私がまだアメリカにいるときに、知人がカブースを買ったということを書きました。
これは、Golden Gate Railroad Museumが借りていた土地の契約が満了し、そこに置かれていたコレクションの一部がやむなく売り出された時に、その中のWestern Pacificのカブース668を、私が属していたクラブのメンバーのJohn Plocherご夫妻が購入したものです。現在、カブースはお二人の家の庭に永住の場所を得て、オフィスとして活用されています。
たかがカブースといえども、メインライン用のものですので、重量は30トン近くになり、勝手に自宅の庭に置くことはできません。当然お役所の許可が必要となるため、サンノゼの市役所との折衝でかなり苦労したようです。ただ、John Plocher氏と話をしていて印象に残っているのが、役所の人も、前例がないながらも、門前払いにすることなく、「法令を守りつつ、どうしたら設置の許可を出せるか」という観点で考えてくれた、ということです。
一番問題となったのはやはり安全性のようで、サンノゼ市の役所にこのような鉄道車両の設置に関して詳しいことがわかる人がいるはずもなく、鉄道車両の保存に関して技術や知識を持っている専門のコンサルタントに依頼して、設置方法を指導していただき、安全だというお墨付きをもらって解決したとのことです。
これは当然(?)、地元でも話題になりました。アメリカには、コミュニティーペーパーと呼ばれる、ごく狭い地域の単位に配布される新聞があります。カブースがご夫妻の自宅の庭に運び込まれた直後、Willow Glen Residentというコミュニティーペーパーの2007年5月25日号の表紙をかざりました。今回の記事のタイトル写真はこの新聞をJohn Plocher氏に頂いたものを撮影したです。記事そのものはWeb化されていてこちらから読むことが可能です。
このカブースの歴史や、設置にいたるプロセス、現状については、ご夫妻が立ち上げたサイトwp668.orgに詳しく掲載されていますので、ごらんになってください。
以前私が撮影していた写真を引っ張り出してきましたので、紹介します。
これは、2006年4月のとある休日に、クラブのメンバーが皆で集まって、線路を敷設したときにとった写真です。私も微力ながらハンマーを振り上げ、お手伝いをしたのですが、体格の良い他のメンバーに比べると非力なのは明らかで、情けない思いをしたのをよく覚えています。
この日、別の場所に保管されていたカブースを見に行ったときにとった写真が2枚続きます。ベイウィンドウに板が打ち付けられ、屋根にビニールシートがかぶせてあるのは、状態がこれ以上悪くなるのを防ぐためでした。
つぎの5枚は、2007年8月ごろ、カブースが庭に運び込まれてしばらくした後の写真です。この後、塗り替えられ、きれいな姿となっています。上記で紹介したwp668.orgをごらんになってください。
[2012年3月22日追記: Blog引越しに伴い、画像を2枚追加しました。]
最後に、Youtubeに掲載されている、ご夫妻の自宅に庭にカブースが運び込まれるときのビデオを2本紹介します。
これは、氏の自宅からWebカメラで撮影した早送り画像です。
これは、作業の様子を詳細に撮影したものです。
なんとも、いろいろな意味で、アメリカらしいお話です。
こんにちは。
犬釘打ち、お疲れ様でした。
でも、とっても楽しそうで、仲間がいるというのは、本当にすばらしいですね。
4分30秒のあたりで、本職の人が大変な時に、さっと手助けにいくところも、その後、さっといなくなるところも、いいな、と思います。
日本なら、危ないですから、とにかく近づかないでください・・・危ないのはあんたじゃないか・・・と言われて、追い払われてしまいます。
もし、追い払われなかったとしても、今度は手助けした人がいつまでも、うろうろして、仕事の邪魔するし・・・
2分30秒のあたりで、カブースから姿を見せる人、もしかして運搬中ずっとカブースに乗っていたのかしら・・・
書き忘れたこと
gallopinggooseさん:
いつもコメントありがとうございます。そちらのBlogにも書かせていただきましたが、くれぐれもお体をお大事になさってください。
ところで、本文中に書き忘れたことがあります。奥様が家族会員のメンバーがいるという記事を下に書きました。それはこのご夫妻です。
http://northerns484.sakura.ne.jp/blog/?p=146
>もしかして運搬中ずっとカブースに乗っていたのかしら・・・
は、YESだと思います。実はサンノゼ市の許可が下りるまで、このカブースは300メートルくらいしかはなれていない駐車場の空きスペースに置かれていただけですので。
ちなみに、この空きスペースというのが、ちょうどサンノゼ空港(SJC)の滑走路への進入コースの左下にあって、飛行機から「赤い巨大な物体」がよく目立っていたのだそうです。
もしも住宅扱いするならば……
役所的に考えれば、先ず、建築確認でしょうか。それが済んだら、固定資産税、都市計画税……。あるいは消防法なんてものもクリアしなければいけないのでしょうか。
ただし、トレーラーハウスと考えれば、どうなのでしょう。
トレーラーハウスにするには無理があるような
税金の話はよくわからないので、少し脇におきますが、
結局このカブースは建物とみなされ、必要な許可を取って行ったとのことです。まずは、単に庭に置くだけでは、都市計画法の建築物の制限を満たさないので、その例外申請から始めたそうです。
このあたりの経緯は、
http://www.community-newspapers.com/archives/wgresident/20070302/news3.shtml
に記されています。
友人で20年前にヨ5000を……
20年前に国鉄からヨ5000を買って、庭に据えた友人がいます。これを機会に電話をしたら、先日、木製の屋根が落っこちて、修理が大変だったそうです。
で、据えるときに役所に尋ねたら、暗に「聞いてくれるな」的な対応だったので、何もしなかった。レールを敷いたので、移動可能な鉄道車両だという言い訳をするつもりだった。新聞テレビで紹介されても、何も言ってこなかったとのことでした。増築面積が小さいと届け出も何も要らないとは聞いたことがありますが……
まあ、極めて日本的ではあります
ところかわれば、、、
ワークスKさん:
> まあ、極めて日本的ではあります
なんだか、「臭いものには、、、」という言葉が浮かんでしまいました。
まぁ、アメリカの場合は、自宅に置いて万が一事故になったときに、訴訟問題になる可能性があるので、やることはしっかりやっておかないと、という背景もあるのだと思います。
それでも、この一連のプロセスを見ていて感じたのは、皆の意識の根底に、「歴史的な財産を守り、伝えてゆく」という共通理解があるということです。良いほうに解釈しすぎでしょうか。
F’Trackさん、私信コメントありがとうございました
F’Trackさん:
このような形での返信が適切かどうかわかりませんが、コメントありがとうございました。
面白いお話が書かれていたのですが、私信にてということだったので、そのようにさせていただきます。
またいつでもお越しください。