Bill Brisko氏の3Dプリンタによるロストワックス技法 (3)

Bill Brisko氏の3次元プリンタによるロストワックスのクリニックの第3回目です。これまで2回が設計の話でしたが、今回は、「モデリング」と言う、実際のモノを形作る技法の紹介です。さて、今回の話は完全に私の専門外となります。可能な範囲で調べものをして、基本的な原理だけは理解したつもりですが、間違いがあったり、用語の使い方が不適切な可能性があります。お気づきの点は、遠慮なく指摘していただければ、と思います。

[2009/5/3追記:
(1)Stereolithographyという言葉の訳し方を修正しました。Stereolithographyという言葉は、今回紹介している各種の造形手法の総称として使う場合と、光造形(SLA)のみを指す場合とがあり、明確な定義はないようです。Bill氏のプレゼンも紛らわしいところがあります。今回は前者の各種造形手法の総称という立場に立つことにします。どういう訳語がいいのかわかりませんが、とりあえず『立体積層造形』という言い方にしてみました。このあたりの言葉の使われ方の経緯とか、詳しいことをご存知の識者の方がいらっしゃったらご教授いただければと思います。
(2)lithographyは、版画より印刷のほうが的確ということで修正しました。
※ ご指摘いただいたdda40xさんに感謝します。]


基本的なモデリング
・石や木からの削りだし – 古代
・ロウを削りだしたもののインベストメント鋳造 – 古代
・粘土や紙によるモデル – 1800年代
・プラスチックモデル – 1920年代(?)
・CNC機械 – 1970年代
・立体積層造形(ステレオリソグラフィー) – 1990年代


ここには、モデリングの歴史が簡単にまとめられています。
・CNCというのは、Computer Numerical Controlの略で、Wikipediaの定義を引用すると、「(旋盤やフライス盤などの)機械工作において工具の移動量や移動速度などをコンピュータによって数値で制御すること」を指します。
CADで設計したデータを、工作機械にそのまま投入することができるということで、工作の効率が大幅に上がりました。
さて、このプレゼンでは取り上げられていませんが、このCNCや次のスライドで述べられている各種のラピッドプロトタイピング技術を可能としたものに、制御技術の発達があると思います。最近のCNCでは、1/100ミリの精度がごく普通に出せるようなのですが、その精度を保つように工作機械を制御するのは、実は大変な技術の積み重ねがあったのは、間違いないと思います。
・「Stereolithography」という言葉は、次のスライドで紹介する各種技法の総称で使われるようですが、光造形が最初に実用化されたことから、Stereolithographyは光造形の別称として使われる場合があります。
この直訳は「立体印刷」となります。その原理を考えると、上手いネーミングと思います。印刷では、紙の上の必要なところにインクを載せる、つまり紙の上に非常に薄い層を載せます。そして、この層を何回も重ねてゆくと、立体ができることになります。
今回紹介する技法は、すべてこの考え方に基づいています。前々回、前回で紹介したソリッドモデリングという手法で物体の形状を構築した後、この物体を垂直方向に非常に薄く輪切りにしたデータを作ります。そして、この輪切りにしたデータを順番に造型機で作ってゆくことになります。
小学校のときだったか、社会科の教材で、等高線に沿った地図を切り抜いて立体地図を作ったことがありますが、原理はこれと同じと考えてもらえれば、わかりやすかもしれません。

追記: 上記の「STLファイルで物体を構築し、輪切りにする(Slicing)」ことを的確にアニメーションにしたビデオを見つけましたので紹介します。英語ですが、概要はわかっていただけると思います。


ラピッドプロトタイピング
・SLA – 光造形法(レーザーでレジンを硬化させる)
・SLS – 選択的レーザー焼結法(レーザーで粉末を焼結させる)
・FDM – 熱溶解積層法
・3次元印刷 – インクあるいは他のものによる印刷


ラピッドプロトタイピングとは、直訳の通り、高速に試作品を作ることを指します。以前は、試作品を作るには、設計者が図面を描き、試作部門のスタッフがその図面から手で作っていたのが通例でした。コンピュータや各種技術の発達で、設計者がコンピュータを使って設計したデータをそのまま造形することができるようになりました。そして、この技法は「試作」にとどまらず、ごく少量のものを生産するために応用されるようになっています。

次回は、この4つの技法の説明になります。

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