ユニバーサルジョイントの使い方 (5)ー基準点のなす角度の関係を求める

数学でベクトルという概念があり、その基本的な性質の一つが、「直交する2つのベクトルの内積は0になる」というものです。わかりやすく言うと、原点\((0,0)\)から、座標\((x,y)\)を結んだ線と、原点\((0,0)\)から、座標\((u,v)\)を結んだ線とが直交する、つまり90度で交わる場合、\(x \cdot u + y \cdot v\)は必ずゼロになるということです。

直交するベクトルの内積が0になるというのは、3次元空間でも成り立ち、3次元の座標\((x,y,z)\)と\((u,v,w)\)とがあったときに、原点\((0,0,0)\)とこれらを結ぶ2つの線が直交する場合は、\( x \cdot u + y \cdot v + z \cdot w =0\)が成立します。

ユニバーサルジョイントの十字型の部品の2つの軸は直交していますので、2つの基準点の座標についても、上記の性質が成り立ちます。

\((x,y,z)=(r\cdot cos(\theta), r\cdot sin(\theta), 0)\)

\((u,v,w) = (r\cdot cos(\varphi), r\cdot sin(\varphi)\cdot cos(\alpha), r\cdot sin(\varphi)\cdot  sin(\alpha))\)

でしたので、

\(r \cdot cos(\theta) \cdot r \cdot cos(\varphi) + r \cdot sin(\theta) \cdot r \cdot sin(\varphi) \cdot cos(\alpha) + 0\cdot r \cdot sin(\varphi)\cdot sin(\alpha) = 0\)

となります。式を整理すると、

\(r ^2 \cdot sin(\theta) \cdot sin(\varphi) \cdot cos(\alpha) = – r ^2 \cdot cos(\theta) \cdot cos(\varphi)\)

となり、両辺を\(r^2 \cdot cos(\varphi) \cdot sin(\theta)\cdot cos(\alpha) \)で割ると、

\(\frac{sin(\varphi)}{cos(\varphi)} = – \frac{cos(\theta)}{sin(\theta) \cdot cos(\alpha)}=-\frac{1}{\frac{sin(\theta)}{cos(\theta)}}\cdot\frac{1}{cos(\alpha)}\)

\( \frac{sin(\theta)}{cos(\theta)}=tan(\theta) \) でしたから、この式は

\(tan(\varphi) = – \frac{1}{tan(\theta)} \cdot \frac{1}{cos(\alpha)}\)

となります。\(tan\)の周期性の性質を利用してもう少し変形すると、

\(tan(\varphi) = tan(\theta-\frac{\pi}{2})\cdot \frac{1}{cos(\alpha)}\)

という式が得られます。\(\theta =\frac{\pi}{2}\)の時、\(\varphi=0\)となるのでした。従って、この式が基準点の位置関係を的確に表現しています。

説明がこなれていないですが、この式からわかることを書いてみたいと思います。

\(\alpha > 0 \)を想定していますので、\(cos(\alpha) < 1\)となります。従って、\(tan(\varphi)\)は、\(tan(\theta-\frac{\pi}{2})\)より大きな値になります。このことは、\(\varphi\)は、\(\theta-\frac{\pi}{2}\)よりも角度が大きい、つまり、伝達面の基準点の回転角は、駆動面の基準点の基準点の回転角よりも進んでいる、ということを示しています。

\(\frac{1}{cos(\alpha)}\)の影響を受けない場合があり、それは両辺の\(tan\)が\(0\)か\(\infty\)となる場合で、その組み合わせは

\(\theta=\frac{\pi}{2}, \varphi=0\)

\(\theta=\pi, \varphi=\frac{\pi}{2}\)

\(\theta=-\frac{\pi}{2}, \varphi=\pi\)

\(\theta=0, \varphi=-\frac{\pi}{2}\)

の4つです。これらが成立するのは、基準点のいずれかが、\(x\)軸上にあるときで、\(\frac{\pi}{2}\)つまり、90度ごとに駆動面と伝達面との基準点の回転角が一致するものの、それ以外は、伝達面の基準点の回転角の方が大きくなるということで、このために不等速性が発生するということが言えると思います。

さて、上記の式を\(\varphi\)について解くと、

\(\varphi = tan^{-1}(\frac{tan(\theta-\frac{\pi}{2})}{cos(\alpha)})\)

となります。この計算式を使えば、駆動面の基準点の角度が与えられたときに、伝達面の基準点の角度を計算することができます。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*