4-8-4に関する情報」カテゴリーアーカイブ

Alf Modine氏のレイアウト

レイアウトツアー三日目、まず向かったのは、Alf Modine氏のレイアウトです。氏のご自宅は、以前私が住んでいた家から、車で10分もかからないところにあり、あまりに近いのにちょっと驚きました。

さて、このレイアウトは、dda40xさんのblogに前編後編の2回に分けて紹介されています。また、International Model Railroadsの堀江さんが訪問されたときのビデオ、写真がこちらにありますので、あわせてご覧になっていただきたいと思います。

Alf氏のレイアウトは、前回紹介したBob Plageman氏のレイアウト同様、ガレージの中に設けられており、複線のメインラインのほぼ円形のループを基本としています。大きさは16フィート(4.9m)×13フィート(4.0m)と控えめのレイアウトです。ただし、こちらはガレージとして使うことは想定していないようで、Interurbanのラインを敷設したり、シーナリーが充実したりと、見ていて楽しいレイアウトでした。

Alf氏のレイアウトが他に比べて際立っているのは、C&NWをテーマとしていることです。上記dda40xさんのblogにも書かれているとおり、OスケールでC&NWの機関車はほとんど市販されていませんので、氏の車両の多くは自作によっています。O-Scale Westのコンテストに出品されたものもあり、2003年には4-6-2のクラスEが、2005年には4-8-4のH-1やInterurbanの車両が入賞しています。上に紹介した堀江さんのビデオを見ていただければわかるとおり、氏の機関車の走りはスムーズかつ安定しており、相当の工作の腕の持ち主だと思います。Sunset 3rd RailがH-1の製品化を計画しているのですが、ここにも氏のH-1の写真が掲載されていますので、この模型を参考にするということでしょうか。

さて、私はこのH-1を2005年に初めて見たのですが、Alf氏のレイアウト訪問の目的は、この機関車に再会することが主目的だったという方が正直なところです。ということで、気がつくと、写真に残していたのは、機関車ばかりでした。しかも、腕が?????な写真ばかりなのですが、恥を忍んでご紹介します。

まずこれは、私が一番見たかったH-1です。何度見てもすばらしい機関車です。

これは、H-1の前に置かれていたE-2a(?)です。

これは上にも書いた、2003年にO-Scale Westのコンテストで入賞したPacificです。応接のガラスケースの中に、大切に置かれていたのが印象的でした。

[2012/4/21追記: 写真を1枚追加しました。]

Modestoへ

Lou Crossさんの家を訪問し、近くの宿に一泊した後は、いよいよO Scale Westの開催されるSan Jose方面に向かいます。でも、「面白い場所があるのでちょっと行ってみましょう」とdda40xさんにお願いし、再度CA-99に乗り、車を北に走らせます。目的地はModestoです。

“はて、Modestoってどこ?”というのが多くの人の反応かと思います。ひょっとしたら、ModestoがSan Joaquin Valleyルート沿いの農産物の集散地の拠点の一つであることをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。”それにしても、そんな場所に何の用が?”というのが普通の反応でしょう。が、私は15年以上、この街のある場所を訪問したいと思い続けており、今回ようやくその目的を果たすことができました。

それは、ModestoのBeard Brook Parkという公園に静態保存されているAT&SFの2921(4-8-4)を見ることでした。この機関車は、カリフォルニア鉄道博物館に保存されているAT&SF2925AT&SFの2926動態復活プロジェクトのニュースで紹介した機関車と同形式のクラス2900の一両です。

クラス2900は、1943年から1944年にかけて30両がBaldwinで建造されたAT&SFの4-8-4の最終形式です。1941年に製造されたクラス3776を増備したものなので、基本的なスペックはそのまま受け継いでいますが、第二次世界大戦の真っ只中でしたので、使える材料や資材に制約があり、4-8-4としては最も重い機関車となりました。機関車の重量は510,150ポンド(231.4トン)。テンダーもまた巨大で、24,500ガロン(92,740リットル)の水と、7,000ガロン(26,500リットル)の燃料を飲み込んで、Santa Feの旅客や貨物に活躍していました。(注:数字は資料によって異なるので、HundmanのLocomotive Cyclopediaによりました)

まずは全景です。とにかく大きい。全長は37メートル近くあります。

これはテンダー。これだけで長さは17メートル以上となります。クローズアップを撮り忘れたのですが、台車は2つとも4軸なのに注目ください。

フロントに回ります。高さも5メートルはあります。

後ろに回って、巨大なテンダーを見上げたところです。

進行方向に向かって右側(Engineer’s side)に移ります。金網が邪魔ですが、ご容赦ください。まずは従台車。

続いて、第4動輪から第3動輪まで。動輪径は80インチ(2032ミリ)です。

続いて、第2動輪から第1動輪。

続いてシリンダー。

キャブ下に戻って、配管のクローズアップを撮ってみました。ちょうど金網の隙間から撮影することができました。

これはモーションプレートの後ろに設置されているオイルポンプです。模型だと奥行き方向が圧縮されがちなのでなかなか意識することがないのですが、実はこんなに立体的な構造をしているのだ、ということを認識した次第です。

今度は左側(Fireman’s Side)に移ります。こちら側は、金網の隙間から写真を撮っています。まず第1動輪から第2動輪にかけて、そしてモーションプレート。

レンズをもう少し第2動輪に向けてみました。

上と似たような写真ですが、第2動輪のメインロッドのローラーベアリングが写るような角度で撮影してみました。

続いて、第3動から第4動輪。、第2動輪から第3動輪をつないでいるタンデムロッドをはっきり認識できます。また、機関車の大きさの割に、ロッドが薄いのも印象的です。

第4動輪から火室の底部と続きます。従台車の厚みもよくわかります。

さて、上にも書きましたが、クラス2900は、戦時の制約により、箱型のBoxpox動輪、テーパー型のロッド型で落成しました。戦後、性能改善のため、ローラーベアリングつきのロッドに換装し、第4動輪もボールドウィンのディスク動輪に入れ替えました。というような予備知識でこの機関車を観察していたのですが、この2921号機は、第4動輪に加えて第2動輪もボールドウィンのディスク動輪であることを発見しました。この機関車だけ特別な理由で第4動輪に加えて第2動輪も交換したのでしょうか。あるいは、すべてボールドウィンのディスク動輪を備えていたクラス3776が廃車になったときに流用したのでしょうか。

左側のキャブ下の配管を狙ってみました。

最後に、フロントビューを拡大したところです。

カウキャッチャーは昔ながらのタイプです。

参考までに、以下に場所を記しておきます。Google Mapsにもしっかりとらえられています。クリックしていただいて、Street Viewに切り替えると、この2921号機のサイドビューをはっきりと確認することができます。

[2012/4/18追記: Google Mapsを埋め込みました。]


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[2018/5/6追記: 上記の場所からAmtrakのModesto Stationの近くに移設されたということです。GoogleのStreet Viewにはまだ登録されていませんが、こちらに写真が投稿されています。また、下記のYoutubeの35秒から40秒の間に登場します。]

Glacier Park Modelsの新作はFrisco 4500

前からあちらこちらで話題になっていましたが、Glacier Park Models(以下、GPM)の次回作であるFRISCO(正式名称はSt. Louis-San Francisco Railway)のクラス4500(4-8-4)が、Webサイト上で正式に発表されました。4-8-4大好きな私としては、見逃せませんので、簡単に触れてみたいと思います。

まず実物の話からまとめてみます。以下はJoe Collias氏の”FRISCO POWER”を参考にしました。この本は、もうずいぶん前の出版で、再版もされていないようですが、FRISCOの蒸気~初期のディーゼルの概要を知るにはいまだに一級品の資料ではないかと思っています。

Collias, Joe G.
FRISCO POWER — Locomotives and Trains of the St. Louis-San Francisco Railway 1903-1953
1984 MM Books
ISBN 0-9612366-0-4

クラス4500は、1942年から1943年にかけてボールドウィンで製造されたFrisco最後の新製蒸気です。この機関車が計画された当時は、第二次世界大戦の真っ最中でしたので、新しい機関車の製造に際しては、使用目的、使える材料、など数多くの制約が課せられていました。その中の制約の一つである、「既存の設計を活用すること」を満たすべく、クラス4500は、CB&Qの4-8-4であるクラスO-5aの基本設計を流用することとしました。2つの機関車は、基本設計が同じとは思えないくらい印象が異なりますので、4500の設計チームはFRISCOの機関車としての独自性を出すのに成功したといえます。

クラス4500は、3つのグループで登場しました。

  1. 4500~4502は、セントルイス-オクラマホマ間で運行されていたFRISCOの看板列車Meteorの牽引専用で、1942年11月に落成。重油焚き。以下の4503~4514とはテンダーの形がかなり異なる。
  2. 4503~4514: 石炭焚きの貨物用機で、1942年8月に落成。
  3. 4514~4524は、4503~4514と同じ石炭焚きの貨物用機で、戦時中の輸送量の増加に対応すべく、1943年に増備。利用可能な材料等の関係で、4500~4514がディスク動輪を装備していたのに対しボックス動輪を装備。また、先輪はスポーク輪心で登場(後日ディスク輪心に交換)。このシリーズは牽引力を増やすためのブースターを装備しており、性能が良かったたため、4500~4514にも装備することとなった。

さて、クラス4500を特徴付けるのは、その塗装です。

  1. 貨物機用の4503~4524は、Frisco Faster Freight(フリスコの高速貨物)という大きなロゴと白と赤のストライプが印象的です。
  2. 旅客機の4500~4502は、機関車全体は青で、テンダーの真ん中に白い帯、テンダーの前方上半分に斜めにMeteorという赤の大きなレタリングという、アメリカの蒸気では考えられないような派手な塗装で登場しました。番号が若いにもかかわらず、4503~4514に遅れて登場したのは、戦時中にこんな派手な塗装をしてよいものだろうかという議論があり、機関車は完成したものの、塗装が決まるまで待たされたとのこと。

さて、この4500~4502の青ですが、「Zephyr Blue」と書かれているだけで、今一歩イメージがつかめません。インターネットで調べてみると、以下を見つけました。
1) 現役時代のカラー写真がこのページに掲載されています。
2) Joe Collias氏によるカラー写真が、FRISCOのファンサイトの中に一枚ポストされています(メンバー登録必要。無料)。
3) オクラホマ州のTulsa市に静態保存されているトップナンバーの4500号機の塗り替え作業を報告しているサイトがあります。

このほか、私の手持ちの資料の中化から、Locomotive Quarterlyの1995年の第4号の表紙を写したものを掲載します。絵なのでどれだけ参考になるかはわかりませんが。

さて、このような特徴的な塗装ではありましたが、1946年に社長に選ばれたHungerford氏のお気には召さなかったようで、社長のツルの一声で順次黒に塗り替えられてゆきました。趣味的には、こういうことに対して理解がない人だったと見てしまうかもしれませんが、FRISCOを立て直したという記述も見られますので、経営的には功労者なのかもしれません。この質素な塗装の時代ではありますが、1949年にのごく短い間、Will Rogers号を牽引するために、4519号機のテンダーに「The Will Rogers」というレタリングが入れられました。これは、「オクラホマの息子」と呼ばれ、映画俳優などとして活躍したWill Rogers氏の生誕70周年を記念してとのこと。

クラス4500は、この時代に製造された蒸気機関車の常として、活躍した期間は短かったのですが、安定した性能を発揮し、乗務員などからは信頼のおける機関車だったとの評価をされたようです。

模型の話ですが、ブラウン・ブックによれば3回製品化されたと記録があります。そのうちの2回はハンドメイドの特製品のため、一般に入手可能なのは、今はなきHallmark社向けに1980年ごろ(?)に韓国で製作されたものかと思われます。ただ、この模型は韓国の技術が安定する前の時代のものであり、出来は発展途上というべきでしょう。さらにはテンダーの寸法がスケールからかけ離れているという欠点があります。

今回GPMは、決定版を目指しているのでしょうか、なんと11種類を作り分けるという力の入れようです。製作を担当するのはBoo Rimですので、この点でも期待できます。ただ、前回作のSPの4-6-2は、最後の詰めがもう一歩だったという印象なので、今回は丁寧に仕上げてほしいなぁと思っています。

以下、GPMから許可をもらいましたので、GPMのサイトに掲載されている写真を転載します。

All of the 4500 prototype images are posted under permission from Glacier Park Models.

これは、Meteor牽引機のオイル焚きの4502です。

これは貨物用に製造された石炭焚きの4503号機です。テンダーの形が上のオイル焚きのものとはずいぶん異なることがわかります。FFFのヘラルドの形がよくわかります。

これはWill Rogersのレタリングを施した4519号機です。これからこのレタリングを除くと、Hugerford氏社長就任後の「黒にテンダーに番号を書いただけ」のペイントスキームとなりまます。

これは増備したグループのトップナンバーです。先輪がスポークなのがよくわかります。

これは4500クラスの最後のナンバーです。スポークの先輪、そしてディスク動輪ではなくボックス動輪を装備しているのがよくわかります。

これが、Hugerford氏社長時代の簡素な塗装です。

AT&SFの2926動態復活プロジェクトのニュース

皆さんご存知のとおり、Youtubeでは、ビデオ再生後に、お勧めビデオの紹介が出てきます。今朝、とあるビデオを見終わった後、ほんの一瞬でしたが、「あれ、Santa Feの4-8-4か2-10-4にそっくりだ!」という映像を見つけ、条件反射で、すかさずクリック。

思ったとおり、Santa Feの4-8-4である2926を動態に復活しようというプロジェクトを紹介するニューメキシコ州の KRQEというテレビ局のニュースクリップでした。この活動を広く知らせるためのオープンハウスが10月18日に開催されるのにあわせて紹介されたローカルニュースです。

ビデオを見ていただければわかると思いますが、概要は以下のとおりと思われます。言っている事に加え、映像から推定できる情報も補足しています。割と聞き取りやすい英語だと思いますので、皆さんも確認してみてください。もしも間違いあったら、遠慮なくご指摘ください。

・ニューメキシコ州ができてから100周年にあたる2012年にあわせて、Santa Feの2926を動態に復活しようという活動を、New Mexico Steam Locomotive and Railroad Historical Societyが進めている。

・もともとアルバカーキの公園に静態保存されていた機関車を移動し、修復作業中。

・2926の現役時代の写真など、資料は豊富に残されている。

・現状、テンダーの修復が終わっている。このテンダーは、水24000ガロン(約9.1万リットル)の水、7000ガロン(約2.6万リットル)のオイルを搭載可能で、中にたまっていた2.5トンの泥を掻き出すのは大変な作業だった。このレタリングですが、字体が痩せすぎなのがちょっと気になります。
(注: 泥の量を聞き間違えていたので修正しました。dda40xさん、ご指摘ありがとうございました)

・キャブは、下部が腐食していたので、取り外して修復中。

・火室はフォルクスワーゲンが一台はいるくらいの大きさ。

・この機関車を実際に運転していた機関士によれば、巡航速度で時速90マイル(144km/h)で走ることができ、最高速は、時速107マイル(171km/h)を出したこともある。

・動態への復活には、老若男女を問わず、熱意のある200人のボランティアが取り組んでいる。

・作業を加速するために、州の予算を獲得するための立法化を目指している。

・動態復活時には、25の市を回ることで、広くいろいろな人に見てもらいたいと思っている。

・この活動によって、ニューメキシコの発展に如何に重要な役割を果たしたかを広く知ってもらいたいと思っている。子供たちはこのようなものが実際に存在し動いていたことを知らないので、特に知って欲しいと思っている。

というようなところでしょうか。

ちなみに、この活動を進めているNew Mexico Steam Locomotive and Railroad Historical Societyのホームページは、これまでの作業の様子やニュースレターなど、豊富な資料が載せられている有用なサイトだと思います。

また、このblogをお読みの方はお気づきだと思いますが、この2926は、以前紹介したカリフォルニア州鉄道博物館に保存されている2925と同型機です。

それでは、お楽しみください。

[2012/4/7追記: 残念ながらこのビデオは削除されたようです。代わりに、下記のビデオを見つけましたので、埋め込んでおきます。]


カリフォルニア鉄道博物館に保存されているAT&SF2925

ワークスKさんのカリフォルニア州鉄道博物館(7)という記事の中に、旧サザンパシフィック鉄道のサクラメント工場跡の写真の機関車という記述があります。

すでにワークスKさんのBlogに、以下のようにコメントさせていただきました。

これはテンダーの形からしてSanta Feの4-8-4(2925)か2-10-4(5021)のどちらかに間違いないと思います。いずれもWikipediaのCalifornia State Railroad Museumの保管車両のリストに”Stored”となっています。この2形式は下回りを除いては共通設計が多く、拡大した部分の右側を見てもらうと、ほぼ同一の形状をした機関車が転がっています。

さて、私もこの博物館に何回か行ったのですが、博物館から北のほうに川沿いに少し歩いて、ちょうどこの機関車が真横に見えるあたりまで行ったことがあります。その時にじっと目を凝らして見た時は、29xxと読めたような気がします。ということで、私の視力と記憶とが正しければ、ワークスKさんが拡大されたほうが2925、その右にあるのが5021ということになるかと思われます。

ということで、ひょっとしたら、と思って探してみたら、この写真を撮っていました。もともと自己満足の記録としてとったものである上、かなりの距離をコンパクトカメラでいっぱいにズームして撮ったものですから、証拠写真としての価値さえあるかどうか、というところですが、こんなところから写真を撮る物好きも私以外にはいないでしょうから、恥ずかしながら紹介させていただきます。

下に拡大したイメージを載せておきますが、「2925」という文字を読み取ることができます。絶妙な位置で撮ってしまったので、だまし絵のようになってしまいましたが、2925は先頭が左のほうを向いて置かれています。その先に2-10-4(5021)が先頭を右に向けて置かれています。

5021はボイラーのラギングがはずされ、ボイラーがむき出しになっています。2925も似たような状態なのでしょう。カリフォルニアの気候では、保存条件は日本よりは良いとはいえ、何年も野ざらしが続いているのでしょうから、保存状態としては決して良いとは思えません。修復して良い状態で保存して欲しいと思うのは私だけではないと思います。

[2012/4/7追記: 上記ワークスKさんのページにもコメントしましたが、その後この機関車は、博物館の南1マイルあたりに移動したということです。下記にGoogle Mapsを貼り付けておきます。]


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[2018/5/6追記: その後、この機関車はOld Sacramentに移動し、現在は塗装しなおされ、綺麗な状態で保存されているとのことです。]

競作?

もう1年前になりますが、Precision ScaleNorthern PacificのA-4/A-5を出すということを書きました。昨年の春だったと思いますが、期待にたがわぬ出来で仕上がってきました。最近のブラスモデルの例に漏れず生産台数が限られていたこともあって、あっという間に売り切れてしまったようですが。

Precision Scaleは、これに続いて、NPのA-2をやると予告をしていて、ひそかに期待しているのですが、Webページはずっと更新されていません。A-4/A-5のときも、発売がかなり近づいたころに、いきなりパイロットモデルの写真が出てきましたので、A-2の場合もそのうち突然情報が出てくるんだろうな、とのんびり構えていました。

ところが、ここにきてDivision PointA-2、A-3、SP&SのE-1(A-3のオイル焚)をやると予告をしているのを発見してびっくり。競合して良い製品が出てくれば、気に入ったほうを選べばよい、ということになりますが、もともと狭い市場ですので、そう事は簡単に運ばないのでは思っていて、ちょっと複雑な気分です。

まず、これだけの大物の模型を同時にこなせるだけのキャパシティがメーカー側にあるかどうか、というのが一つ。Division Pointは、ここのところ一番安定していると思われるBoo Rimを使うと明言しています。となると、一発逆転でもない限りPrecision Scaleは、別のメーカーに発注することになるのでしょうか。私個人の意見としては、Precision Scaleは出来不出来のむらがあるという印象なので、そこの実力しだいということになりますね。総合的に判断すると、Division Pointの方が確実に期待できるというところでしょうか。

という観点でA-2、A-3を見てみると、基本設計は踏襲されているものの、細かく見るといろいろなところに違いがあることに気づきます。まず目立つのが、ボックス動輪の形。A2の動輪は日本型蒸気のような大きな穴が開いた形状になっています。また建造時のA-2は独特の形の煙突を採用しています。いつだかの「とれいん」誌だったかと思うのですが、「植木鉢をひっくり返した形」というような表現があったのが印象に残っています。そのほか、サンドドームの位置が大きく異なるとか、A-2のキャブの方がこぶりだとか、実は全長などの基本寸法も微妙に違う、とか、、、

要は、A-2とA-3とを正確に作り分けるとなると共通に使える部品というのが意外に少ないのでは?、というのが気になります。そういう状況で、インポータ、メーカの神経がどこまで行き届くのか?というような余計な心配をしたくもなります。

もう一つ、Division Pointの製品ラインナップでは時代別の作りわけで2種類が用意されていますが、Precision Scaleはこれに加えて、給水温め器の作りわけで2種類、そしてボイラーの塗色で黒とグレーとの2種類、合計で8種類を用意しています。Division Pointがボイラーの塗色をどちらにするか、というのも大きな判断材料になるかと思います。
(2008/1/28: 給水温め器の作りわけを見落としていたので修正)

いずれにしても、特にA-2はこれまでよい模型が出ていないと思うので、どちらのインポータでも良いので、すばらしい模型が出ることを期待するばかりです。もっとも、その前に私は先立つもの心配をしないと始まらないのですが、、、

※画像はA2とA3(正確にはSP&SのE-1)の図面です。上がA-2になります。

Northern Pacificで使われていた石炭


ワークスKさんから、Northern Pacificは本当にligniteを使っていたのか、というご質問を頂きましたので、資料をひっくり返して見ました。

以下は、1980年代前半にThomas Dresslerが著し、N J Internationalから刊行された”The First Northerns – Northern Pacific A Class 4-8-4”の冒頭に書かれている情報を抜粋したものです。

・NPの機関車に使われていた石炭は、モンタナ州Forsyth近くの、NPの本線の近くの会社の所有地で、露天掘りで採掘していた。

・石炭は廉価であったが、質は高くなく、Rosebudという名前で知られていたlignite(亜炭)であり、25%の水分(moisture)と9%の灰(ash)を含んでいた。

・BTU(British Thermal Unit:熱量の単位)は、1ポンドあたり8750しかなく、他の大部分の鉄道で利用されていた石炭のBTU値をはるかに下回っていた。

・炭鉱の立地条件、およびコストの面で、NPはこの石炭を燃料として使うことにし、1920年代中ごろ以降のNPの機関車は、この石炭を燃やすように設計されていた。

ちなみに、Rosebudというのは、上記Forsyth Cityの隣のCityの名前であり、またこの一帯の地域(County)の名称でもあります。

さて、この本ですが、出されてすぐのころに購入したものです。NPの4-8-4について非常によくまとめられた本です。今でも探せば入手できるのでしょうか(ISBN 0-934088-03-9)。表紙の写真を載せておきます。

Precision Scale CompanyのNP A-4/A-5

内野さんのNP A-2の話が出たので、Northern Pacificネタです。しばらくの間あちらこちらのサイトを覗くのをサボっていたので、気が付かなかったのですが、Precision Scale Companyのウェブサイトに、Northern PacificのA-4/A-5のパイロットモデルの写真が掲載されているのを見てビックリ。製品の計画があることはおぼろげながら記憶していましたが、正直なところ、ここまで進んでいるとはまったく予想外でした。全くの私見ではありますが、Precision Scaleの製品は、Challenger Imports(休業してしまいましたが)やW&Rに比べ、微妙にあたりはずれがあるような印象があるので、それほど注目してなかった、ということもあったので。

4-8-4の軸配置の機関車をNorthernと呼ぶのは、この軸配置の機関車を最初に導入したのがNorthern Pacificであったことに由来しています。A-4/A-5はNorthern Pacificの4-8-4の最終発展形であり、カウキャッチャーが違うほか、細かい違いがありますが、基本設計は同じです。A-5は第二次世界大戦の輸送力増強のために製造され、利用できる素材に制約があったため、Santa Feの2900クラスについで、2番目に重い4-8-4になってしまったと記憶しています。

模型で言えば、1965年にFujiyamaがPFM向けに輸出したA-5が思い浮かびます。Fujiyamaはこの後A-5を2回輸出していますが、1965年製のものは、特に素晴らしい出来で、日本が輸出したBrassの模型の最高峰の一つに数えられるものだと思います。

W&RもA-5(A-4も?)を製品化していますが、自分の目で直接見た事はありません。以前eBayに出てきたのを写真で見たことがありますが、Starting Bidが$2500を越えていたという信じられない価格で、とても手を出そうとは思いませんでした。Fujiyamaのものに比べ、時代が新しい分、正確な模型だということはわかりましたが。

ちなみに、内野日出男さんが製作されたA-2は、このA-4/A-5の前身となった形式です。A-2があって、A-4があれば、当然A-3もあります。Spoken, Portland & Seattleは、A-3を元にオイル焚きに設計変更したClass E-1を導入し、そのトップナンバー(700)が動態保存されています。このほか、Northern Pacificには、A(最初の4-8-4)や、TIMKEN社がローラーベアリングの効用を示すために作った機関車を買い取ったA-1といった4-8-4が在籍しました。これらの、実物の話や模型の話は、そのうち私なりにまとめみようかとは思っています。すでに諸先輩方がいろいろまとめられているので、浅学の私がまとめるのは恐れ多いという気もするのですが。

本題に戻って、パイロットモデルの写真は、大きさが小さいため、細かいところがわかりませんが、直線が出たランボードが水平に組みつけられているのを見る限り、期待してよさそうです。近年の豊富な資料を使ってA-4/A-5の違いも正しく作られている事を期待します。うーん、しばらくおとなしくしていた浮気の虫が騒ぎ出しそうです。その前に先立つものが。。。

内野日出男さんの訃報に接して

dda40xさんのBlogを覗いていたら、内野日出男さんの訃報があり、とても残念な気持ちです。

内野さんのTMSの1977年5月号、6月号のNorthern Pacific A-2の記事を見た時の衝撃は今でも忘れられません。

5月号記事の書き出しを引用すると

もともとアメリカ型も好きでしたので、アメリカ型の大型機が欲しくなりました。
それは国鉄型にはない車輪配列と言う事もありますが、その勇壮さにほれて、以前から作りたいと思っていたノーザン(4-8-4)タイプです。


とあり、6月号の結びには

私がアメリカ型にひかれる点は、大きくて迫力満点なのもさることながら、マーカーライトやカウキャッチャー、ベルなどの好ましいアクセサリーが付いている上に、形態のバラエティーも豊富な事です。ひかれる車両もカラフルな客貨車やカブースがあって楽しいと思います。

とあります。

まさにそのとおりで最初に見たときは「こんなカッコいい機関車があるんだぁ」と興奮したのを今でもよく覚えています。

私が本格的に米国型にのめりこむのはこのずいぶん後なのですが、自分の興味の対象を4-8-4中心としているのは、この内野さんの記事が大きく影響していることはまちがいありません。

私にとっては雲の上の存在の人であり、こんな言い方をするのは失礼かもしれませんが、私を米国型に目を向けさせることになった恩人だと思っています。

心よりご冥福をお祈りいたします。

※写真は、TMSの1977年5月号(表紙)と6月号(見開き)です。

Precision Craft ModelsのReading T-1(その2)

先日RMの記事の紹介をした、Precision Craft ModelsのReading T-1ですが、先日クラブのレイアウトで試運転をしてきましたので、ご紹介します(すいません、写真はまだありません)。

まず、外観、塗装、など、全体的なできは良いと思いました。これはMR誌に記述されているとおりです。

ところが、走らせて見ると、ポイントやギャップのところで、すぐ止まってしまうのに閉口してしまいました。レイアウトにはショートしたことを知らせるセンサーが備えられていますが、それが反応する訳ではないので、ショートしているということはなさそうです。ひょっとしたらどこか集電が悪いのかもしれません。

さらに、停止している状態で少し手で押してあげると、停止直前の状態(スピードなど)から動き出すので、面食らうことがあります。というのは、私の場合、停止するとすぐコントローラのスピードを0に戻すので、その時点で機関車は止まっている筈だ思い込んでいます。ところが、元のスピードから動きだして停止に入るという動作をとるので、自分の意識との食い違いにあれと思ってしまいます。まあ、これは慣れの問題かもしれませんが。

もうひとつ困ったのは、加速が急なことです。というより、ブラスト音が急に早くなるので、感覚的に実感的な運転ができないと言ったほうが正しいでしょう。ということで、今、これを修正しようと、デコーダのCV値をあれこれ細工しています。やり方としては次の3つが考えられ、1)か3)かで解決しようと思っています。
1) Medium Speedを変更する(CV6)。もともとLoksoundのデコーダは、Medium SpeedとMaximum Speedを元に、加減速を設定することになっていますので、Medium Speedを低くすれば、落ち着いた加速音になるはずです。
2) Speed Tableを修正する(CV67-CV94)。 これはCV値の修正箇所が多く、なおかつ、調整が大変なので、あまりやりたくありません。
3) 加速・減速のパラメータを変更する(CV3、CV4)。

ちなみに、ここでまた問題があって、製品のデフォルト値と、添付のマニュアルのデフォルト値が食い違っているのです。どうもマニュアルのCVのデフォルト値は、通常のESUのLoksoundの値が載せられているようです。。。

そんなこんなを考えあわせると、Broadway/QSIの機関車のほうが、「扱いやすい」ような気がしています。

次回は、写真もご紹介したいと思います(何度も撮っているのですが、なかなか思うように写らなくて。。。)。