日別アーカイブ: 2009年5月28日

図面を描くということ (3)

勢いとは恐ろしいもので、CADツールが自由に使えるようになると、一通りそれらしい図面ができました。そのうちの一枚が下の図面です。今振り返ると稚拙な図面ですが、これが限界でしたので、いろいろな人の意見を頂くこととしました。

特に参考になったのが、会社の先輩である知人からのコメントです。この方は、神奈川県の最高レベルの技能者に与えられる「卓越技能者」の称号をお持ちで、専門家の立場から、懇切丁寧な指摘をいただきました。要は、徹底的にダメ出しをくらったということなのですが。

まず開口一番言われたのは、「繰り返し作る可能性があるものなのだから、どこの加工業者に持っていっても、図面一式を渡すだけで見積もりしてもらえるものにしなさい」、ということです。

そのためには、図面として最低限の体裁を整えるように、と言われました。具体的には:
(1) 品名、図面番号、縮尺、材質、改版履歴など、必要事項を記入するための図面のフォーマットを決めて、それに描くこと。
(2) すべての図面に図面番号を振ること、そのためには、図面番号の振り方はしっかりと決めておくこと。
(3) 他の図面を参照する場合は、図面番号を明示すること。例えば、組立図には、使用する部品図の図面番号を、部品図中で拡大図を参照する場合は、拡大する範囲と拡大図の図面番号とを明示すること。
(4) 加工に際しての必要な指示は、簡潔な文で記入しておくこと。
(5) 図面の一覧表を作ること。

その上で、わかりやすい図面にすること、を言われました。これにはいろいろな技法があるのでしょうが、今回は
(6) (半)断面図をうまく活用すること、
を言われ、具体的にこうしたらどうか、という例を提示していただきました。

最後に、機械図面で最も重要なのは寸法入れである、ということで、
(7) 今の寸法の入れ方はでたらめなので、もう一度考えて入れなおすこと、
(8) 公差を入れること、
を言われました。

(7)について補足すると、言われたのは、「機能的に重要な意味を持つ寸法を選んで入れるように」ということです。少し考えてもらうとすぐわかると思いますが、下の2つの図面は、「モノを作る」という観点では、意味することが違うということです。

CADツールで簡単に寸法が入れられるのをいいことに、あちこちに寸法を入れていたのが、裏目に出ました。実際にどの寸法が本当に重要かを考えるのは難しい作業でした。指導いただいた知人に、「寸法入れは難しい」と感想を言ったら、「自分が図面を描く時も、いまだに、これでいいのかと自問自答しながら寸法を入れている」との答えが返ってきました。

さて、これらのフィードバックを元に、描き直したのが下の図面です。先ほどの図面に比べるとかなり進歩したことが理解してもらえると思います。ただし、(7)の寸法の入れ方は、試行錯誤の状態で、(8)に至っては、手つかずに近い状態です。ということで、現在の図面の完成度は70%というところでしょうか。とは言っても、これ以上は自分の実力を超えるので、(8)については加工業者の判断を仰ぐという前提で、今回はこれにて完了ということとしました。描きあげた図面は、各種の組立図、部品図、拡大図、併せて25枚となりました。