ワークスKさんのクリーニングカーとグーゴーンという記事を拝見しました。
すでに雑誌社の姿勢とかあり方について何件かコメントが寄せられています。あいにく私はこのような観点ではコメントをできるような見識を持ち合わせていませんので、その方面での議論は他の方にお譲りします。私は、今回の記事の実験条件というのがどうも腑に落ちなかったので、その観点で書かせていただきます。
実験というのは、ある仮説を実証するために行うものだとおもうのですが、今回の記事のテストが何を仮説としたのかがもう一歩読み取れませんでした。「Centerline社のクリーニングカーの性能が良い」というのが仮説であることはもちろんですが、その仮説に伴う条件が妥当でなければ、実証ができても、現実的にはあまり意味をなさない仮説だと思うのです。
私が思うに、Centerline社のクリーニングカーを使おうとするのは、それなりに大きなレイアウトを持っていて、頻繁に運転をしていて、その運転の品質を保ちたいと考える人たちではないかと思います。ですので、「1.4×0.9mのエンドレス」が「4、5年放置されていた」ものを使って性能を実証しても、そんなに価値のある情報になるのかなぁ、と感じてしまった訳です。
あるいは、Centerline社のクリーニングカーの絶対的な性能を実証するために、あえて劣悪な条件で実験を行ったのかもしれません。そうだとしたら、もっとデータを取ってほしかったと思います。クリーニングカーを10週走らせるごとにスタート電圧を測ってグラフにしておけば、どれくらい走らせればどれくらいのクリーニング効果が得られるか、というようなことがわかるわけで、多くの人に価値のある情報になったと思います。
ほかにも、最近増えてきたコアレスモーター搭載の機関車ではどうなるかとか、DCCの機関車ではどうなるか、とか、いろいろな切り口があると思います。そういう詳しいデータを取れば、一級品の記事になったのではと思います。
インターネットの時代で紙メディアのあり方が大きく揺さぶられているわけですが、私自身は紙のメディアには紙のメディアなりのよさがあると思います。そのためには電子メディアをうまく活用してゆく工夫が必要だと思います。たとえば、今回のクリーニングの効果として、スタート電圧が8Vから5Vになったとありますが、これだけ読んでもいまひとつその改善の意味合いが実感が湧きません。クリーニング前後でのスタートのスムーズさの変化をビデオにとってYoutubeに載せておけば、誰も反論できない、説得力のある記事になったと思います。
最後にもうひとつ補足すると、アメリカのクラブに所属して思ったのは、レールのクリーニングとは、様々な作業の地道な積み重ねだということです。確かにクリーニングカーは便利ですが、万能だとは思いません。手作業で磨くこともありますし、レールに触れる車両の状態を適正に管理することもレールのクリーニングの作業の一環と考えるべきです。そして肝心なのは、「これらの一連の作業を継続的に行う」ということだと思います。このあたりは、ずいぶん前になりますが、車検に関する補足(その1)と車検に関する補足(その2)とに書かせていただきましたので、興味のある方はお読みになっていただければ、と思います。
これは実験ではないですね
全く仰るとおりです。これは実験でも何でもありません。「品切れの商品が入荷したから、皆さんありがたく買ってくださいよ。」という広告です。
TMSは御大が「自分は理学を修めたのだから、全て分かっているぞよ。ありがたく話を聞け。」という姿勢でした。それが正しかったかどうかは別問題ですが。
とれいんは「私は理科はぜんぜん分かりませんからそんなことには興味はありません。汽車趣味は面白いですよ。お金を掛ければすごく楽しいですよ。自分がこうやっているから、傘下に入りませんか?」という態度でした。
しかし、どちらも硬直化し、もはや鉄道趣味誌は「化石化」した状態だという論評がどこぞにありました。
それを打開するのは、優れた記事を集める以外ありません。栗生氏が仰るように、Web上には「オッ」と思う記事がいくらでもあります。どうしてその人たちに接触しないのでしょうね。
いつもコメントありがとうございます。
dda40xさん:
昔はどの書店に行ってもTMSととれいんとは難なく見つけることができたのですが、最近それが少し怪しくなったような気がします。
アメリカに行くと、雑誌だけでなく、Historical Societyの会報やら、小出版社のきらりと光る新刊とか、いつもわくわくしながら模型屋さんを覗いています。
先日ドイツのドレスデンに行ったときにも、駅の売店の一角の横1.2m×縦2mくらいの棚だったでしょうか、すべて鉄道関係の雑誌で埋められていたのにもびっくりしました。
自分がアメリカ型中心になっているので、実は日本の雑誌や出版の現状を正しく理解していないということは認めますが、この差は何なんだろうといつも考えさせられます。