月別アーカイブ: 2009年11月

SPのキャブフォワードAC11のレストア (5) – バランスをとる –

この記事は、Mark Schuzter氏Espee’s Cab Forwardsの5ページめのBalancing and Weightingを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2009年4月25日に作成されました。


バランスをとり、補重する

ほとんどの連接型の機関車の模型は、重量配分が適切ではないため、最高の牽引力を持つ機関車というわけではない。通常、おもりが前方の動輪を中心に配置されるため、後方の動輪にはあまり多くの牽引力がかからない。アカネの模型も、ボイラーのおもりが前方の動輪を中心としているため、この点に関しては例外でない。[訳注:ここでの前方、後方は、キャブフォワードでの議論となっています。通常の連接機では、前後を入れ替えて読む必要があります。]

後方の動輪は、非常に弱いばねつきの受け具を介して重量がかかっているに過ぎないため、動輪が線路からはずれないようにするための重量を伝えているだけにすぎない。このばねは、非常に弱いので、牽引力をかける効果はない。以下、後方の動輪のためのばねのついた受け具の写真である。

後方の動輪への重量の配分を改善するために、機関車の後ろ半分にいくつかの修正を行った。アカネの主台枠は、U型のチャネルなので、ウェイトを追加するには都合の良い空間がある。この空間はそれほど大きくはないものの、数オンス(100g前後)のおもりを入れることができる。これは、フレームに追加したおもりの写真である。

ボイラーからの重量を受けるばねつきの受け具は一つしかないため、かけられる重量には制約がある。更に、機関車の後ろ半分は、カーブを曲がるときに間接のように曲がらなければならない。そこで、数オンス(100g前後)のおもりを作り、ばねつきの受け具の真上に設置することで妥協した。これは、もともとのおもりとばねつきの受け具の上の新たに加えるおもりの写真である。

機関車のバランスを正しく保つために、ボールペンの部品を再利用し、受け具のスプリングをより強いものに取り替えた。スプリングを正しく調整するために、新しいおもりを受け具の上に置いたときに、受け具が正しい高さになるようにスプリングの長さを決め、切断した。受け具の頭部の磨耗を緩和するために、デルリンの小さなキャップを作った。デルリンは、自己潤滑機能のある素材であり、元の設計のブラスの頭部よりは、滑らかにすべるものである。デルリンが磨り減ったら、新しいキャップを作ればよい。これは、キャップの拡大写真である。

以下は、新しいスプリングを装着したスプリングの支持脚である。


SPのキャブフォワードAC11のレストア (4) – 駆動系の改修 –

この記事は、Mark Schuzter氏Espee’s Cab Forwardsの4ページめのRebuilding the drive trainを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2009年4月19日に作成されました。


駆動系の改修

元の状態では、2台の模型のいずれもが、古い棒型モーターと、密閉されていないギアボックスを使った駆動軸を備えていた。機関車の連接部で駆動軸を繋いでいたのは、プラスチックのチューブであった。やかましい金属製ユニバーサルジョイントがモーターと駆動軸とを繋いでいた。下の写真は、当初の機関車の駆動系の状態を示すものである。

金属製のユニバーサルジョイントとオープン型のギアボックスとが原因で、元の状態の機関車は非常にやかましかった。機関車の性能を改善するには、駆動軸全体を取り換える必要があった。

この機関車は、私の経験したギアの入れ替えのプロジェクトの中で、最も難度の高いものとなった。ほとんどの機関車の模型とは異なり、アカネの主台枠は、単純な真鍮のU型のチャネルから作られていた。フレームには、ギヤの軸が飛び出す分だけの狭い溝が切られていた。ウォームギヤの両端に固定されたブラスのベアリングが、ウォームギヤと駆動系を正しい位置に保持していた。もとの動輪のギアは、歯の数が37で、モジュールは0.4であった。

新しく置き換え用に使うNWSL製のギアボックスは、モジュールが0.4でギア比が28:1である。低いギア比は、置き換え用の20mm径の低速の缶モーターとよく適合する。28枚の歯のギアは、もともとの37枚の歯のギアよりも小さいので、駆動軸の新しい位置は[訳注:前の駆動軸よりも低い位置になるので]主台枠に近くなる。新しい位置では、主台枠と駆動軸の底との間には25ミル(0.64ミリ)しかのクリアランスしかない。この低い位置のため、新しいユニバーサルジョイントをクリアするために、フレームを削る必要があった。ギアボックスのクリアランスを供給するために、フレームと底の押さえ板の両方をミリングする必要があった。

以下の写真は、新しい駆動軸の部品に必要な修正を示すものである。

上の写真の青い矢印は、修正を施した主台枠の位置を示すものである。主台枠上に固定されるバルブギアのハンガーとのクリアランスを設けるために、ギアボックスの片側を欠き取る必要があった。このギアボックスを、少し後ろに落とし込んでから前に動かしバルブギアハンガーの下に[訳注: 所定位置に]動かすことができるように、主台枠の開口部を大きくする必要があった。

もとの設計の可動しない固定されたベアリングの代わりに、各々のギアボックスに、可動するベアリングを1つずつ作った。これらのベアリングは駆動軸を適切な位置に保持するためのトルクアームとしても機能する。小さなワッシャーと1.4ミリのねじとでベアリングを主台枠に固定したが、ベアリングが固定する穴を中心に自由に回転できるようにクリアランスを設定した。機関車がカーブを曲がるときには、車輪が主台枠の中で左右に移動しがちである。車輪の動きにあわせてギアボックスが前後に自由に動くように、ベアリングが回転するように作ったものである。車輪が左右に動くのにあわせて、ユニバーサルジョイントが、長手方向の駆動軸のわずかな回転を打ち消すようになっている。

取り付け用のワッシャーを組み付けた状態のベアリングの一方の拡大写真を載せる。

上の写真は、主台枠と駆動軸とがどれだけ近いかを良く示している。シャフトの材料は、直径2.4ミリつまり94.5ミルである。写真から、主台枠が来る位置までのクリアランスが、シャフトの太さの1/4程度しかないことがわかる。左側にあるユニバーサルジョイントが、主台枠の上面の位置まで伸びていることにも注目してほしい。この写真から、ユニバーサルジョイントをクリアするために、なぜフレームをエンドミルで削らなければならなかったかが明らかである。

以下は、駆動軸の位置が下がったことでそのほかに必要となった修正を示すものである。

左側の赤い矢印の部分は、ドライブシャフトのクリアランスを稼ぐために、0.01インチ(0.254ミリ)のミリングを行ったバルブギアハンガーを示すものである。ギアボックスの欠き取りが、ハンガーの後ろにぴったりとあうことにも注目してほしい。右側の矢印の部分でも、シリンダーブロックの後ろ側をクリアするように削らなければならなかった。

この写真は、新しいモーターとフライホイールとを示すものである。

モーターを固定する台は、1/2インチ(12.7mm)×3/8インチ(9.25mm)の真鍮の棒から作成した。台の上には、3/4インチ(19.05mm)のボールエンドミルでモーターの受けを削りだした。モーターを正しい角度で設置するように、台を斜めにカットした。マウントの底には、2mm×0.4のネジ穴を2つタップした。これらの2本のネジで、モーターの台を主台枠へ固定するとともに、簡単に取り外しできるようにしている。モーターは粘性のあるシリコンゴムで固定している。この状態で、空いた空間に適合するような、テーパーつきのフライホイールも作成した。

この写真は、古い駆動系と新しい駆動系とをよく比べることができる。

写真を見ればわかるとおり、駆動軸の前後のセクションを繋ぐために、NWSLのユニバーサルジョイントを使った。

これは、新しい駆動系を備えた2台の機関車を示す写真である。

参照のために、各々の駆動系に使われたパーツのリストを掲載しておく。

* NWSL 20324-9 20mm x 32mm のモーター
* NWSL 241-6 モジュール0.4の、28:1のギヤボックス(2ヶ)
* NWSL 482-6 ユニバーサルジョイント
* NWSL 484-6 ユニバーサルジョイント
* NWSL 21142-5 1.4mm x 2mm x .3 のネジ (2ヶ、ベアリングをとめるネジ)
* NWSL 1203-5 2.0mm x 3mm x .4 のネジ (2ヶ、モーター台をとめるネジ)
* NWSL 2020-4 2.0mm の線材 (駆動軸)
* NWSL 2024-4 2.4mm の線材 (駆動軸)
* 3/8” x 1/2″ (9.25mm×12.7mm)の真鍮角材 (モーター台)
* 3/4” (19.05mm)の真鍮丸棒 (フライホィール)


補足

・ユニバーサルジョイントの正しい使い方については、こちらの記事に書きましたので、ご覧になってください。

・今回の作例では、ユニバーサルジョイントを使って駆動軸を折り曲げていますが、この場合、2つの角度は同じであることが必要です。

・ベアリングのところの説明がわかりにくいかと思ったので、横からみた断面図を描いてみました。

SPのキャブフォワードAC11のレストア (3) – 最初の一歩 –

この記事は、Mark Schuzter氏Espee’s Cab Forwardsの3ページめのFirst Stepsを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2009年4月19日に作成されました。


最初の第一歩

修理やアップグレードを行う前に、まずは模型を綺麗な真鍮の状態にもどす必要があった。私が最初に行ったことは、すべてのものを分解し、Jascoの塗装剥離剤を使って古い塗料を剥がすことであった。Jascoは、塗装だけでなくエポキシの剥離剤としても働くことがわかった。というのは、長年の間に緩んだ一部のパーツは、エポキシで元の場所に接着されていたからである。当然のこととして、塗装を剥離する途中で、これらのパーツは落下していった。

塗装を剥がし終わった行った後で、すべてのものにサンドブラストをかけ、真鍮の色が変色(tarnish)したところと、最後まで残った塗料とを取り除いた。以下、塗装を剥がした状態の模型のうちの一台の写真を掲載する。これらの写真は、サンドブラストをかける前に撮影したものである。

機関士側から見たところ

機関助士側から見たところ

煙室の前とテンダーのステップ

これらの写真は、作業開始時の状態を参照するのにも役にたつ。後に、これらの写真を、ディテールアップした後の写真と比較しようと思う。


SPのキャブフォワードAC11のレストア (2) – キャブフォワードの模型 –

この記事は、Mark Schuzter氏Espee’s Cab Forwardsの2ページめのThe Cab Forward modelsを訳したものです。訳にあたっては、Mark Schutzer氏の許可を得ており、元記事、写真については、特記ない限りMark Schutzer氏に著作権があります。誤訳、不適切な訳、その他気づいたことがあれば、遠慮なくご指摘ください。詳細は、こちらの目次をご覧になってください。

なお、元記事は2009年4月19日に作成されました。


キャブフォワードの模型

これらの2台の模型は、1960年代に輸入された日本製のブラスの模型である。いずれも、アカネによって製造されたもので、AC-10からAC-12シリーズのキャブフォワードのどれにでも仕立てることができる。これらの模型は60年代の初めに製造されたため、今日の標準で言えば、ディテールは大雑把である。ハンドレールやパイピングの多くがオーバースケールであり、多くのディテールは簡単な真鍮の挽きものである。

ディテールはさっぱりしているものの、アカネのキャブフォワードは走行性能がすばらしいという評判を得ている。実際、私がこれらの模型を入手した時点でも、かなりよく走ったのだが、開放型のギヤボックスにありがちなように、非常にうるさかった。一方で、アカネの模型は戦車のように作られていて、厚手の真鍮を使って、がっちりと組み立てられており、走らせても壊れる心配をしなくてもよい模型に仕上がっている。

私はこれらの模型を、資産の整理の一環として入手した。これらの模型は長時間の走行を経ており、多くのパーツが緩んだり、落下し始めていた。私はこの模型の状態を、Fairと評するだろう。これらの模型は、明らかに経年変化でヤレが見え始めていたが、パーツが緩んでいた以外は、物理的なダメージはなかった。

模型を入手した時点の状態を示す写真を何枚か掲載する。


補足
・資産の処分(estate sale)という用語については、こちらの記事で補足を書きましたので、ご覧ください。
・「状態はFair」という記述がありますが、これは評価の体系の指標の一つです。一般的には、Excellent – Good – Fair – Poorという順番なので、下から数えたほうが早いと考えたほうが良いです。eBayでは、更に細かく、次の10段階が定義されています。
C10 – Mint, Brand New (完全に未使用)
C9 – Factory New, Brand New
C8 – Like New
C7 – Excellent
C6 – Very Good
C5 – Good
C4 – Fair
C3 – Poor
C2 – Restoration Required
C1 – Junk, Parts Value Only
どうしても主観が入るので、結局は自分の目で確かめて納得することが必要なのは、言うまでもありません。