です。

\(\alpha\)を10°とすると、最終駆動面の基準点の角速度は、駆動面の基準点の角速度の±3%程度変動することとなります。

私見では、上記の±3%というのは無視はできないのではなか、とも思いますが、角速度の変動がどの範囲に収まっていれば、回転が滑らかとみなせるか、ということに関しての情報が見つけられず、今回の議論はここまでとしたいと思います。

ユニバーサルジョイントの使い方(12) – ユニバーサルジョイントを2つ組み合わせた際の角速度を計算する

2つのユニバーサルジョイントを組み合わせたときに、最終伝達面の基準点の角度\(\xi\)は、駆動面の駆動点の角度\(\theta = \omega t\)を用いて次の式となるのでした。

\(\xi=tan^{-1}(\frac{sin(\delta)+tan(\omega t)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)}{cos(\delta) – tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha)}\cdot\frac{1}{cos(\beta)})\)

これを\(t\)について微分すれば、最終伝達面の基準点の角速度を求めることができます。

見通し良く計算するために、

\(f(t)=sin(\delta) + tan(\omega t)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\)

\(g(t)=cos(\delta) – tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha)\)

\(u(t)= \frac{f(t)}{g(t)}\cdot\frac{1}{cos(\beta)}\)

とします。すると、

\(\frac{d\xi}{dt} = \frac{d}{dt}(tan^{-1}(u(t)))= \frac{1}{1+u^2(t)}\cdot\frac{du(t)}{dt}\)

\(= \frac{1}{1 +(\frac{f(t)}{g(t)}\cdot\frac{1}{cos(\beta)})^2}\cdot \frac{du(t)}{dt}=\frac{g^2(t)\cdot cos^2(\beta)}{g^2(t)\cdot cos^2(\beta) + f^2(t)} \cdot \frac{du(t)}{dt}\)

関数の商の微分の公式は\(\frac{d}{dx}(\frac{f(x)}{g(x)})=\frac{\frac{d}{dx}(f(x))\cdot g(x) – f(x)\cdot\frac{d}{dx}(g(x))}{g^2(x)}\)ですので、

\(\frac{du(t)}{dt}=\frac{d}{dt}(\frac{f(t)}{g(t)}\cdot\frac{1}{cos(\beta)}) = \frac{1}{cos(\beta)}\cdot \frac{\frac{d}{dt}(f(t))\cdot g(t) – f(t)\cdot\frac{d}{dt}(g(t))}{g^2(t)}\)

ここまでを整理すると、

\(\frac{d\xi}{dt} = \frac{g^2(t)\cdot cos^2(\beta)}{g^2(t)\cdot cos^2(\beta) + f^2(t)}\cdot \frac{1}{cos(\beta)}\cdot \frac{\frac{d}{dt}(f(t))\cdot g(t) – f(t)\cdot\frac{d}{dt}(g(t))}{g^2(t)}\)

\(=cos(\beta)\cdot \frac{\frac{d}{dt}(f(t))\cdot g(t) – f(t)\cdot\frac{d}{dt}(g(t))}{g^2(t)\cdot cos^2(\beta) + f^2(t)}\)

となります。

ここで、\(\frac{d}{dt}(f(t))\)、\(\frac{d}{dt}(g(t))\)は、それぞれ

\(\frac{d}{dt}(f(t)) = \frac{d}{dt}(sin(\delta)+tan(\omega t)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha))=\frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\)

\(\frac{d}{dt}(g(t)) = \frac{d}{dt}(cos(\delta) – tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha))=-\frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha)\)

となります。従って、

\(\frac{d}{dt}(f(t))\cdot g(t) – f(t)\cdot\frac{d}{dt}(g(t)) =\)

\(\frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot((cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\cdot(cos(\delta) – tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha))\)

\(- (sin(\delta)+tan(\omega t)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha))\cdot -sin(\delta)\cdot cos(\alpha)))\)

\(= \frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot cos(\alpha) \cdot(cos^2(\delta)  – sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\cdot tan(\omega t) \)

\(+ sin^2(\delta) + sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\cdot tan(\omega t))\)

\(= \frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot cos(\alpha)\cdot (sin^2(\delta)+cos^2(\delta))\)

\(sin^2(x)+cos^2(x)=1\)を利用すると、

\(\frac{d}{dt}(f(t))\cdot g(t) – f(t)\cdot\frac{d}{dt}(g(t)) = \frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot cos(\alpha)\)

を得ます。

次に\(g^2(t)\cdot cos^2(\beta) + f^2(t)\)を計算します。

\(g^2(t)\cdot cos^2(\beta) + f^2(t)\)

\(=(cos(\delta) – tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\alpha))^2\cdot cos^2(\beta) \)

\(+ (sin(\delta)+tan(\omega t)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha))^2\)

\(=cos^2(\delta)\cdot cos^2(\beta)-2\cdot tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\cdot cos^2(\beta)\)

\(+ tan^2(\omega t) \cdot sin^2(\delta) \cdot cos^2(\alpha)\cdot cos^2(\beta) \)

\(+ sin^2(\delta)+2\cdot tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\)

\(+ tan^2(\omega t)\cdot cos^2(\delta)\cdot cos^2(\alpha)\)

\(=cos^2(\delta)\cdot cos^2(\beta) + sin^2(\delta)\)

\(+2\cdot tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\cdot (1 – cos^2(\beta))\)

\(+ tan^2(\omega t) \cdot cos^2(\alpha)\cdot(sin^2(\delta) \cdot cos^2(\beta) + cos^2(\delta))\)

\(sin^2(x)+cos^2(x)=1\)を利用すると、

\(g^2(t)\cdot cos^2(\beta)+f^2(t)=\)

\((1-cos^2(\delta)\cdot sin^2(\beta))\)

\(+2\cdot tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)\cdot sin^2(\beta)\)

\(+tan^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)\cdot (1- sin^2(\delta)\cdot sin^2(\beta))\)

\(= 1 + tan^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha) – \)

\((tan^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)\cdot sin^2(\delta)-2\cdot tan(\omega t)\cdot sin(\delta)\cdot cos(\delta)\cdot cos(\alpha)+cos^2(\delta))\cdot sin^2(\beta)\)

\(= 1+tan^2(\omega t)\cdot {cos}^2(\alpha) – (tan(\omega t)\cdot cos(\alpha)\cdot sin(\delta)-cos(\delta))^2\cdot{sin}^2(\beta)\)

となります。

ここまでの結果をまとめると

\(\frac{d\xi}{dt} = cos(\beta)\cdot \frac{\frac{\omega}{cos^2(\omega t)}\cdot cos(\alpha)}{1+tan^2(\omega t)\cdot {cos}^2(\alpha) – (cos(\delta)-tan(\omega t)\cdot cos(\alpha)\cdot sin(\delta))^2\cdot{sin}^2(\beta)}\)

\(= \frac{\omega\cdot cos(\alpha)\cdot cos(\beta) }{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot {cos}^2(\alpha) – (cos(\omega t)\cdot cos(\delta)-sin(\omega t)\cdot cos(\alpha)\cdot sin(\delta))^2\cdot{sin}^2(\beta)}\)

我々の興味があるのは、\(\delta=0\)の場合と、\(\delta=\frac{\pi}{2}\)の場合です。

\(\delta=0\)の場合は、\(sin(\delta)=0\)、\(cos(\delta)=1\)なので

\(\frac{d\xi}{dt}=\frac{\omega \cdot cos(\alpha) \cdot cos(\beta)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha) – cos^2(\omega t)\cdot sin^2(\beta)}\)

\(=\frac{\omega \cdot cos(\alpha) \cdot cos(\beta)}{cos^2(\omega t)\cdot(1-sin^2(\beta))+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}\)

\(=\frac{\omega \cdot cos(\alpha)\cdot cos(\beta)}{cos^2(\omega t)\cdot cos^2(\beta) + sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}\)

\(|\alpha| = |\beta|\)とすると、

\(\frac{d\xi}{dt}=\frac{\omega \cdot cos^2(\alpha)}{cos^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}\)

\(=\frac{\omega \cdot cos^2(\alpha)}{(cos^2(\omega t) + sin^2(\omega t))\cdot cos^2(\alpha)}= \omega\)

となり、駆動面と最終伝達面の角速度とが等しいことが確認できました。

\(\delta=\frac{\pi}{2}\)の場合は、\(sin(\delta)=1\)、\(cos(\delta)=0\)なので、

\(\frac{d\xi}{dt}=\frac{\omega\cdot cos(\alpha)\cdot cos(\beta)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)- sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)\cdot sin^2(\beta)}\)

\(=\frac{\omega\cdot cos(\alpha)\cdot cos(\beta)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)\cdot(1-sin^2(\beta))}\)

\(=\frac{\omega\cdot cos(\alpha)\cdot cos(\beta)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)\cdot cos^2(\beta)}\)

仮に\(|\alpha| = |\beta|\)とすると、

\(\frac{d\xi}{dt}=\frac{\omega\cdot cos^2(\alpha)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^4(\alpha)}\)

となります。前回の議論で得たユニバーサルジョイント1つの場合の伝達面の基準点の角速度の式

\(\frac{d\varphi}{dt}=\frac{\omega\cdot cos(\alpha)}{cos^2(\omega t)+sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}\)

によく似た形になりますが、\(cos(\alpha)\)の次数が異なります。

かなり乱暴に言うと、ユニバサールジョイント1つの場合は、\(\frac{1}{cos(\alpha)}\)に応じて角速度が変化するの対し、ユニバーサルジョイント2つを位相を90度ずらして繋いだ場合は、\(\frac{1}{cos^2(\alpha)}\)に応じて角速度が変化する(角速度の変化が拡大される)、ということが言えるかと思います。

ユニバーサルジョイントの使い方(11) – 角速度を計算する

もともは、「ユニバーサルジョイントを正しく使わないと、動力側と伝達した側とで角速度が異なる」ということからスタートしましたので、ここでは角速度の式を導出してみたいと思います。角速度は、時間によって変化する角度を時間で微分すれば得ることができます。これも高校1年生で学習する範囲かと思います。

ユニバーサルジョイントの駆動面と伝達面との基準点との関係は、以下のようにあらわすことができるのでした。

\(\varphi=tan^{-1}(-\frac{1}{tan(\theta)}\cdot\frac{1}{cos(\beta)})\)

駆動面の基準点の角速度を\(\omega\)とすると、\(\theta=\omega t\)となりますので、これを上の式に代入したものを\(t\)で微分すれば、伝達面の基準点の角速度を求めることができます。

\(\frac{d\varphi}{d t}= \frac{d}{dt}tan^{-1}(-\frac{1}{tan(\omega t)}\cdot\frac{1}{cos(\alpha)})\)

合成関数\(f(g(x))\)を\(x\)について微分するには、

\(\frac{d}{d x}(f(g(x))) = \frac{d f(u)}{d u}\cdot \frac{d g(x)}{d x}\)

を求めればよいので、\(u=-\frac{1}{tan(\omega t)}\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\)と置くと、

\(\frac{d \varphi}{d t} = \frac{d}{d u}(tan^{-1}(u))\cdot \frac{d}{d t}(-\frac{1}{tan(\omega t)}\cdot\frac{1}{cos(\alpha)})\)

となります。

\(\frac{d}{dx}(tan^{-1}(x))=\frac{1}{1+x^2}\)ですので、

\(\frac{d}{d u}(tan^{-1}(u)) = \frac{1}{1 + u^2} =  \frac{1}{1 + \frac{1}{tan^2(\omega t) \cdot cos^2 (\alpha)}}\)

\(=  \frac{1}{1 + \frac{cos^2(\omega t)}{sin^2(\omega t) \cdot cos^2 (\alpha)}} = \frac{sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}{cos^2(\omega t) + sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}\)

を得ます。

次に\(\frac{d}{d t}(-\frac{1}{tan(\omega t)}\cdot\frac{1}{cos(\alpha)})\)を計算します。\(\alpha\)が定数だったとき\(\frac{d}{dx}(\alpha \cdot f(x)) =\alpha\cdot \frac{df(x)}{dx}\)ですので、

\(\frac{d}{d t}(-\frac{1}{tan(\omega t)}\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}) = -\frac{1}{cos(\alpha)}\cdot \frac{d}{dt}(\frac{1}{tan(\omega t)})\)

上述した合成関数の微分に加え、\(\frac{d}{dx}(\frac{1}{x}) = -\frac{1}{x^2}\)、\(\frac{d }{dx}(tan(x))= \frac{1}{cos^2(x)}\)を利用すると、

\(\frac{d}{dt}(\frac{1}{tan(\omega t)}) = -\frac{1}{tan^2(\omega t) }\cdot \frac{d}{dt}(tan(\omega t))\)

\(= -\frac{1}{tan^2(\omega t) }\cdot \frac{1}{cos^2(\omega t)} \cdot \frac{d(\omega t)}{dt}\)

\(= -\frac{cos^2(\omega t)}{sin^2(\omega t) }\cdot\frac{1}{cos^2(\omega t)} \cdot \omega \)

\(= -\frac{\omega}{sin^2(\omega t)}\)

を得ます。

ここまでの結果をまとめると、

\(\frac{d\varphi}{d t} = \frac{sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)}{cos^2(\omega t) + sin^2(\omega t)\cdot cos^2(\alpha)} \cdot -\frac{1}{cos(\alpha)}\cdot -\frac{\omega}{sin^2(\omega t)}\)

最終的に

\(\frac{d\varphi}{d t} = \frac{\omega\cdot cos(\alpha)}{cos^2(\omega t) + cos^2(\alpha)\cdot sin^2(\omega t)}\)

という式を得ます。従って、駆動面の基準点の角速度\(\omega\)に対する伝達面の基準点の角速度の比は、

\(\frac{cos(\alpha)}{cos^2(\omega t) + cos^2(\alpha)\cdot sin^2(\omega t)}\)

となります。

\(sin^2(\alpha)+cos^2(\alpha) =1\)であったことを利用すると、

\(cos^2(\omega t) + cos^2(\alpha)\cdot sin^2(\omega t) \)

\(= cos^2(\omega t) + sin^2(\omega t)  – sin^2(\omega t) + cos^2(\alpha)\cdot sin^2(\omega t)\)

\(=  1  – sin^2(\omega t) (1 – cos^2(\alpha))\)

\(= 1- sin^2(\omega t)\cdot sin^2(\alpha)\)

と変形でき、上記の角速度の比は

\(\frac{cos(\alpha)}{1- sin^2(\omega t)\cdot sin^2(\alpha)}\)

と表現することも可能です。これがWikipedia等に掲載されている式となります。