日別アーカイブ: 2009年9月21日

SPのクラスP-8(パシフィック)のモデリング (5) – 駆動系の改修

この記事は、Mark Schuzter氏Modeling Espee’s P-8 class Pacificsの5ページめのRebuilding the drivelineを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は、2005年8月28日に作成されました。


駆動系の換装

この模型は1965年に製造されたので、棒型モーターが取り付けられており、取替えが必要であった。よくあるように、固くなったプラスチックのチューブが、モーターと、カツミ製のギアボックスとをつないでいた。これらのすべてを、NWSL[訳注: Webサイトはこちら http://www.nwsl.com]が出しているパーツで置き換え、新しいユニバーサルジョイントを取り付ける。

まずは、もとの駆動系の写真を載せておく:

置換え用のパーツとして選んだのは、NWSLの20mm×30mmのモーターと、28:1のアイドラー無しのギアボックスである。主台枠の中には十分な空間があるため、モジュール0.4の、カツミ製のものよりも大きなギアボックスを、簡単に搭載できる。しかし、バルブギアハンガーのブラケットに接触しないようにするために、ギアボックスの上の角を、少しやすって削る必要があった。

新しいモーターは筒型であり、機関車の主台枠に搭載するには、台が必要である。3/8インチ(9.525mm)×1/2インチ(12.7mm)の真鍮のブロックを、3/4インチ(19.05mm)のボールエンドミルで削って、モーター台を作成した。底に穴をあけ、ネジを切り、もとのモーター固定用のネジを使ってこの台がマウントできるようにした。モーターを台に固定する際、シリコンのゴムを使った。マウント用の穴が上を向くように、モーターを設置した。

これは、私が作った新しいモーターの台の写真である。

私のほかの記事をお読みになったことがあれば、モーターとギアボックスをつなぐのに、ユニバーサルジョイントとトルクアームを使うのが好きであることをご存知であろう。

0.016インチ(0.4064mm)厚[訳注: 原文は0.16インチとなっていますが、0.016インチの誤りと思われます。]の真鍮板から、トルクアームを作った。トルクアームの幅は約0.2インチ(5.08mm)であり、長さは現物合わせで決めた。ギアボックス側には、1.4mmの穴を0.1(2.54mm)インチ幅で2つあけた。これらの穴に合うように、ギアボックスの上に穴を2つあけた。あらかじめタップが切られたモーターの穴に合うように、トルクアームのモーター側に0.1インチ(2.54mm)の穴をあけた。次に私は、内径0.81インチ(2.0574mm)、外径0.097インチ(2.4638mm)の小さなワッシャー状のブッシュを作った。ブッシュの厚さは、0.20インチ(5.08mm)である。このブッシュを、トルクアームの0.1インチ(2.54mm)の穴に嵌め、2ミリのネジでモーターにしっかり固定した。このブッシュは、ネジをしっかり締め付けても、トルクアームが回転するように、設計されている。以前は、段のついたネジを使っていたが、ブッシュのほうが旋盤で作成するのが簡単であり、普通のネジを使うことができる。トルクアームのモータ側は、機関車がカーブを曲がるときに、ギヤボックスが左右動できるように、マウントした位置を中心に回転できるようになっていなければならない。

以下、改修した駆動系の写真を何枚か掲載する。
 

もとのプラスチックのチューブを、NWSLのユニバーサルジョイントで置き換えた。ユニバーサルジョイントは、ギヤボックスの自然な動きを妨げることなく、回転力を伝達することができる。

線路上でのテスト

ここまでの作業が終了した時点で、機関車を線路に置き、新しい駆動系が問題なく走行することを確認した。通常、私は、クォータリングまで含めてすべてをチェックするのであるが、これらの作業は今回の駆動系の改良の前に済ませていた。もしもこれらのステップに興味があれば、私の”Troubleshooting Brass Locomotives”のクリニックのスライドを見て欲しい[訳注: このクリニックは、ここからアクセス可能です。クォータリングの話は、スライド20~23にあります。]。この中にこの機関車が取り上げられている。

新しいモーターとギヤボックスは、低速での発進の性能を大幅に向上させただけでなく、古いギヤボックスで発生していたノイズが消えた。上の写真を見ればわかるように、私はDCCデコーダ(NCE N14SR)を同時に搭載した。

参考までに、この駆動系の構築に使ったパーツをすべてリストアップしておく。

* NWSL 20324-9 20mm x 32mm モーター
* NWSL 241-6 0.4 mod 28:1 ギアボックス
* NWSL 482-6 ユニバーサルジョイント
* NWSL 21142-5 1.4 x 2mm x 0.3 ネジ (ギアボックス側のトルクアーム固定用)
* NWSL 1203-5 2.0 x 3mm x 0.4 ネジ (モーター側のトルクアーム固定用)
* 3/8”(9.525mm) x 1/2″(12.7mm) 真鍮の角材(モーターの台)
* .016”(4.064mm) 真鍮板 (トルクアーム)


補足:

・訳では「棒型モータ」としましたが、英語では”Open Frame Motor”と言うのが通例です。日本語ではモーター全体の形状で棒型と呼ぶのだと思いますが、英語では、”枠(Frame)”に”開放部分がある(Open)”、つまり枠が密閉されていない状態にある、ということでこのような言い方をするのだと思います。

・Mark Schutzer氏の作例で残念なところは、ユニバーサルジョイントの使い方が誤っているところです。すでに本人には指摘済みです。

私が解説するよりは、dda40xさんのBlogに詳しく解説されていますので、ぜひご覧になってください。

等速でつなぐ
再度 ユニヴァーサル・ジョイント
続 再度 ユニヴァーサル・ジョイント

上記には、「アメリカのNWSL製のものは正しい配置になっている。」とあり、取扱説明書にも確かにそのようになっているので、Mark Schutzer氏がなぜこのようなことをしたか、理解に苦しむところではあります。アメリカで最も有名な模型店と言われる、デンバーのCaboosehobbiesが出していブラス機関車の取り扱いに関する技法の紹介記事の中に、「I strongly recommend that these be mounted so that the ears are offset 90 degrees from each other. The ears on the U-Joint balls should NOT be parallel to each other.」というようなくだりがありますので、こんなところが影響していたりするのでしょうか。

・この記事で紹介されているトルクアームは、主台枠とモーターとの位置関係が固定され、モーターとギヤボックスとの位置関係にギヤボックスの左右動の自由度があるのですが、本来的には、モーターとギヤボックスの位置関係を固定し、これらと主台枠との間に位置関係の自由度を持たせるのがあるべき姿だと理解しています。

トルクアームについての解説もdda40xさんのBlogにあります。
トルクアーム

・ここまで触れると、ギヤボックスのギヤ比について触れておく必要があるでしょうか。ギヤボックスは簡単には自作できないので、この場合はどうしようもないのでしょうが、ギヤ比の歯数は「互いに素」でなければならない、というのがdda40xさんのBlogに書かれています。

互いに素

・最後に一言。いろいろ書きましたが、ここで使われているNWSLのパーツ類はロングセラーです。このことは、米国では、駆動系の改修を行っている人が少なからず存在している、ということを示唆していると思います。