日別アーカイブ: 2010年3月17日

JMRI訴訟(Jacobsen vs Katzer Case)の和解が成立 (2)

さて、JMRI訴訟に関する前回の記事の続きです。引き続き、専門の知識をお持ちの方がいらっしゃったら、誤り等のご指摘、補足などいただければ、大変助かります。

[2010年9月15日追記: 下記の記述に関して、稲葉清高様にコメントを頂きましたので、併せてお読みください。]

Jacobsen氏が、訴訟に著作権侵害を加えた際の、Katzer氏の反論がこの裁判の転機となったと書きましたが、この反論(原文はこちら)を私の拙い理解の範囲で噛み砕くと、「そもそも、著作権侵害で訴えることができるのは、契約不履行があった場合であるが、JMRIのように、誰でもダウンロードできる公開の形態をとった場合、契約そのものが成立しない。つまり、公開者は、利用者を訴える権利を放棄したと見るべきであり、原告のJaconbsen氏には、著作権侵害を訴える権利が無い」ということです。

このKatzer氏側の主張が認めらるとなると、JMRIだけでなく、各種のOSSを、ライセンスに違反して使っても、著作権侵害で訴えることはできない、ということになります。つまり、この主張は、OSSの著作権、さらに言えばOSSそのものの存在意義を限りなく否定することになります。これまでにOSSに関する類似の係争が存在せず、この裁判の結果が、今後の判例となるため、単なる模型界の特許係争から、OSS関係者も含めて、多くの人が見守る係争となりました。

これ以上の詳細な経緯を述べることは、このBlogの範囲を超えているので、簡単にポイントだけ紹介すると、当初カリフォルニア州の地裁ではJacobsen氏の主張は認められず、連邦巡回区控訴裁判所に控訴、地裁に差し戻し、という経緯を経て、2009年12月に大筋においてJacobsen氏側の主張が認められたSummary Judgement (原文はこちら)が出され、その中で、OSSといえども著作権は守られるべきものであること、Katzer氏側に著作権侵害があったこと、が認められました。

今回の和解は、上記のSummary Judgementにおいて、OSSに対する著作権の考え方の判断の大勢が決まったことを受けてまとまったもので、1)今後、Katzer氏側は、JMRIのダウンロード、改変、再配布などを行わないこと、2)今後、Katzer氏側は、decoderpro.comなどのJMRI関係のドメイン名の登録を行わないこと、3)Katzer氏側が、Jacobsen氏側に10万ドルを支払うこと、などが含まれています。

詳しくは、こことか、こことかのニュース記事をご覧ください。