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執念 (2)

お久しぶりです。前回記事からまたまた2ヶ月近くあいてしまいました。国内外への出張が続き、blogを書く時間がなかなかとれなかったというのもありますが、一回ペースが乱れるとなかなか元にもどすのが大変ですね。

さて、前回は、Ed King氏のN&WのAクラスの本の改訂版の話題を書きましたが、この記事を書いたのには伏線があります。

ちょうど、Ed King氏の本を購入したのとほぼ同時に、ということは1994ごろですが、Lewis Jeffries氏のまとめられた”N&W: Giants of Steam”という本を購入しました。Ed King氏の本がAクラス(2-6-6-4)に集中しているのに対し、この本はN&Wの蒸気を形式ごとに網羅した本で、N&Wの機関車の全体像を知るには最適の本です。

で、ご存知の方も多いと思いますが、2005年の終わりから2006年のはじめごろ、この本も改訂版が出ました。

N&W: Giant of Steam
Colonel Lewis Ingles Jeffries
ISBN: 0-9704794-5-x
The Norfolk and Western Historical Society, Inc.

改訂内容は、以下にありますが、「1) 新しい写真、2) (機関車)運用の方針を詳しく、3) 機関車の変化を詳しく、4)蒸気機関車に使ったテンダーの効果、5) N&Wの前身の会社の機関車等に関する章を追加、6) ディーゼルの章を大幅に拡充」とあります。

New to the revised edition are dozens of new photographs, greater coverage about the operating policies and conditions, increased coverage of changes to each class of power and individual locomotives, the effect of tenders used with it steam power, a new chapter about the N&W’s predecessor and non-standard classes of power and a greatly expanded chapter on diesels.

実際に初版と改訂版とを比べて見ると、例えば、クラスJ(4-8-4)の章では、特急ポワタン・アロー号(Powhattan Arrow)号の写真や当時のパンフレットがカラーになっている点が変わっています。全体のページ数でみると、333ページから350ページに増えているだけですので、そんなに増えたようには見えませんが、驚くべきは、調査のためにインタビューした人の数や参考とした資料の数が、39から129と、倍以上になっていることです。それだけ、綿密な調査・検証をこつこつと行ったと見てよいのではないでしょうか。

さて、初版が出たのが1980年で、改訂版の出版が2005年とありますので、なんと25年!を経て改訂されたことになります。著者のJefferies氏はずっと陸軍にお勤めだったそうですが、初版では少佐(Major)の肩書きで、ヘルメットをかぶって双眼鏡を手にした現役軍人のいでたちで紹介されていますが、改訂版では退役時の肩書きの大佐(Colonel)で、クラスA-1218の前でタイ姿の写真で紹介されているのが、時の経過を物語っているようです。

改めて「はじめに(Prologue)」や「謝辞(Acknowlegements)」の章の著者の言葉を見ると、いかにJefferies氏がN&Wに惚れ込んで、自分がその記録を出したいと思っているかが伝わっているような言葉を見ることができます。

N&W steam is a story that must be told — N&Wの蒸気の物語は、語り継いでゆかなければならないものである。(著者がN&Wの歴史にかかわるようになって思ったこと)

… the main intention of the author is to put on record what this extraordinary railroad accomplished. … This book, then, is a tribute to these N&W men “of vision and of accomplishment.” — 著者の意図は、この並外れてすばらしい鉄道(N&W)が成し遂げたことを記録することである。 … この本は、ビジョンを持ちつつ偉業をなしとげたN&Wの人々に贈るものである。(この本の楽しみ方について記した部分にて)

こういう思いを初版出版後25年継続して改訂版を出したということは、これもやはり執念と呼ぶべきものでしょう。

執念

私は『ナントカは風邪をひかない』という典型例のようで、ここ何年も風邪とは無縁だったのですが、先々週の出張の帰路で熱っぽくなり、喉の調子もおかしくなり、時差ぼけもあって、帰国後そのまま週末寝込んでしまいました。

ということで、ここのところ目指してきた週一回の投稿があえなく途切れてしまいました。このままずるずるとゆくと、また半年以上ほったらかすことになってしまうと思われるので、軽い内容から復活してゆきたいと思います。

さて、前にも書いたのですが、Jクラス(4-8-4)から始まってN&W全体に興味が広がっていったという経緯で、Ed Kingの”The A: Norfolk & Western’s Mercdes of Steam”という本を買いました。確か1994年ごろだったと思います。

King氏のクラスAに対する思いを感じることのできる良書で、例えば一つの章を割いて、他鉄道の機関車(Allegheny、Bigboy、など)に比べてクラスAがいかに優れているかをKing氏なりの根拠で論じています。ただ、このように対象を絞った本だと、購入する人は限られていると見るべきで、1991年初版発行後、増刷されたということは聞いていません。amazon.comで探しても、200ドル以上のプレミアがついているようです。

ところが、先日N&W Historical Societyのホームページを見ていたら、この本の改訂版が出るとアナウンスされているのを見つけてびっくりしました。改訂内容は下記のとおりですが、かいつまんで言うと、「1) 初版後得られた情報の追加、2) 折込の図面の追加、3)写真の追加、によって初版に比べて大幅に内容を拡充した」、とあります。更に付録にN&Wのテンダーの話と、PennsylvaniaのQ-2(4-4-6-4 Duplex)のテストの話が追加されるともあります。

The original book about this most productive of locomotives has been greatly expanded to include much information not available to the author at the first writing, plus a foldout featuring side elevation drawings of the locomotive and the various tenders it pulled, plus many more photographs (color & B/W). Appendices covering N&W’s tenders and the testing of Pennsy Q2 4-4-6-4 conducted on the Scioto Division in August, 1948.

発売は秋になるようで、今から楽しみにしていますが、それにしても、17年前に出した本を改訂しようという意欲には恐れ入るばかりです。ここまで来ると執念と言うべきでしょうか。

出張での買い物 (1)

日本に戻ってきてもうすぐ2年になりますが、戻ってくる前に、アメリカ型を楽しむのにどういう不都合があるか、ということをいろいろと想像していました。もちろん、クラブのレイアウトでガンガン走らせることができなくなる、というのが第一番で、これはこのとおりなのですが、それを除くと、実は一番困っているのは本を買うのが不便なことです。

入手性という意味では、日本にいることで著しい不都合があるわけではありません。西山洋書まで出かけて行きさえすれば豊富な在庫がありますし、インターネットを使えば米国から直接購入することも簡単です。ただ、私が本を買う時は、「気の向いたときにふらっと出かけて」、「目に付いた本を手にとってぱらぱらとめくって」、本を選ぶというスタイルをとっています。ずいぶん前にご紹介したP&LEのBerkshireの本NYCの本なども、こうやって見つけたものです。

模型の場合も、実物を見るまでは納得できないというのは一緒ですが、それでも、インターネット上にあふれ出てくる写真や紹介記事などを総合すれば、その模型に対する自分なりのイメージを事前にかなり正確に作り上げることが可能です。

ところが本の場合、インターネット上に書評が出たとしても、内容まで見ることが出来ません。印刷の質なども実際に手にとって見ないとわかりません。予算や置き場所に制約のある私の場合、良い本であっても自分の持っている本との内容の重複を考えてパスする、ということも多々ありますし、逆に、他の内容はどうでもいいけれど未発表の数枚の写真のために買うこともない訳ではありません。

ということで、出張で米国に行く際、空き時間に模型屋さんを覗く時は、何か新しい本がないかを探すのが一番の楽しみになっています。

前置きが長くなりましたが、今回はHundman Publishingの新作を買ってきました。

Norfolk & Western …Steam’s Last Stand
Mallory Hope Ferrell
Hundman Publishing
ISBN: 978-0-945434-60-3

N&Wといえば、Jクラス(4-8-4)が有名です。どの鉄道の4-8-4も、蒸気機関車の技術を集大成して作られおり、甲乙つけがたいのですが、人気投票を行なったならばN&WのJクラスは間違いなく上位に入ってきます。当初私はJクラスという機関車に興味があっただけなのですが、いろいろと本を読んでいるうちに、この鉄道の蒸気機関車の設計思想、技術力の高さ、更に言えば会社の経営方針の奥の深さを知ることとなり、今ではこの鉄道全体が興味の対象になっています。

この本は、N&Wの最後の15年の蒸気機関車の最後の活躍を写真集にしたものですが、私の知る限り未発表の写真が多く収められています。また、今までMainline Molderに発表された図面も収録されていて、お得度は高いと思います。

古川さんの本を買ってきました

これも先日の米国出張の時の話ですが、古川亨さんの本を買ってきました。

Cumbres & Toltec
A photographic tribute to America’s most spectacular scenic railway
ISBN: 978-0-9790113-0-6

趣味の興味の対象を広げると際限なくなるので、ナローには興味を持たないことに決めているのですが、何よりも日本の趣味人がこれだけの本を出したということ、実際本をぱらぱら見て、そのすばらしい写真に感銘を受け、気がつくとレジに向かっていました。

さて、一つ嬉しかったことがあるので、ご紹介します。

代金を支払おうとお店のご主人と雑談をしていた時のことです。見知らぬお客さんが目ざとくこの本を見つけ、「これはいい本だよねぇ、ナローのコミュニティーですごい評判になっているんだよ」、とちょっぴり興奮したような様子で私に話しかけてきました。

私が「いや、この著者のSam Furukawaは日本人で、マイクロソフトで云々」というようなことを説明したところ、このお客さんはびっくりされていました。著者のことをよく知らないということは、裏を返せば、純粋にこの本の出来が評価されている、と言えるのではないでしょうか。一人の日本人として鼻の高い思いをしました。

Rio Grande系のナローに興味のある方に限らず、アメリカの鉄道に興味のある方に、広くお勧めできる良書だと思います。

Kalmbach社のThe DCC Guide

写真は、Kalmbachからの最新刊で

The DCC Guide
How to select and use your command control system

というDCCの入門書です(ISBN 978-0-89024-676-4)。これも先日出張したときに手に入れてきました。全く読む暇がないのではありますが、写真や図が豊富に使われており、なかなか良い印象です。残念ながら、現時点ではamazon.co.jpでの取り扱いは未だのようです。

さて、この本を買うきっかけとなったのは、私の所属していたクラブが紹介されることになっていたからで、メーリングリストで、「皆、出たら忘れずに必ず買うんだぞぉ」みたいなメールが流れていました。

第10章の「Operating with DCC」に、クラブのレイアウトでの運転の様子、列車の運行制御を手動で行っている様子、の2枚の写真が掲載されています(下記写真をごらんください)。

この運行制御ですが、将来的には、コンピュータでできるようにして、更にインターネット経由でも制御できるようにしよう、というような話もあります。ですので、「日本からインターネットでの制御にチャレンジしよう」みたいなことも言われていますが、いつの日になるでしょうか。。。

ちなみに、この著者のDon Fiehmannという方は、クラブのメンバーと親交が深く、一度一緒にLunchに、と誘われてはいるのですが、出張ベースだとなかなか時間が合わず、まだ果たせていません。

さて、お正月休みも終わり、本日から仕事です。また投稿のペースががくっと落ちると思いますが、お付き合いの程よろしくお願いします。

Northern Pacificで使われていた石炭


ワークスKさんから、Northern Pacificは本当にligniteを使っていたのか、というご質問を頂きましたので、資料をひっくり返して見ました。

以下は、1980年代前半にThomas Dresslerが著し、N J Internationalから刊行された”The First Northerns – Northern Pacific A Class 4-8-4”の冒頭に書かれている情報を抜粋したものです。

・NPの機関車に使われていた石炭は、モンタナ州Forsyth近くの、NPの本線の近くの会社の所有地で、露天掘りで採掘していた。

・石炭は廉価であったが、質は高くなく、Rosebudという名前で知られていたlignite(亜炭)であり、25%の水分(moisture)と9%の灰(ash)を含んでいた。

・BTU(British Thermal Unit:熱量の単位)は、1ポンドあたり8750しかなく、他の大部分の鉄道で利用されていた石炭のBTU値をはるかに下回っていた。

・炭鉱の立地条件、およびコストの面で、NPはこの石炭を燃料として使うことにし、1920年代中ごろ以降のNPの機関車は、この石炭を燃やすように設計されていた。

ちなみに、Rosebudというのは、上記Forsyth Cityの隣のCityの名前であり、またこの一帯の地域(County)の名称でもあります。

さて、この本ですが、出されてすぐのころに購入したものです。NPの4-8-4について非常によくまとめられた本です。今でも探せば入手できるのでしょうか(ISBN 0-934088-03-9)。表紙の写真を載せておきます。

Locomotive Quarterly

Locomotive Quarterlyという、Metaphorという出版社が出している季刊の雑誌があります。蒸気機関車を中心とした(蒸気機関車だけだったと思いますが)、大きな写真をレイアウトした記事で構成されています。時々、面白い記事があると買っています。

たまに、表紙のすばらしい絵に惹かれて買ってしまうこともあります。今回もそのパターンで購入してしまいました。最新号の表紙は、Rock IslandのR-67 4-8-4です。

R-67と言えば、ピンと来た人もいるかと思いますが、もともとChallenger Importsが、出すぞ、と予告していたものの、Challenger Importsが、業務の休止を発表して一時期宙に浮いていたものです。幸い、Division Pointがプロジェクトを引き継いだようですので、良い模型として出てくるものと思っています。

とはいえ、これは、4-8-4としては、どっちかというと地味ですよね。Challengerがこれを発表したときに、「今までで初めての製品化で、満を持してリリースする」というようなことを書いていたと思うのですが、もっとメジャーなものを出さないのかなぁ、と思ったものでした。

きっと出来上がった模型を見ると、その認識が覆されるのだろうと、期待していますが、そういう思いを強くさせてくれる表紙の絵でした。

本の紹介 – New York Central Along The Hudson

昨日、P&LEの本を出している、KahnDog Publicationsを紹介しました。他にも、メジャーではない(と思う)のですが、きらりと光る本を出している出版社がありますので、適宜紹介してゆきたいと思います。

今日ご紹介するのは、The Railroad Pressです。ホームページは、

http://www.alco628.com/

となっています。いろいろな本を出しているようですが、私の目にとまったのは、New York Central Power Along the Hudsonというシリーズです。2分冊で、NYCの全盛期のHudson、Mohawk、Niagara、Diesel、の大きな良質な写真が含まれています。

ざっと見た限りで、私の記憶の範囲では、今まで未発表の写真が多いような気がしました。また、おのおの48ページで、何より手ごろな値段だったので(定価18.95ドル)、思わず買ってしまいました。

ところで、NYCの写真集って、良いものが少ないような気がするのですが、どうなんでしょうか?単に私の勉強不足?それとも私が個人的に気に入らないだけ?

(追記: 本の写真を追加しました)

Monte Vista Publishingの新シリーズ

Monte Vista Publishingという出版社があります。Southern Pacificを中心として、蒸気機関車の写真集を出しています。A4サイズで、1ページに大きな写真を1枚レイアウトしていて、価格も25ドル前後で手ごろなので、よく買っています。

日本でも西山洋書などが取り扱っていますので、ご存知の方も多いことと思います。

今まで、Southern Pacificの写真集が40冊、Santa Feの写真集が9冊出ています。今回、これに加え、Rio Grande(Denver & Rio Grande Western)の写真集が追加されました。一冊目は、標準軌の2-8-8-2(L-95, L-96, L-107, L-131, L-132)です。Rio Grandeといえば、ナローゲージが有名ですが、標準軌の機関車にもすばらしいものが多く、私にとっては思わぬプレゼント、といった気分です。

さっそく買い求めましたが、今後どういうシリーズが出てくるか大変楽しみです。私の大好きなM-64、M-68の写真集が出てくればいいなぁ、と今からわくわくしています。

(追記: 写真を追加しました)