Glacier Park Modelsの新作はFrisco 4500

前からあちらこちらで話題になっていましたが、Glacier Park Models(以下、GPM)の次回作であるFRISCO(正式名称はSt. Louis-San Francisco Railway)のクラス4500(4-8-4)が、Webサイト上で正式に発表されました。4-8-4大好きな私としては、見逃せませんので、簡単に触れてみたいと思います。

まず実物の話からまとめてみます。以下はJoe Collias氏の”FRISCO POWER”を参考にしました。この本は、もうずいぶん前の出版で、再版もされていないようですが、FRISCOの蒸気~初期のディーゼルの概要を知るにはいまだに一級品の資料ではないかと思っています。

Collias, Joe G.
FRISCO POWER — Locomotives and Trains of the St. Louis-San Francisco Railway 1903-1953
1984 MM Books
ISBN 0-9612366-0-4

クラス4500は、1942年から1943年にかけてボールドウィンで製造されたFrisco最後の新製蒸気です。この機関車が計画された当時は、第二次世界大戦の真っ最中でしたので、新しい機関車の製造に際しては、使用目的、使える材料、など数多くの制約が課せられていました。その中の制約の一つである、「既存の設計を活用すること」を満たすべく、クラス4500は、CB&Qの4-8-4であるクラスO-5aの基本設計を流用することとしました。2つの機関車は、基本設計が同じとは思えないくらい印象が異なりますので、4500の設計チームはFRISCOの機関車としての独自性を出すのに成功したといえます。

クラス4500は、3つのグループで登場しました。

  1. 4500~4502は、セントルイス-オクラマホマ間で運行されていたFRISCOの看板列車Meteorの牽引専用で、1942年11月に落成。重油焚き。以下の4503~4514とはテンダーの形がかなり異なる。
  2. 4503~4514: 石炭焚きの貨物用機で、1942年8月に落成。
  3. 4514~4524は、4503~4514と同じ石炭焚きの貨物用機で、戦時中の輸送量の増加に対応すべく、1943年に増備。利用可能な材料等の関係で、4500~4514がディスク動輪を装備していたのに対しボックス動輪を装備。また、先輪はスポーク輪心で登場(後日ディスク輪心に交換)。このシリーズは牽引力を増やすためのブースターを装備しており、性能が良かったたため、4500~4514にも装備することとなった。

さて、クラス4500を特徴付けるのは、その塗装です。

  1. 貨物機用の4503~4524は、Frisco Faster Freight(フリスコの高速貨物)という大きなロゴと白と赤のストライプが印象的です。
  2. 旅客機の4500~4502は、機関車全体は青で、テンダーの真ん中に白い帯、テンダーの前方上半分に斜めにMeteorという赤の大きなレタリングという、アメリカの蒸気では考えられないような派手な塗装で登場しました。番号が若いにもかかわらず、4503~4514に遅れて登場したのは、戦時中にこんな派手な塗装をしてよいものだろうかという議論があり、機関車は完成したものの、塗装が決まるまで待たされたとのこと。

さて、この4500~4502の青ですが、「Zephyr Blue」と書かれているだけで、今一歩イメージがつかめません。インターネットで調べてみると、以下を見つけました。
1) 現役時代のカラー写真がこのページに掲載されています。
2) Joe Collias氏によるカラー写真が、FRISCOのファンサイトの中に一枚ポストされています(メンバー登録必要。無料)。
3) オクラホマ州のTulsa市に静態保存されているトップナンバーの4500号機の塗り替え作業を報告しているサイトがあります。

このほか、私の手持ちの資料の中化から、Locomotive Quarterlyの1995年の第4号の表紙を写したものを掲載します。絵なのでどれだけ参考になるかはわかりませんが。

さて、このような特徴的な塗装ではありましたが、1946年に社長に選ばれたHungerford氏のお気には召さなかったようで、社長のツルの一声で順次黒に塗り替えられてゆきました。趣味的には、こういうことに対して理解がない人だったと見てしまうかもしれませんが、FRISCOを立て直したという記述も見られますので、経営的には功労者なのかもしれません。この質素な塗装の時代ではありますが、1949年にのごく短い間、Will Rogers号を牽引するために、4519号機のテンダーに「The Will Rogers」というレタリングが入れられました。これは、「オクラホマの息子」と呼ばれ、映画俳優などとして活躍したWill Rogers氏の生誕70周年を記念してとのこと。

クラス4500は、この時代に製造された蒸気機関車の常として、活躍した期間は短かったのですが、安定した性能を発揮し、乗務員などからは信頼のおける機関車だったとの評価をされたようです。

模型の話ですが、ブラウン・ブックによれば3回製品化されたと記録があります。そのうちの2回はハンドメイドの特製品のため、一般に入手可能なのは、今はなきHallmark社向けに1980年ごろ(?)に韓国で製作されたものかと思われます。ただ、この模型は韓国の技術が安定する前の時代のものであり、出来は発展途上というべきでしょう。さらにはテンダーの寸法がスケールからかけ離れているという欠点があります。

今回GPMは、決定版を目指しているのでしょうか、なんと11種類を作り分けるという力の入れようです。製作を担当するのはBoo Rimですので、この点でも期待できます。ただ、前回作のSPの4-6-2は、最後の詰めがもう一歩だったという印象なので、今回は丁寧に仕上げてほしいなぁと思っています。

以下、GPMから許可をもらいましたので、GPMのサイトに掲載されている写真を転載します。

All of the 4500 prototype images are posted under permission from Glacier Park Models.

これは、Meteor牽引機のオイル焚きの4502です。

これは貨物用に製造された石炭焚きの4503号機です。テンダーの形が上のオイル焚きのものとはずいぶん異なることがわかります。FFFのヘラルドの形がよくわかります。

これはWill Rogersのレタリングを施した4519号機です。これからこのレタリングを除くと、Hugerford氏社長就任後の「黒にテンダーに番号を書いただけ」のペイントスキームとなりまます。

これは増備したグループのトップナンバーです。先輪がスポークなのがよくわかります。

これは4500クラスの最後のナンバーです。スポークの先輪、そしてディスク動輪ではなくボックス動輪を装備しているのがよくわかります。

これが、Hugerford氏社長時代の簡素な塗装です。

Glacier Park Modelsの新作はFrisco 4500」への2件のフィードバック

  1. ワークスK

    Frisco in Color
    フリスコは1980年、BNに合併されたので、その後期のディーゼル機と貨車には興味があって、表題の1995年に出版されたカラー写真集は持っています。ここに蒸機は7枚、4-8-4に至ってはたった2枚しか写っていません。ですから、鮮やかなブルーのカマがあったなんて驚きです。
     天然色フィルムはいつから市販されたのでしょうか?

    返信
  2. northerns484

    FRISCOファンは熱心な人が多いようです
    ワークスKさん:

    あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

    ワークスKさんのリサーチ対象の広さにはいつもながら敬服です。

    この青の塗装は、1942年末から1947年か1948年まで(要検証)の5年くらいしか適用されなかったということ、鉄道の知名度が相対的に高くないこと、そして良い何より模型が出ていない、ということで、あまり知られていないのだと思います。

    そして、Frisco In Colorに写っている時代は蒸気の最終期だと思いますので、黒の塗装のものしか写っていないのでは、と思われます。

    コダックの歴史のページを見ると、コダクローム(スライド)が1935年に、コダカラーフィルム(ネガ)が1942年に販売開始とあります。

    http://www.kodak.com/global/ja/corp/historyOfKodak/1930_ja.jhtml?pq-path=2700

    ということで、Zephyr BlueのFrisco 4500が活躍していたころのカラー写真が残っているというのは矛盾しないのですが、当然、かなり高価であったものと思われ、インターネット上で2枚も確認できるというのは、実は驚くべきことかもしれません。

    今回インターネットを調べながら感じたのは、FRISCOのファンは熱心な人が多く、資料が豊富に残されているということでした。

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