鉄橋」カテゴリーアーカイブ

橋を設計する(8)

ガセットを貼った最終的な完成は次のようになります。細部がわかるように、大きめの画像としていますので、ご興味のある方はクリックして拡大してみてください。

参考にした書籍を紹介しておきます。いずれもdda40xさんからお借りしました。


これは、鉄道模型における橋のバイブルとでもいうべき本です。橋の基本や、模型化した作り方が多く載せられています。お借りした本は赤い表紙で、ここに紹介されたものの旧い版と思われます。


悩んでいた路盤の構造は、この本に出ていた一枚の図解が大変参考になりました。

以下のサイトも参考としました。

bridgehunter.com
このサイトは、全米にある橋を記録しようという巨大なサイトで、今回参考にした橋も掲載されています。鉄道の橋だけでなく、道路の橋も含まれているため、検索時に工夫が必要です。

historicbridges.org
このサイトは、名前の通り、歴史的に価値のあると思われる橋を掲載しています。基本としたBlissfieldの橋もこの中に掲載されています。

このほか、Google Stree Viewが役立ちました。本来であれば現地に行かなければならないところ、橋の構造やディテールの解明に役にたちました。インターネット時代ならではの模型作りかもしれない、というようなことを思っています。

橋を設計する(7)

次は橋の側板を構成する部品です。縦の細かいトラスのみ表現し、あとは8ミリの厚板を切り抜いたのみです。実物はすべて細かいトラスの部材が使われていますが、そこまで表現しても組み立てが複雑となり、精度の両面からも不安があるため、模型化ということで単純にしました。

トラスははんだ付けで固定しますが、8ミリの厚板、次に説明する最後の部品については、接着とということとなりました。これは、設計の最終段階で変更した点です。もともと8ミリの厚板にもスリットを設ける設計をしていましたが、厚板に幅の小さなスリットをレーザーであけることはできません、という連絡が加工工場からあったためです。

これらが組み付けられた時点で、次のようになります。

最後に、外側の部品を貼り付けて、

橋の全容が現れます。

この後、ガセットを貼り付ければ、最終的な完成形となります。

 

橋を設計する(6)

路盤が完成したところで、鉄橋の全体を構成してゆきます。各々のパーツにはタブとスリットが切ってあり、レーザーカットでは1/10mmの精度が出せるとのことなので、差し込むだけで位置関係が正確に出るようになっています。また、部品を容易に差し込めるよう、タブは面取りがしてあり、またスリットはタブのサイズよりごくわずか大きめにしてあります。

なお、ここからの図は、部品の配置の関係をわかりやすいように示したものであり、実際の組立順序を示すものではありませんので、ご了承ください。

まずは、鉄橋の全体を構成する部品は次のようになっています。

これらが一体となると、橋の全体像が見え始めます。

次は、橋の天板のトラス構造と左右の柱をつなぐトラス構造です。後者については、立体感を持たせたかったのですが、レーザー加工で立体感を持たせる部品を作るのが困難であり、また、橋の中の構造となるので、シルエットだけ見えればよいかと思い、今回はここでとどめました。

 

組み付けた後です。

門構(ポータル)のトラス構造を組み付けます。橋の2つと中の2つのトラス構造はデザインを変えてあります。本来これらの2つのトラス構造は別々の部品を用意すべきなのですが、今回は簡略して、どちらについてもXを構成する部分については同じ部品で構成するようにしました。

ここまでの部品が構成された状態が下記となります。

余談ですが、この橋の奥に位置する門構部分のアイソメトリック図を描くのは非常に大変でした。一度すべての部品を同一のレイヤー上において作図し始めたのですが、途中から部品の上下関係がこんがらがってしまい、放棄しました。結果、すべての部品を異なるレイヤーに置き、特定の2つの部品のみを表示し、その上下関係に注目し不要な線を消してゆくという作業を丹念に行いました。従って、まだ間違いが潜んでいるものと思われます。

そうはいっても、実感的な図ができ、個人的には満足しています。本来は強力な3D-CADがあれば簡単なのでしょうが、あいにくとそれだけの投資をする余力もなく。。。

 

橋を設計する(5)

基本寸法が決まった後、部品の図面を描いては調整を行う、ということを繰り返してゆきました。その経過を細かく説明てもあまり有用とは思えませんし、そもそも言葉では伝えにくいと思いますので、アイソメトリック図でどういう橋を設計したかを紹介したいと思います。

まず路盤は、お菓子の箱の仕切りに見られるような構造としました。下記の部品を組み合わせて、

次のような構造を作ります。効率よくかつ直角が正しく出るように、レーザーカットして作成した部品の空いたスペースに、治具を作成しておきました。

この路盤の構造がよくわからずにかなりの期間悩んでいたのですが、参考となる資料を見つけ、簡単なトラス構造を表現することとし、下記のような部品を組み立てることとしました。この解像度ではわかりにくいかもしれませんが、仕切りには突起を用意しておき、これらの突起を使って簡単に位置決めできるように、各部品の端に切れ込みを入れておきました。

ここまで組み立てると、次のような構造が出来上がります。橋の側板とつなげる肩の張り出しは、実部ではカーブを描いていたりしているのですが、レーザーカットで単純に組み立てられるように簡素化しました。

 

橋を設計する(4)

橋の基本寸法を決めた後、建築限界を作図しました。この橋はR2800とR2900の複線なので、それを考慮した建築限界を決める必要があります。専門的にはいろいろ方法はあるのかもしれませんが、私は単純に、下図のC-C’の建築限界とA-A’での建築限界を足し合わせたものを使う、という問題に置き換えました。

まずは、下のような図を描きました。これはNMRAの標準S-7に記載されているOld Time、Classic Time、Modern TimeのうちのClassic Timeに従ったものですが、dda40xさんより、高さは145mmとしてほしいとのリクエストがあり、その分を加味しました。

カントを加味すると、次のようになります。

C-C’の建築限界は、上記の限界の中心を、複線の中心に置いたものとなります。

A-A’の建築限界は、線路の中心をOとすると、C-O-Aのなす角度の余弦(コサイン)だけ幅をちぢめたものとなります。ただ、これはごくわずかですので、上記の限界をそのまま置いても問題ないと思います。

これらを合わせたものは、下図のようになります。青い線がC-C’における建築限界、黒い線がA-A’に対応する建築限界となります。

これに適合するように、設計を進めました。

 

橋を設計する(3)

まず最初に橋の基本寸法を決める必要があります。レイアウト上で確保可能なのは長さ600mmを超えたくらいでしたが、なるべく長さをとりたかったので、現地で確認して、最終的に670mmとしました。

高さを決めるのが一苦労でした。下図のように、建築限界の上下の構造を考慮した高さを設定する必要があります。

まず、路盤の高さは橋の強度を決めますので、一定の高さの確保が必要となります。また、プロトタイプとして選んだBlissfieldの橋を始めとしたこの時代の橋の多くが、複雑なトラス構造の門構となっており、一つの見せ場にもなるので、ぜひ再現したいと考えました。ややわかりにくいですが、下記のストリートビューから、門構の構造が見えます。

単純に路盤の高さ、上部の構造の高さを確保すると、橋全体が高くなってしまいます、こうなると、斜めの部材(斜材)の角度が大きくなり、全体につんのめったような印象になってしまいます。アメリカ型のメインラインの機関車が疾走するレイアウトですから、雄大な印象を与える橋にしようと意図していましたので、これは避けたいと思いました。

上に3種類の角度で描いてみました。最初に参考にしたC&Sの橋は、50°を切るくらいで、どっしりと落ち着いた印象があります。60°では、いかにもバランスが悪そうです。55°でも若干高い印象がありますが、まぁ、50°の橋と同時に見比べなければ、そんなに目立たないかと思い、この角度に収めるように路盤の高さと門構の高さとを設定することとしました。

参考としたBlissfieldの橋の上記のStreet Viewに見える通り、幸いにというべきか、縦の部分のガセットが下に延びています。これは、路盤の高さを稼ぎつつ、なるべく下に位置させたいと考えたのではないかと推測し、見た目上もアクセントとなるため、このデザインを採用することとしました

橋を設計する(2)

前回ご紹介したC&Sの橋を参考に手探りで設計を始めましたが、まずレイアウトの制約上80cmの長さは取れないということがわかりました。C&Sの橋は、縦の長い柱が5本ある、6パネル構成ですが、パネル数を減らす必要があります。

4パネルにしてしまうと迫力に欠けるのですが、5パネルという構成のBaltimore Trussの橋が実際にあるのだろうか、ということを考えていたところ、dda40xさんから、ミシガン州のBlissfieldという街にある橋を見つけてくださいました。

これとは別に、N&Wの本拠地であったバージニア州のRoanokeにある橋を見つけました。この角度のストリートビューは、上部の構造がよくわかり、随分と参考となりました。

これら3つの橋を比べつつ、最終的にBlissfieldの橋のデザインを基本とした橋を設計することとしました。

橋を設計する(1)

dda40xさんの建設中のレイアウトのお手伝いをさせていただいています。レイアウトの立体交差部分にかかるトラス橋がようやく形になりつつあります。その設計の顛末を書いておきたいと思います。

鉄道車両の場合、設計図をもとに同じものを作ればよいですが、架ける場所の条件がそれぞれに異なる橋の場合、一つ一つ個別の設計をするというのが通例と思われます。また、Oスケールとなると、機関車の質量が無視できませんので、見た目より強度を優先する必要があります。当然のことながら、特定のプロトタイプを縮尺した模型を作るのではなく、様々な事例を参考にしつつ、オリジナルの橋を設計することとしました。橋に関する詳しい知識はほぼゼロでしたから、参考書をひっくり返したり、かなり苦労をしました。特に底の構造がよくわからず、ガード下でしばらく上を見ながらあれこれ考えていたこともありました。傍から見ると怪しい人に見えたに違いありません。

最初に参考としようとしたのは、シャイアンにある、Colorad & Southern(現在はBNSF?)の橋です。Baltimore Trussというタイプの、雄大な橋です。

これは、Flickrに投稿された、写真です。

C&S bridge - Cheyenne

ここはrailfunningに適したスポットのようで、多くの動画も投稿されています。

まず最初に橋の大きさを調べる必要があります。車両と異なり、橋に関するまとまった資料があるということは聞いたことがなく、特に図面など望むべくもないので、Google Mapsの距離の測定機能で、この橋の長さを推定することし、1/48で80cm程度という結果を得ました。後日、Overland Modelsがこの橋を製品化したことがあるということを知ったのですが(OMI-3382)、それによるとこの橋は126フィート(約38.4メートル)とあり、1/48では800.1mmとなります。あまりにぴったり一致してびっくりしました。Google Maps恐るべし、といったところでしょうか。

このほか、上記のFlickrの写真が機関車をほぼ真横からとらえていますので、この機関車の型式・諸元を調べ、縦方向のざっくりした寸法を割り出し、詳細の設計に入りました。