ユニバーサルジョイントの使い方(29)ーMPギアの左右の角速度の比についてのまとめ

前回前々回と、MPギアのような駆動系でモーターの左右にユニバーサルジョイントで動力を伝道する場合に、モーターに取り付けるユニバーサルジョイントの位相が揃っていないと(\(\Delta\neq 0\))、左右のユニバーサルジョイントの最終伝達面の角速度が異なる、というを明らかにし、\(\Delta=\frac{\pi}{2}\)の場合を計算するとその左右の角速度比の変動が最大になり、かつかなり大きな値になるということを示しました。

これを踏まえてこれまでの議論を整理すると、MPギアを使った車両がカーブを走行する際には、2つの角速度の変動が車両の挙動に影響を与えることが考えられます。

1つめは、ユニバーサルジョイント単体で発生する角速度の変動です。カーブでは、ユニバーサルジョイントの折れ曲がり方が同じではない(\(\alpha\ne\beta\))ので、この変動は避けられません。しかしながら、ユニバーサルジョイントの位相をそろえる(\(\delta=0\)とする)ことで、この変動を最低限にすることができます。

そして、2つめは、今回議論したように、モーターに取り付ける2つのユニバーサルジョイントの位相が揃っていないことによって発生する、左右のユニバーサルジョイントの最終伝達面の角速度の差です。つまり、最終的な車輪の回転速度が左右の台車で異なる、ということです。これは\(\Delta=0\)とすることで防げますので必ず守るべきであると言えます。念のため、前々回掲載した図で言えば、左のような取り付け方法をとらなければならない、ということです。

定性的には、前者は車両の速度が一定しない(脈動する)ことに、後者は前後の台車の速度が異なる事による効率の低下やスムーズではない挙動に、つながると考えます。

以前MPギアの解析を行ったときにたてた、「角速度の変動率が5%に近づくあたりから、スムーズな走行に影響を与える」という仮説は\(\Delta=0\)であった場合にのみ成り立つものです。仮に\(\Delta=\frac{\pi}{2}\)であったとすると、角速度の変動率が8%を超えるあたりから、ということが言えるかと思いますが、2つの角速度の変動のうちどちらが支配的な影響を与えるか、については実験を行わないとわからないと思います。

いずれにしても、上記の仮説は一旦取り下げることといたします。

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