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汽笛の鳴らしかた

クラブに入会後の最初の運転会で、サウンドの魅力に完全にはまってしまった私は、周りのメンバーの見よう見まねで、汽笛や鐘を鳴らしていました。まぁ、要するに適当に鳴らしていたということでしょう。程なくして、見るに見かねた?ベテランのメンバーから、汽笛の鳴らし方についてのメールが送られてきました。

以下に掲載しますが、このルールは、1976年10月31日付けの、サザンパシフィック鉄道の輸送部門の規則集(Southern Pacific Transpiration Company Rules And Regulations Of The Transpiration Department)からの抜粋だそうです。

これだけのルールを覚えるのも大変だろうということで、クラブで使うのは青字で示されたものくらいでどうか、ということになっていました。私はこれさえも覚え切れず、相変わらず適当に鳴らしていたのですが。。。

それにしても、本物の列車の乗務員は、このような組み合わせをしっかりと覚えていたのですね。これが制定された1976年当時は、無線が使えたのでしょうが、蒸気時代など、無線はなかったでしょうから、汽笛で的確にコミュニケーションしていた人たちの苦労が偲ばれます。

以下、対訳をつけてみましたが、実際の鉄道の運行に関する知識は乏しいので、自信のないところが多々あります。識者の方がいらっしゃったら、誤りや不適切な訳をご指摘いただければ幸いです。

—-
「o」は短い音(short toot)、「-」は長い音(long blast)を示す。

o = Apply brakes, stop
o = ブレーキをかける、停止する。

o = Approaching meeting or waiting points
o = 待ち合わせ地点あるいは退避地点に接近している。

oo = When standing, start
oo = 停止中の場合は、発車する。

oo = When running, stop
oo = 走行中の場合、停止する。

oo = Answer to -oo
oo = -ooに対して応答する。

-oo = On single track, to call attention of engine crews and train crews of trains of the same class, inferior trains, yard engines, and trains at train-order meeting or waiting points, to signals displayed for a following section, unless otherwise provided by timetable. Failure to receive acknowledge by signal oo must be reported
-oo = 単線上で、自分と同じクラスの列車、自分より低いクラスの列車、ヤードの機関車、そしてすれ違いもしくは待ち合わせの指示を受けた列車の乗務員に対して、特に時刻表で指定がない限り、次の区間に対する信号に注意するように促す。返信が確認できなかった場合は、報告が必要である。

-oo = Must be sounded when passing the rear of freight trains
-oo = 貨物列車の後尾を越す時には鳴らさなければならない。

-oo = On double track, to call attention of engine crews and trains crews of trains of same class and of inferior trains and yard engines, to signals displayed for a following section.
-oo = 複線上で、同じクラスの列車、自分より低いクラスの列車、ヤードの機関車の乗務員に対して、次の区間に対する信号に注意するように促す。

ooo = When standing, back
ooo = 停止時は、バックする。

ooo = When running, stop at next station
ooo = 走行中は、次の駅で停止する。

ooo = Answer to a hand, flag, or lantern movement being swung vertically in a circle at right angle to track and meaning “back”
ooo = バックを意味する、手、旗、カンテラを、線路に対して直角に、縦方向に丸く動かされる手信号に対して応答する。

ooo = Answer to ooo and acknowledging “back”
ooo = oooに応答し、バックに対する確認の信号を送る。
ooo = Answer to ooo and acknowledging “stop at next station”
ooo = oooに応答し、次の駅で停車、に対する確認の信号を送る。

oooo = When running, reduce speed
oooo = 走行中であれば、スピードを落とす。

oooo = When standing, recall flagman
oooo = 停止中であれば、信号手を呼び戻す。

oooo = Call for signals
oooo = 信号を出すように要求する。

ooooo = Increase train heat
ooooo = 列車の暖房を強める。

-o = Shut off train heat
-o = 列車の暖房を停める。

– = Running test completed
– = 走行試験が完了した。

– = When running, look back for hand signals
– = 走行中は、手信号を確認するように。

– = When standing, apply or release air brakes
– = 停止時は、エアーブレーキをかけるあるいは緩める。

-ooo = Flagman protect rear of train
-ooo = 信号手は、列車の後尾を守るように。

ooo- = flagman protect front of train
ooo- = 信号手は、列車の先頭を守るように。

—- = Flagman may return from west
—- = 信号手は、西から戻っても良い。

—- = flagman may return from east
—- = 信号手は、東から戻っても良い。

–o = Approaching meeting o waiting points
–o = 待ち合わせもしくは退避地点に近づいている。

o- = Inspect brake pipe for leaks or for brakes sticking
o- = (空気)漏れあるいは、ブレーキがかかった状態になっていないかを確認するために、ブレーキパイプを調べる。

— = Train parted
— = 列車が分割された。

–o- = Approaching any crossing at grade, tunnels and obscure curves; to be commenced sufficiently in advance to afford ample warnings, but not less than one-fourth mile before reaching a crossing if distance permits, and prolonged or repeated until lead unit has passed over the crossing. If distance does not permit, whistle signal must be commenced sufficiently in advance of entering crossing to provide ample warning.
–o- = 踏み切り、トンネル、見通しの悪いカーブに接近している。余裕を持って警告できるように、距離的に可能であれば、踏み切りの手前1/4マイル以上前から鳴らし始め、先頭のユニットが踏み切りを超えるまで、延ばすか、繰り返すこと。距離的に不可能であれば、余裕をもって警告できるように、踏み切りに入る前、可能な限り早く鳴らし始めること。

oooooooooooooo etc = Succession of short sounds = Alarm for person or livestock on the track
oooooooooooooo etc = 連続した短い音 = 線路上の人や動物への警告。

oo- = Engineer of second engine take control of air brakes. when second engineer has taken control, he must repeat the signal.
oo- = 2台目の機関車の機関士が、空気ブレーキの制御をするように。2台目の機関士が制御をするようになったら、この信号を繰り返さなければならない。

英語は生きもの

アメリカのクラブに属するということは、当然、ネイティブの英語をしゃべるメンバーとコミュニケーションをする必要があるということです。

私は日常のコミュニケーションには困らない英語はできるので、クラブを初めて訪問した際、運営方法や会則の説明を受けたり、こちらからいろいろな質問をしているうちは問題なく、英語はなんとかなるだろうとタカをくくっていました。

ところが、正式にメンバーとなり、定例会議など、議論が白熱する場面では、私の英語力では歯が立たない場面が頻繁に出てくることとなり、かなり焦ることに。

まずは知らない語彙と機関銃のようなスピード。多岐に渡る州の出身のメンバーの微妙な発音のクセ。一番大変だったのは、各々の単語は簡単なのですが、その組み合わせ(特に前置詞)が生み出す表現の豊かさです。知っている単語が耳に入ってくるのに、その組み合わせの持つ意味がわからないことが多々ありました。

会話だけでなく、メーリングリストでも、砕けた英語や、普通の辞書では出てこないような表現が出てきて、難儀しました。そうは言いながらも、こんな言い方があるんだと感心したり、これはどういう意味なんだろうと調べたり、どうしてもわからない場合に、「これはどういう意味ですか」とこっそり私信で聞いたり、英語の表現の豊かさを楽しんでいました。

一例を挙げましょう。運転会の時など「皆何時にクラブに来るの?」という質問がよく発せられます。皆さんだったらどう答えますか?

以下は、とある月運転会の集合時間の質問に返ってきた返事のリストです。よくもまぁこんなにいろんな言い方をするもんだ、と感心した記憶があります。

まずは、私でも思いつきそうな表現。

I should be there by 7:30PM.

I’ll be getting there between 8:30 and 9:00.

よく皆が使っていたのが、「((be) down」という言葉です。微妙にニュアンスを伝えるのが難しいのですが、「(自分が普段いる場所から)そちらへ向かう」というような意味だと理解しました。

I should be down by 8:00.

Hoping to be down between 8 and 9.

I’ll plan to be down by 18:00

次のあたりになると、日本の学校教育ではまず出てこない表現ですね。

I’ll try for 7-ish…

Shooting for a 7ish arrival.

こういうのが、本当に生きた英語なんだな、と実感した次第です。

騒音対策

DCC/サウンドが一般的になり、最新の製品になるほどスピーカーの性能や取り付け方法が改良され、良い音が出るようになっています。私もBLIの蒸気を何台か持っていますが、大型のテンダーを備えたものは、その構造もあいまって、特に迫力のある音が出ます。

さて、私がアメリカのクラブに在籍していたのは、そのようなDCC/サウンドつきの機関車が一般的になりつつあるころでした。

そんなある日の運転会、ほぼすべての機関車がサウンド付になり、私も含めて皆が思ったことがありました。

「これって、いくらなんでもうるさくない?」

さすがに、5台近くの機関車があっちこっちでうなり声を上げると、我慢の限界を超える音量になります。

翌週に開催された定例会議で、早速この話題が議論されました。音量を測ったらとか、隣のセクションで聞こえないくらいにしたらとかいろいろアイディアが出されました。 とはいえ、音量を厳密に測るのは決して簡単な仕事ではありません。明確な結論は出ませんでしたが、CV値(CV51.0)を適当に調節するように、ということで落ち着いきました。

私も、小型のテンダーの機関車は、CV51.0=95に(最大音量の75%)、大型のテンダーの機関車は、CV51.0=63(最大音量の50%)というところで設定しました。

ちなみに、この議論の直後に、簡易音量計を持ってきたメンバーがいました。私のいたクラブでは、誰かが何かを持っていて、それを試してみようという姿勢が徹底していたのは、すばらしいことだったと思っています。

奥様(恋人)対策

とりとめのない話でどれくらい続くかわかりませんが、またアメリカで所属していたクラブのことを書き連ねてみたいと思います。

世の東西を問わず(?)、Model Railroadingのような道楽趣味を楽しむ場合には、家族の理解を得るのは簡単ではないようです。

とはいっても、アメリカ滞在中に感じたのは、「アメリカでは、Model Railroadingは広く一般の人々に理解されている趣味だ」、ということです。ある一定の知的水準を越えた人であれば、男女を問わず、「Model Railroadingを楽しんでいる」といえば、なるほど、と理解してくれたとの印象があります。

日本で「鉄道模型を楽しんでいる」と言って、どれくらいの人がその趣味を正しく理解してくれるでしょうか。もっとも、私の場合は、日頃の行いが悪いというのは否めませんが。。。

私の在籍していたクラブでも、メンバーの皆さんは、家族とよく話し合ってうまくバランスをとっていて、「旦那が道楽趣味をしている」と白い目で見られることはなかったようです。メーリングリストでも、「奥様と子供の面倒を見るのをどう分担したから、いつクラブに行ける/行けない」みたいな話がよく流れていました。

メンバーによっては、奥様が積極的に協力している場合もあり、とてもうらやましく思いました。

あるメンバーは、奥様も家族会員で、時々運転会に顔を出してご自身でコントローラーを握って運転を楽しんでいらっしゃいました。

別のメンバーは、結婚する前からよくカップルでクラブに来ていました。彼の奥様は絵の素養があり、よくレイアウトの背景画を描いていました。そのそばで、彼が自分のセクションの建設を進めるという二人三脚の様子は、とても微笑ましい光景でした。

また、クラブにいくとよく差し入れが置いてありました。奥様がクッキーを焼いたとか、ちょっとした軽食を作ったりとか。私もずいぶんご馳走になったものです。

これに加え、毎年メンバーの誰かの家でクリスマスパーティーが開催されます。皆さん家族同伴でいらっしゃって、模型の話だけでなく、いろいろな話題で盛り上がることができたのは、楽しい思い出です。