月別アーカイブ: 2008年12月

Penn Central 1974

米国滞在時、車を交差点で止め、ふと周りを見ると、半分くらいが日本車やドイツ車で占められていることがよくありました。移民も多く、伝統よりは実質を重んじるカリフォルニアという土地柄もあるのだと思いますが、ビッグ3の実力はここまで落ちたのか、とも思ったものでした。とはいえ、サブプライム破綻を契機に、ビッグ3の経営危機がここまで一気に噴出するというのは予想外でした。現在、ビッグ3は、政府への資金援助要請のために各種の活動を進めており、会社の専用機で陳情に行って批判の嵐にあったことは皆さんもご存知かと思います。

さて、1974年当時、経営危機に瀕した会社が、いかに自分たちの会社がひどい状態にあり、政府による支援が必要か、を訴えるために、フィルムを作製しました。

その会社は、ペンシルバニア鉄道ニューヨーク・セントラル鉄道が1968年に合併してできた、 ペン・セントラル鉄道であり、作成したビデオというのが、今回紹介する「Penn Central 1974」です。いきなり貨車が脱線するというセンセーショナルなシーンからスタートしますが、約30分にわたる大作で、当時のPenn Centralの状態を示す資料として価値が高いと思われます。

聞き取り能力が落ちているので、全部は聞き取れていませんが、ナレーション部を中心に、ポイントだけ記したいと思います。注意が行き届いていないところもあると思いますので、いつものように、間違いは遠慮なく指摘ください。

* Penn Centralは、6年前(1968年)に合併で誕生し、4年前(1970)から、破産状態にある。
* 最近の1ヶ月で、Penn Centralは、649の脱線事故があり、252の機関車、1637両の貨車に損傷があり、40万ドルの積荷の損害につながった。

* 貨車の不足が深刻である。15万両の貨車を保有しているが、13%は休車状態にあり、全部をつなげると長さが200マイルになる。
* 荷主の要求にこたえることが出来ないため、一日15万ドル以上の損失、1年で7000万ドルの損失になっている。貨車の不足がこの状況を悪化させている。合併から2万両の貨車が減った。車齢40年の貨車を一日25両解体して、使える部品を使いまわしている。

* 毎日数量の貨車を修理している。きれいな塗装の外見とは裏腹に、つぎはぎだらけの修理をしている。本格的な修理のプログラムを実行しなければ、破滅的な事態に陥る。

* 貨車の定期的なおよび軽微な修理は、36ある”Spot Repair Shop”で行っているが、そのうちの29は労働条件が厳しいなど、必要な要件を満たしていない。いくつかは効率の良いショップに改修したが、お金が尽きた。

* 機関車にも問題がある。破産状態になってから新しい機関車を購入したが、古い機関車は排煙がひどいなどの問題があり、置き換える必要がある。しかし、お金がない。

* 機関車の運用にはメンテナンスショップが必要。シカゴのショップは築60年の蒸気時代のものである。20あるショップのうち15が近代化もしくは立て替えが必要だが、お金がない。

* 近代化を行ったショップでは、経費削減、従業員のモラルや生産性の向上が図れることが実証されており、(そのほかのショップの改装を進められないことは)フラストレーションにつながっている。

* Penn Centralには、39のピギーバックの荷物を捌くターミナルがあるが、すべてが、増加する荷物の量を捌くには規模が小さく、悪いもしくは貧弱な状態である。これらの改修が必要だが、お金がないので延期している。

* 貨車を入れ替えるための操車場は、鉄道会社にとって最も重要なもので、14のハンプヤードと呼ばれる大規模な操車場があり、そのうちの8つが悪い状態にある。

* ニュー・ヘヴンのハンプヤードでは、24時間に1300両の貨車をさばけるはずだが、そんな日はめったにない。ここ2ヶ月で57回の脱線、つまりは1日1回の脱線が起きた。クリーブランドではもっとひどく、一晩にに5つか6つの脱線が起きている。

* お金を使うべきではないということはわかっている。すべての操車場を、ほとんど自動化が可能な最新型の操車場にできれば、お金の支出が抑えられる。しかしながら、それ以上のお金が旧式の操車場で消えてゆく。

* フラットヤードと呼ばれる小規模な操車場が49あるが、このうちの30が不適切もしくは貧弱な状態となっている。Newarkの操車場では、本線でさえ自動信号/自動切換えがない。

* 近代化したフラットヤードもあり、それらの効率が良いことは実証されており、お金があれば、改修を進めたい。

* 保守を伸ばし続けてきたため、線路の状態がわるく、列車を走らせるときは脱線や人命の危険を承知の上で走らせている。時速8マイル?10マイルで走らせている支線や亜幹線もある。

* その一方、保守をしっかり行っている亜幹線では時速50マイルも可能。

* 本線では、モホークバレールートは路盤が固く、潜在的な鉄道のサービスの可能性を示すものであるが、Penn Centralの全体の本線の状態を示すものではない。

* ニューヨーク・ワシントン間のメトロライナーは、国内で最高のサービスを提供している。高速化には30万ドルが必要。しかし、Northeast Corridorの問題は、貨物の運行に支障の場所があることである。

* 本線の5000マイルが「病にかかって」いるが、これは保線を先伸ばしにしたことが原因。

* 線路の状態が悪いことによる速度低下は、従業員の給与など、時間にかかわるすべてのものに影響を与える。たとえば、列車のクルーは12時間以上連続勤務できないため、毎月40万ドルのコスト増につながっている。

* 最も困っているのは、線路の状態である。2月25日から3月3日の間に153の脱線があり、それを取り除くだけにも40万ドルがかかっているが、2/3は線路の状態に起因するものである。

* 現在のPenn Centralの状態は、顧客の要求を満たすには、はるかに遠いのは言うまでもない。

* 今のPenn Centralは、雪の玉が坂を転がり落ちている状態である。今すぐ、本質的な手助けがなければ、最終的に大惨事につながる可能性もある。

それでは、皆さん、今年もまもなく終わりますが、良いお年をお迎えください。

[2012/4/7追記: Youtubeにアップロードされていますので、埋め込んでおきます。]

21世紀だというのに。。。

明日に向かって撃て(原題: Butch Cassidy and the Sundance Kid)」という、実在した銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの生涯をもとにした有名な映画があります。主人公がUPの列車に強盗を働くシーンが描かれていて、米国型鉄道ファンにとっては、印象深い映画なのではないでしょうか。

この映画の舞台は西部開拓時代の1890年後半から1900年ごろ、感情移入こそしましたが、現代のわれわれとは無縁の世界だと思って楽しんでいました。しかしながら、この列車強盗を地で行くような事件が起きたというニュースを目にし、そんなことがこの21世紀にありうるのかという思いで読みました。

Armed gang holds up train in Mexico, robs freight

KCS(カンザス・シティ・サザン)がメキシコで経営している子会社の貨物列車がライフルで武装した20人くらいの強盗に襲われた。手口は、線路上にトラックを置いて列車を止め、列車のクルーを脅し、積荷を強奪したというもの。何が強奪されたものは、明らかにされていないが、覚醒剤製造にも使われる塩酸プソイドエフェドリンではないかとのことである。

インターネット、交通手段、物流など、各種技術の進歩によって、モノや情報の流通、人の行き来が活発になることで、世の中が進化していると無意識のうちに考えてしまいがちですが、このような列車強盗が起きるということは、実は人間そのものは昔と変わっていないと考えるべきなんでしょうね。

Yes, Virginia

1897年、8歳のヴァージニア・オハンロン(Virginia O’Hanlon)という女の子が、当時のニューヨーク・サン新聞社宛てに「Is there a Santa Clause(サンタクロースは本当にいるんでしょうか)」という質問を送りました。この手紙への答えとして、1897年9月21日に掲載されたサン紙の社説の一文の書き出しが、”Yes, Virginia”というフレーズです。「Yes, Virginia, There is a Santa Clause(そうだよ、バージニア、サンタクロースはいるんだよ)」。ニューヨーク・サン紙はこの社説を毎年クリスマスに掲載し、サン紙廃刊後もあちらこちらの新聞が掲載し、現在では、インターネットのあちらこちらに引用されています。どこかでこの文章を目に留められたことのある方も多いのではないでしょうか。

これが転じて、”Yes Virginia”というフレーズは、「何かが存在するということを強調するための書き出し」に使われることがあるようです。そして、まさしくこのフレーズで始まる記事が、サンフランシスコの代表的な新聞であるSan Francisco Chronicleに掲載されていると教えてもらいました。一年以上前の記事ですが、紹介します。題して、「Yes, Virginia, San Francisco does have a freight train(そうだよ、バージニア、サンフランシスコには貨物列車が走っているんだよ)

ざっくり要約すると、以下のようになります(括弧内は私の補足です)。
* サンフランシスコの市内で、UPが貨物列車を一日一往復運行している。(そんなものが運行されているとは想像もしないので)目撃した人はびっくりしている。
* もともとサンフランシスコは港町だったので、以前は港から(サンフランシスコ市街の目抜き通りの一つである)マーケット通りの南側には蜘蛛の巣のように貨物用の線路が張り巡らされていたが、縮小されつづけてきた。
* 1992年より、LB Railcoという会社が、0.5マイルの路線を運行し、ユタ州に運ぶ土壌の貨車への積み込み、入換作業を行っており、UPと接続している。この土壌は、1906年のサンフランシスコ地震の時の瓦礫が主体で、今日の基準では、鉛や砒素などで汚染されたものであり、高層ビルや地下駐車場など、サンフランシスコの再開発で必ず出てくるものである。
* (現在の線路の北側にある)Islais Creekという水路に跳ね橋を架け、サンフランシスコの80番埠頭につなぐ計画がある。
* 貨車は、中国に輸出する石炭をワイオミングから運んできた帰りの空のものを利用している。土壌の積み込み時には、汚染物が飛び散らないような工夫をしている。
* (入換に使うための)車齢60年の100トンの1000馬力のスイッチャーが2台ある。(おそらくこれこれだと思われます。私はディーゼルはほとんどわからないので、形式など、詳細は識者の方にお任せします。)
* このスイッチャーのエンジンを低排出物のバイオディーゼル環境対応のものに換装するという計画がある。そういうハイテク導入の話がある一方、山羊の群れを年2回借りてきて線路の周りの雑草を食べさせているというローテクも活用している。

記事の書き出しの「貨物列車が3rd StreetでMUNIと交差する」のは、下記の画像の真ん中あたりです。クリックすると、Goolge Mapsが開きます。

なお、老婆心ながら、実物を見に行かれたいという方は、このあたり治安面での懸念がないわけではないですので、それなりの配慮をされることをお勧めします。私自身は行ったことはなく、無責任な言い方ではありますが、このあたりは物見遊山気分で行くような場所ではないと考えますので、フェイルセーフ側に倒しておいたほうがよいと思います。念のため。


大きな地図で見る

John AllenのG&D鉄道のクリスマス向けスライドショー

[2012/4/7追記: 下記のリンクは残念ながら消えてしまったようです。]

皆さん既にご存知かと思いますが、gdlines.comというサイトで、かの有名なJohn Allenのレイアウト、Gorre & Daphetid Railroadを記録、紹介しています。

このサイトに、クリスマス向けのスライドショーのページがあることを教えてもらいました。私の見た範囲では、上記のサイトから直接アクセス可能なリンクは張られていないようですので、念のためご紹介します。

http://www.gdlines.com/G&D_card.html

クリスマスには遅れてしまいましたが、G&D鉄道を手軽に楽しめるコンテンツだと思います。

12/29追記: URLが間違っていましたので、修正しました。RAILTRUCKさん、いつもありがとうございます。