Oスケール」カテゴリーアーカイブ

橋を設計する(4)

橋の基本寸法を決めた後、建築限界を作図しました。この橋はR2800とR2900の複線なので、それを考慮した建築限界を決める必要があります。専門的にはいろいろ方法はあるのかもしれませんが、私は単純に、下図のC-C’の建築限界とA-A’での建築限界を足し合わせたものを使う、という問題に置き換えました。

まずは、下のような図を描きました。これはNMRAの標準S-7に記載されているOld Time、Classic Time、Modern TimeのうちのClassic Timeに従ったものですが、dda40xさんより、高さは145mmとしてほしいとのリクエストがあり、その分を加味しました。

カントを加味すると、次のようになります。

C-C’の建築限界は、上記の限界の中心を、複線の中心に置いたものとなります。

A-A’の建築限界は、線路の中心をOとすると、C-O-Aのなす角度の余弦(コサイン)だけ幅をちぢめたものとなります。ただ、これはごくわずかですので、上記の限界をそのまま置いても問題ないと思います。

これらを合わせたものは、下図のようになります。青い線がC-C’における建築限界、黒い線がA-A’に対応する建築限界となります。

これに適合するように、設計を進めました。

 

橋を設計する(3)

まず最初に橋の基本寸法を決める必要があります。レイアウト上で確保可能なのは長さ600mmを超えたくらいでしたが、なるべく長さをとりたかったので、現地で確認して、最終的に670mmとしました。

高さを決めるのが一苦労でした。下図のように、建築限界の上下の構造を考慮した高さを設定する必要があります。

まず、路盤の高さは橋の強度を決めますので、一定の高さの確保が必要となります。また、プロトタイプとして選んだBlissfieldの橋を始めとしたこの時代の橋の多くが、複雑なトラス構造の門構となっており、一つの見せ場にもなるので、ぜひ再現したいと考えました。ややわかりにくいですが、下記のストリートビューから、門構の構造が見えます。

単純に路盤の高さ、上部の構造の高さを確保すると、橋全体が高くなってしまいます、こうなると、斜めの部材(斜材)の角度が大きくなり、全体につんのめったような印象になってしまいます。アメリカ型のメインラインの機関車が疾走するレイアウトですから、雄大な印象を与える橋にしようと意図していましたので、これは避けたいと思いました。

上に3種類の角度で描いてみました。最初に参考にしたC&Sの橋は、50°を切るくらいで、どっしりと落ち着いた印象があります。60°では、いかにもバランスが悪そうです。55°でも若干高い印象がありますが、まぁ、50°の橋と同時に見比べなければ、そんなに目立たないかと思い、この角度に収めるように路盤の高さと門構の高さとを設定することとしました。

参考としたBlissfieldの橋の上記のStreet Viewに見える通り、幸いにというべきか、縦の部分のガセットが下に延びています。これは、路盤の高さを稼ぎつつ、なるべく下に位置させたいと考えたのではないかと推測し、見た目上もアクセントとなるため、このデザインを採用することとしました

橋を設計する(2)

前回ご紹介したC&Sの橋を参考に手探りで設計を始めましたが、まずレイアウトの制約上80cmの長さは取れないということがわかりました。C&Sの橋は、縦の長い柱が5本ある、6パネル構成ですが、パネル数を減らす必要があります。

4パネルにしてしまうと迫力に欠けるのですが、5パネルという構成のBaltimore Trussの橋が実際にあるのだろうか、ということを考えていたところ、dda40xさんから、ミシガン州のBlissfieldという街にある橋を見つけてくださいました。

これとは別に、N&Wの本拠地であったバージニア州のRoanokeにある橋を見つけました。この角度のストリートビューは、上部の構造がよくわかり、随分と参考となりました。

これら3つの橋を比べつつ、最終的にBlissfieldの橋のデザインを基本とした橋を設計することとしました。

橋を設計する(1)

dda40xさんの建設中のレイアウトのお手伝いをさせていただいています。レイアウトの立体交差部分にかかるトラス橋がようやく形になりつつあります。その設計の顛末を書いておきたいと思います。

鉄道車両の場合、設計図をもとに同じものを作ればよいですが、架ける場所の条件がそれぞれに異なる橋の場合、一つ一つ個別の設計をするというのが通例と思われます。また、Oスケールとなると、機関車の質量が無視できませんので、見た目より強度を優先する必要があります。当然のことながら、特定のプロトタイプを縮尺した模型を作るのではなく、様々な事例を参考にしつつ、オリジナルの橋を設計することとしました。橋に関する詳しい知識はほぼゼロでしたから、参考書をひっくり返したり、かなり苦労をしました。特に底の構造がよくわからず、ガード下でしばらく上を見ながらあれこれ考えていたこともありました。傍から見ると怪しい人に見えたに違いありません。

最初に参考としようとしたのは、シャイアンにある、Colorad & Southern(現在はBNSF?)の橋です。Baltimore Trussというタイプの、雄大な橋です。

これは、Flickrに投稿された、写真です。

C&S bridge - Cheyenne

ここはrailfunningに適したスポットのようで、多くの動画も投稿されています。

まず最初に橋の大きさを調べる必要があります。車両と異なり、橋に関するまとまった資料があるということは聞いたことがなく、特に図面など望むべくもないので、Google Mapsの距離の測定機能で、この橋の長さを推定することし、1/48で80cm程度という結果を得ました。後日、Overland Modelsがこの橋を製品化したことがあるということを知ったのですが(OMI-3382)、それによるとこの橋は126フィート(約38.4メートル)とあり、1/48では800.1mmとなります。あまりにぴったり一致してびっくりしました。Google Maps恐るべし、といったところでしょうか。

このほか、上記のFlickrの写真が機関車をほぼ真横からとらえていますので、この機関車の型式・諸元を調べ、縦方向のざっくりした寸法を割り出し、詳細の設計に入りました。

CADツールを活用した軽工作

師走になり、特に何かあったわけではないのですが、慌ただしい毎日が続き、Blog更新が滞っていました。気がつけば大晦日です。最低でもひと月一件はポストするという勝手な目標をたてていますので、無理矢理という感がありますが、小ネタを一つ書いてみようと思います。

もともと人に自慢できるような工作力など持っていない私ですが、最近、知人の機関車のOスケールのDCC化を依頼されることがあり、補助的な部品を作る必要に迫られることがあります。糸鋸やらヤスリやらを揃え、ウン十年(?)ぶりの工作に奮闘してはいるのですが、腕は相変わらずで、出来上がったものをじっと目を凝らして見ると、情けなくなります。とはいっても、私が作る必要のある部品は、外から見えてもチラっと見える程度なので、現物合わせでそれらしく作ればよく、なおかつ動力機構等とは関係なく、厳密な機械的精度は必要としないのが救いとなっています。

多くの場合、例えばスピーカーの取り付けの板を切り出すといっただけの簡単な工作で済むのですが、立体的な部品を作る場合は、話がややこしくなります。ありがちなのは、何も考えずに場当たり的に作ってしまって、所定の位置に収まらず、作り直すはめに陥るというパターンです。ある程度形をしっかり決めておく、つまりは簡単に設計して寸法を出しておくことが必要です。

何とか楽をしようと思って、LoD車輪の図面を描く際に使い方を覚えたCADツールを使って展開図を描くことを思いつきました。期待したのは、次のような効果です。

(1) 紙に印刷して展開図をハサミで切り出して組み立ててみれば、展開図が正しいかを確認できる。また、形状は問題ないか、取り付け位置にうまく収まるか、他の部品と干渉しないか、なども簡単に確認できる。問題があれば、何度でもやり直せばよい。

(2) 一旦寸法が決まったあとで、印刷した紙を材料に貼りつけてしまえば、罫書の代わりになる。

実際にやってみて感じたのは以下のことです。

まず1)ですが、CADの図面の修正は簡単にできますので、納得できるまで何度も修正がきく、というのは本当に手軽で便利です。ただし、普通の紙に印刷すると、出来上がりがヤワなので、厚手の紙に印刷すれるなどの工夫が有効かもしれません。

2)については、両面テープを使って貼ったので、テープのある場所とない場所との微妙な厚さの差の影響とか、紙やテープが糸鋸に引っかからないかなど、半信半疑でしたが、案ずるより産むが易しと言うべきか、想像以上にうまく行きました。考えてみれば、プリンタの印刷精度は、私が罫書して出せる精度よりはるかに高いので、上記の影響を考えても十分に正確なものができると思います。ネットを検索してみると、似たようなことを考えている方はすでにいらっしゃって、シールに印刷して貼り付けるとか、スプレーのり(例えばこちら)で貼り付けるとか、という方法が紹介されていました。

ということで、恥ずかしながら、作例を2つほど紹介します。

まず、これはディーゼル機関車(SD-7)のナンバーライトの照明用のケースです。

LEDを取り付けて配線まで終わった所です。これをフードの裏側に厚手の両面テープで貼り付けることになります。

これは、Santa Feの4-8-4に使ったものです。一部展開図が正確でありませんが、そこまでこだわらなくても十分だろうということで横着しました。実際にこれで十分でした。

これが出来上がりです。ちゃんとした写真が撮れておらず、申し訳ありませんが、これが何かわかる方はいらっしゃいますでしょうか。流石と言うべきか、dda40xさんは、一発で的中させられました。

それでは、拙いBlogにお付き合い頂いた皆さん、よいお年をお迎えください。

祖父江欣平氏の訃報に接して

すでにdda40xさんのBlogに書かれているとおり、祖父江欣平氏がお亡くなりになられたこと。

祖父江欣平氏の死去
続 祖父江欣平氏の死去
続々 祖父江欣平氏の死去

祖父江氏の功績などについては、お付き合いの長いdda40xさんの上記の文書をお読みいただきたいのですが、ここでは私なりに追悼の意を表したいと思います。

私が米国型に興味を持つようになって、気がつくと30年近くになります。この間、数多くのHOスケールの模型を見たのですが、ここ数年、O-Scaleの模型に目が行くようになりました。初めて覗いたO-Scale Westのあちこちで”Sofue Drive”と書かれた三条ウォームに改造された機関車があるのを見て、米国での祖父江氏の存在の大きさを認識するに至りました。

そのうち、祖父江氏作のOスケールのMax GrayやUS Hobbiesの模型をよく見る様になって感じたのは、特にカツミを中心とする、日本から輸出されたHOスケールの模型の多くが、機関車の構造、プロポーションなど、祖父江氏のOスケールの模型を範にとっているのではないか、ということです。

プロポーションといえば、祖父江氏の実物の印象の捉え方に対するセンスには抜群のものがあります。50年以上前の模型で、限られた資料で作られたにもかかわらず、ぱっと見たときの説得力の高さは何故なのだろうと感じます。

つい先日まで訳を連載していたMark Schutzer氏がレストアしたカツミのSPのマウンテンも、Oスケールのものを参考にしたのだろう、と推測しています。

私見ですが、このような祖父江氏のOスケールの模型が米国で評判を獲得したことは当然のことであり、結果として米国の模型界を活性化させ、HOスケールも含めた日本からの模型の輸出を盛んにしたこと考えています。そのことは、日本の模型産業を活発化させ、日本の16番の模型が発展する礎になったのではないでしょうか。祖父江氏は世界の鉄道模型趣味界にとって、大変な恩人であったと言っても過言ではないと思います。

一度お伺いしてじっくりお話をさせていただいたことがあります。祖父江氏は、機関車作りの職人というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、私が驚いたのは、一級の鉄道模型趣味人でもあった、ということです。どこそこのプロトタイプが良いとか悪いとか、祖父江氏なりの価値観をご披露いただきました。

圧巻だったのは、UPのパイロットのロストワックスの部品を持ち出されて、「ほらね、このステップの滑り止め、網目板だと思うでしょ。でも違うんですよ、実物はピラミッド状のとがったもが細かく並んでいるんで、ちゃんとそういう型を起こしたんですよ」と言われたことです。このこだわりは、実物や模型に対する深い理解があってこそ、だと思っています。

今度はあれを作るんだ、と熱っぽく語られた様が今でも印象に残っています。

心よりご冥福をお祈り致します。

図面を描くということ (4)

完成した図面をdda40xさんにお渡ししたところで、私の仕事は一区切りつきました。十分チェックを行ったので、あとは何もしなくてもよいはずでしたが、今振り返ってみると、現物ができあがるまでは、なんとも落ち着かない時間を過ごしていたように思います。その分、完成した車輪を見たときの感激はひとしおでした。

さて、今回感じたのは、図面を描くというのはなんと大変なことか、ということです。

以前、畳一畳以上はあろうかという実物のアメリカ型の蒸気機関車の図面の複製(青焼き)を見た時に、よくあれだけの精緻な図面を手書きで短時間で描いたものだと感心したことがあります。CADツールという文明の利器を使って尚、模型の車輪だけを描くのにこれだけ自分が悪戦苦闘したという事実を踏まえると、図面を描くという事の大変さが実感を伴って伝わってきました。

もう一つ、この青焼きの図面を見たときに、「芸術的な図面だなぁ」と感じた記憶があります。しかし、今回の経験で考えたのは、「図面」は工業的にモノを作るための手段である以上、そこで重視されるのは、「正確さ」と「スピード」であり、図面に芸術といった価値観が入り込むなどということはありえないということです。私が芸術的だと感じたのだとしたら、設計者の卓越した才能や技術が、「結果として」図面に入り込んだだけなのだろうと考え直した次第です。当時のAlco、Baldwin、Limaに、いかに優秀な設計者が集まっていたかを物語ると見るのは考えすぎでしょうか。

今回ご指導いただいた知人には、「図面とは、(設計者と製作者との)コミュニケーションの道具である」と言われました。つまりは、図面として守るべき最低限のルールを守るという前提の下、設計者が何を作りたいかが明確であり、それが製作者がわかる形に明確に表現されている図面が描ければ十分だということです。「要はわかってもらえればいいんだよ」という言葉が今でも耳に残っています。

最後に、今回図面を描くに当たって参考にした本をご紹介します。

この2冊組みは図解が豊富で、わかりやすく、参考になりました。今回描いた図面に必要な知識は、part1のみで十分でした。

図面って、どない描くねん!-現場設計者が教えるはじめての機械製図
山田 学
日刊工業新聞社
ISBN: 978-4-8445-2024-5

図面って、どない描くねん! LEVEL2-現場設計者が教えるはじめての幾何公差
山田 学
日刊工業新聞社
ISBN: 978-4-5260-5859-2

これは、いろいろな製図のルールとか、ネジの規格とかを知るのに重宝しました。

JISにもとづく機械設計製図便覧
大西 清
理工学社; 第11版版 (2009/01)
ISBN: 978-4844520245

図面を描くということ (3)

勢いとは恐ろしいもので、CADツールが自由に使えるようになると、一通りそれらしい図面ができました。そのうちの一枚が下の図面です。今振り返ると稚拙な図面ですが、これが限界でしたので、いろいろな人の意見を頂くこととしました。

特に参考になったのが、会社の先輩である知人からのコメントです。この方は、神奈川県の最高レベルの技能者に与えられる「卓越技能者」の称号をお持ちで、専門家の立場から、懇切丁寧な指摘をいただきました。要は、徹底的にダメ出しをくらったということなのですが。

まず開口一番言われたのは、「繰り返し作る可能性があるものなのだから、どこの加工業者に持っていっても、図面一式を渡すだけで見積もりしてもらえるものにしなさい」、ということです。

そのためには、図面として最低限の体裁を整えるように、と言われました。具体的には:
(1) 品名、図面番号、縮尺、材質、改版履歴など、必要事項を記入するための図面のフォーマットを決めて、それに描くこと。
(2) すべての図面に図面番号を振ること、そのためには、図面番号の振り方はしっかりと決めておくこと。
(3) 他の図面を参照する場合は、図面番号を明示すること。例えば、組立図には、使用する部品図の図面番号を、部品図中で拡大図を参照する場合は、拡大する範囲と拡大図の図面番号とを明示すること。
(4) 加工に際しての必要な指示は、簡潔な文で記入しておくこと。
(5) 図面の一覧表を作ること。

その上で、わかりやすい図面にすること、を言われました。これにはいろいろな技法があるのでしょうが、今回は
(6) (半)断面図をうまく活用すること、
を言われ、具体的にこうしたらどうか、という例を提示していただきました。

最後に、機械図面で最も重要なのは寸法入れである、ということで、
(7) 今の寸法の入れ方はでたらめなので、もう一度考えて入れなおすこと、
(8) 公差を入れること、
を言われました。

(7)について補足すると、言われたのは、「機能的に重要な意味を持つ寸法を選んで入れるように」ということです。少し考えてもらうとすぐわかると思いますが、下の2つの図面は、「モノを作る」という観点では、意味することが違うということです。

CADツールで簡単に寸法が入れられるのをいいことに、あちこちに寸法を入れていたのが、裏目に出ました。実際にどの寸法が本当に重要かを考えるのは難しい作業でした。指導いただいた知人に、「寸法入れは難しい」と感想を言ったら、「自分が図面を描く時も、いまだに、これでいいのかと自問自答しながら寸法を入れている」との答えが返ってきました。

さて、これらのフィードバックを元に、描き直したのが下の図面です。先ほどの図面に比べるとかなり進歩したことが理解してもらえると思います。ただし、(7)の寸法の入れ方は、試行錯誤の状態で、(8)に至っては、手つかずに近い状態です。ということで、現在の図面の完成度は70%というところでしょうか。とは言っても、これ以上は自分の実力を超えるので、(8)については加工業者の判断を仰ぐという前提で、今回はこれにて完了ということとしました。描きあげた図面は、各種の組立図、部品図、拡大図、併せて25枚となりました。

図面を描くということ (2)

さて、ツールにも慣れ、LoD車輪の作図を進めて行きました。さすがにCADは便利だな、と思ったのが、以下の3点です。こういう機能があったからこそ短時間で図面が描けたのだな、と感じています。紙と鉛筆で製図していたら、いまだに完成していないかもしれません。

(1) 複雑な作図が簡単にできること
コンピュータが計算を代行してくれるので、複雑な作図があっという間にできます。例えば、下の図を見ていただければわかるように、車輪の断面には、小さな半径の2つの円を、大きな半径の円でつないでいる部分があります。これを紙の上で正確に描くには、複雑な計算や作図が必要になりますが、JW-CADでは、「接円」というメニューを選び、2つの小さな円と、接円の半径を指定すれば終わりです。

(2) 部品化ができること
上で説明した作図機能は、人間が紙の上で行う作業を効率化するものですが、CADの強みは、コンピュータならではの、紙の上では不可能なことが行えることです。
その一つが、一度作図したものを部品化し、再利用できることです。

例えば、今回、直径の違う車輪を3種類作ることとなりましたが、コンタはすべてに共通です。したがって、一度描いたコンタを、部品として登録しておけば、車輪を描く際は、複雑なコンタを改めて描くのではなく、登録した部品を呼び出し、位置決めすれば終わりです。飽きっぽく、根気の続かない私にはうってつけといえるでしょう。

このようにして描いた車輪を、更に部品として登録しておけば、組み立て図も簡単に描くことができます。今回はタイトル画像のような部品を用意しましたが、車輪の組立図は、車軸、絶縁ブッシュの部品を呼び出し、車輪の半分の部品を方向を変えながら4回書き込むだけでよく、慣れれば1分程度でできあがります(下図参照)。

ただし、何でもかんでも部品にすれば良いというものではなく、本当に使いやすい部品を作るのは難度が高く、知恵が必要なところです。私も何回か登録した部品をボツにしました。

(3) 寸法入れが容易なこと
CADで作図すると、すべての長さや位置関係の情報がコンピュータに入っていますので、”ここからここまでの寸法を記入してくれ”と指示すれば、瞬時に寸法を入れることができます。あまりに便利なので、検算の意味も含め、あちこちに寸法を入れておいたのですが、これは後で痛い目を見ることになりました。

図面を描くということ (1)

dda40xさんのLoD車輪の再生産にあたり、図面描きという形でお手伝いさせていただきました。私には、新しい発見が多く、貴重な経験でしたので、感じたことを書き連ねてみたいと思います。ただし、識者の皆さんにとっては当たり前のことで、何をいまさらという話ばかりだろうと思われます。素人のたわごとということで、読み流してください。

さて、dda40xさんとお話をしている中で、「図面を描いてみましょう」ということになりました。とは言ったのは良いものの、製図なんて中学校でほんの一時期習っただけで、専門的な教育など受けたことなどありません。「ええっと、確か図面は第三角法で描くんだったよな、そもそも三角法ってどんなだったけ」、と思いながら、あちこちのサイトを覗きながら、しばし復習。

図面を描くにあたっては、紙に作図する技量も根気も時間もないので、CADツールを使うこととしました。いくつか試したのですが、MS-DOS時代からの長い歴史があり、フリーの2次元CADソフトの定番と言ってもよいJW-CADを選定。

このソフトは、多くのユーザーのフィードバックを経て長い時間をかけ、洗練されただけあって、完成度は高いと感じました。ただ、MS-DOS時代からの操作方法を引き継いでいるからでしょうか、一般的なWindowsの操作方法と直感的に異なる場合があります。例えばマウスの右クリックの使い方が独特で、最初は馴染めず、悪戦苦闘していました。ただ、タイトル画面のコンタを描いた後は、この独特な操作体系にも慣れ、実はこの操作方法は、作図を効率的に行うにはどうしたらよいか、ということをつきつめた結果なのだろう、と思えるようになりました。

コンタを描いた後、練習の意味で少し複雑なものに挑戦しようと、AARの33インチ車輪の断面図を作図しました(下図参照)。これはかなり複雑な直線や曲線が組み合わさっており、この図を描き終わったころには、JW-CADも問題なく使えるようになり、その後はスムーズに作図を進めることができるようになりました。やはり、習うより慣れろ、ということでしょうか。