Bill Brisko氏の3Dプリンタによるロストワックス技法 (1)


O-Scale West2009で、Bill Brisko氏の三次元プリンタによるロストワックス技法のクリニックに参加した、と書きましたが、氏が説明に使ったプレゼンテーションを送ってもらいました。転載許可を頂きましたので、簡単な説明をつけて紹介します。なお、私の専門外の部分も多々ありますので、間違い、説明不足、不適切な用語の使い方が多々あると思われます。お気づきの点は、遠慮なくご指摘ください。



コンピュータ技術の発展
・各種の真空管を使ったコンピュータ - 第二次世界大戦当時
・UNIVAC - 1950年代
・トランジスタの発明 - 1957
・クレイ1スーパーコンピュータ - 1970年代
・ホビーコンピュータ - 1970年代
・IBM PC - 1982


三次元プリンタという技法が可能となったのは、コンピュータの発達があったからこそで、このプレゼンは、コンピュータの歴史から始まっています。以下、いくつか補足を。
真空管を使った黎明期のコンピュータとして、最も有名なのは、ENIACでしょう。
UNIVACは、世界最初の商用のコンピュータです。
・真空管は、要するに白熱電球みたいなものですから、必ず寿命があります(切れます)。トランジスタは、寿命が半永久的で、真空管に比べてはるかに小型にできる、ということで、この後のコンピュータを含めたエレクトロニクス関係の急激な発展を支えてきた基本技術です。
クレイ1は、当時の常識をはるかに超える超高速の科学技術計算を行うことができるコンピュータでした。後述する3次元CADは、膨大な計算を必要としますので、このような高速の計算機によって進歩したといえると思います。当時の価格が500万ドル-800万ドルで、椅子にも見える形をしているので、「世界一高い椅子」とも呼ばれていました。今では、10万円でお釣りの来るパソコンのほうがはるかに高速な計算ができます。
・ホビーコンピュータというのは特定に何かを指すというわけではないのですが、たくさんのトランジスタを1つに集積したLSI技術の発達によって、個人でもコンピュータが持てる様になったということを説明しています。
IBM PCは、われわれが現在使っているパソコンの祖先になります。インテルのプロセッサとマイクロソフトのオペレーティングシステムが採用され、両者がコンピュータの世界を牛耳るようになり、現在に至っています。

コンピュータの歴史という観点では、他にも取り上げるべきものがあると思いますが、それが目的ではないので、ここまでということで。



製図とCAD
・Pencil and Linen – エジプト時代
・鉛筆と模造皮紙(べラム) - 1900年代
・メインフレーム大型コンピュータによるCAD - 1970年代
・CADシステム(AutoCAD) - 1980年代
・ソリッドモデリング - 1990年代
・STLファイルによるデータの出力 - 1990年代後半


続いて、製図に関する技術の発展が説明されています。
・エジプト時代、pencil and linenというのをどう訳してよいかわかりませんが、パピルスとペンと言った方が正しいでしょうか。
・Vellumというのは、辞書を引くと(上質の)羊皮紙という単語が出てきて、なぜ、と思いましたが、よく見ると、最後の方に「模造皮紙」単語を見つけました。これが正確に何を指すのかわかりませんが、製図などに使われ、半透明の紙を指すものと思われます。昔青焼きと言っていた複写を目的としたものです。ということで、とりあえずご容赦ください。
・コンピュータの発達で、コンピュータの力を使って「設計」という作業を行おうと言う動きが出てきました。これをCAD(Computer Aided Design)と呼びます。1970年代は、まだパーソナルコンピュータみたいなものはありませんでしたので、メインフレームと呼ばれる、大型の計算機を、大人数で共有しながら使うことから始まりました。
・1980年代になると、パーソナルコンピュータという商品の出現で、一人一台コンピュータを使うということが現実のものになりました。当然、この上でCADを行おうと考える人がいるわけで、AutoCADのようなパッケージソフトが出てきました。
・当初のCADソフトは、二次元CADが主体でした。手で図面を描くときは、作りたい物体を思い浮かべ、三面図と呼ばれる3方向からの3つの図面に頭の中で変換した上で、「製図」を行います。二次元CADは、このうちの「製図」の作業をコンピュータで置き換えるものでした。
・コンピュータの進化に伴い、三次元CADが登場します。二次元CADでは、手書きの場合と同様に、物体の形状を変更すると、三面図を書き換える必要があります。これに対し、三次元CADでは、頭に思い浮かべた物体の三次元形状を、モデルと呼ばれるデータとしてコンピュータ中に再現します。一旦モデルが構築されてしまえば、三面図を生成することはもちろん、好きな方向から見たときの物体の形状を確認することも可能となります。
・三次元CADのモデルの表現方法にはいくつかの方法がありますが、1990年代になると、ソリッドモデリングと呼ばれる手法が使われるようになりました。
・そして、そのモデリングした情報を交換するためにSTLというフォーマットのファイルが決められ、使われるようになりました。



ソリッドモデリングを行うためのプログラム
・Mechanical Desktop - AutoCAD上のソリッドモデラー
・PTC Pro/Engineer - プロ仕様のグループ向けソリッドモデラーおよびアニメータ
・SolidWorks - プロ仕様の個人向け/グループ向けソリッドモデラーおよびアニメータ


ここでは、ソリッドモデリングを行える三次元CADプログラムが紹介されています。
AutoCADは、上にも書いたとおり、歴史のあるCADプログラムです。このAutoCADで、ソリッドモデリングを行えるようにするオプションがMechanical Desktopのようです。
・PCT社のPro/Engineer
・SolidWorks社のSolidWorks

Bill氏はSolidWorksを使っているとのことです。最終的に三次元プリンタで印刷する際にはSTLファイルを使うので、STLファイルを送れば受け付けるのかと聞いてみましたが、「修正するときのことを考えると、STLファイルでは修正が効かないので、SolidWorksのフォーマットか、IGSフォーマットにしてくれ」と言われました。

さて、お値段を調べてみましたが、いずれも一声100万円という価格で、なおかつ、これを動かすPCもそれなりのスペックのものを要求するようなので、個人で手を出すには(少なくとも私には)無理なようです。

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