日別アーカイブ: 2009年5月30日

図面を描くということ (4)

完成した図面をdda40xさんにお渡ししたところで、私の仕事は一区切りつきました。十分チェックを行ったので、あとは何もしなくてもよいはずでしたが、今振り返ってみると、現物ができあがるまでは、なんとも落ち着かない時間を過ごしていたように思います。その分、完成した車輪を見たときの感激はひとしおでした。

さて、今回感じたのは、図面を描くというのはなんと大変なことか、ということです。

以前、畳一畳以上はあろうかという実物のアメリカ型の蒸気機関車の図面の複製(青焼き)を見た時に、よくあれだけの精緻な図面を手書きで短時間で描いたものだと感心したことがあります。CADツールという文明の利器を使って尚、模型の車輪だけを描くのにこれだけ自分が悪戦苦闘したという事実を踏まえると、図面を描くという事の大変さが実感を伴って伝わってきました。

もう一つ、この青焼きの図面を見たときに、「芸術的な図面だなぁ」と感じた記憶があります。しかし、今回の経験で考えたのは、「図面」は工業的にモノを作るための手段である以上、そこで重視されるのは、「正確さ」と「スピード」であり、図面に芸術といった価値観が入り込むなどということはありえないということです。私が芸術的だと感じたのだとしたら、設計者の卓越した才能や技術が、「結果として」図面に入り込んだだけなのだろうと考え直した次第です。当時のAlco、Baldwin、Limaに、いかに優秀な設計者が集まっていたかを物語ると見るのは考えすぎでしょうか。

今回ご指導いただいた知人には、「図面とは、(設計者と製作者との)コミュニケーションの道具である」と言われました。つまりは、図面として守るべき最低限のルールを守るという前提の下、設計者が何を作りたいかが明確であり、それが製作者がわかる形に明確に表現されている図面が描ければ十分だということです。「要はわかってもらえればいいんだよ」という言葉が今でも耳に残っています。

最後に、今回図面を描くに当たって参考にした本をご紹介します。

この2冊組みは図解が豊富で、わかりやすく、参考になりました。今回描いた図面に必要な知識は、part1のみで十分でした。

図面って、どない描くねん!-現場設計者が教えるはじめての機械製図
山田 学
日刊工業新聞社
ISBN: 978-4-8445-2024-5

図面って、どない描くねん! LEVEL2-現場設計者が教えるはじめての幾何公差
山田 学
日刊工業新聞社
ISBN: 978-4-5260-5859-2

これは、いろいろな製図のルールとか、ネジの規格とかを知るのに重宝しました。

JISにもとづく機械設計製図便覧
大西 清
理工学社; 第11版版 (2009/01)
ISBN: 978-4844520245